三宅香帆
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新刊『娘が母を殺すには?』は、実は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』とテーマが裏表になっているのです
新刊『娘が母を殺すには?』が発売となった。 https://x.com/m3_myk/status/1780174306439463361?s=46&t=zAM7ACZHsH_qNfTzlQXfUQ まえがきにも書いてあるとおり、物騒な…
『虎に翼』が面白い人に見てほしい! 独断で選ぶ歴代傑作朝ドラ4選
今期の朝ドラ、『虎に翼』が傑作ですね……!! https://x.com/m3_myk/status/1776646203209617585?s=46&t=zAM7ACZHsH_qNfTzlQXfUQ しかし、長年朝ドラのファンである私…
三宅香帆(Kaho Miyake)プロフィール/お仕事依頼お待ちしてます
こんにちは、三宅香帆(みやけかほ)です。文芸やエンタメの分野で、評論家をしています。
ProfileTwitter / Instagram で主に日々の発信・仕事の告知をしています。
読んだもの見たものの感想やエッセイを、週2で更新するnoteマガジンを運営。
読んだ本の感想をすべてthreadsで記録したり、
「本がある生活」を発信するyoutubeチャンネルで発信したり、
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新刊『娘が母を殺すには?』は、実は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』とテーマが裏表になっているのです
新刊『娘が母を殺すには?』が発売となった。
https://x.com/m3_myk/status/1780174306439463361?s=46&t=zAM7ACZHsH_qNfTzlQXfUQ
まえがきにも書いてあるとおり、物騒なタイトルである。ぎりぎりまでこのタイトルにするかずっと迷っていたが、それでもこのタイトル以外ないなと決めて刊行することになった。
実は、本書『娘が母を殺すには
「事情」過剰な平成、そして「事情」不在の令和ヒロイン
『彼氏彼女の事情』という漫画をご存知だろうか。
疲れると長めの少女漫画を読んでしまう癖のある私が最近ぼやぼや読んでいた漫画である……懐かしい! 連載されていたのは1996〜2005年、平成前期の香りを閉じ込めたような作品だと今となっては思う。ちなみに庵野秀明監督がアニメの監督をしていたことでも知られている(アニメは1998〜9年放送)。
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苦手なことばかり増える日記
苦手なことばかり日々増えていくなあ、と最近よく思う。
思えば、苦手なことが多い人生だった。そもそも偏食で食べ物の好き嫌いが多く、小学校に上がった時給食では全部食べなさいと言われた時、本気で正気か? と思った。正気だった。というかそっちが世間のマジョリティだった。みんな給食が苦手ではないらしい。
体育の時間や休み時間に外に出ることも苦手だった。単純に運動神経が悪いからである。でも小学校に上がると
『虎に翼』を観ていると、私はいつも山岸凉子の傑作バレエ漫画『テレプシコーラ』のことを思い出す
朝ドラ『虎に翼』が相変わらずずっと素晴らしいのだが、『虎に翼』の法学部編を見ていると思い出す物語がある。
山岸凉子の『舞姫 テレプシコーラ』である。
バレエ教室の実家で育った千花と六花は、どちらも昔からバレエを習っていた。千花は小学生の時点で完璧主義でバレエの実力も高く、バレリーナになることに対して覚悟があるのに対し、六花はどこかおっとりとした性格で、バレリーナになるということに対しても及び腰
山口一郎さんのNHKスペシャルと「重たいマントを脱ぎ着する」方法
先日「NHKスペシャル 山口一郎 “うつ”と生きる~サカナクション 復活への日々~」というドキュメンタリーを見た。今ならNHKプラスで見られる。
私はサカナクションについては人並みの知識である(大学の時に友人が好きだったからCDをよく借りていた……ってもはや「CDを貸し借りする時代!!」と叫びそうになってしまうが)。サカナクションが休養していることは知っていたが、山口さんの熱心なファンという訳で
自分の理想の批評家像
怒涛の新刊ラッシュが始まってしまった。
4月に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』、5月に『娘が母を殺すには?』、そしてその後源氏物語に関する本が刊行される予定である(こっちはまだ告知前)。
母と娘の物語に関する批評の本、予約受付中です! ぶっちゃけ『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』ほど初版部数は多くなくて、あなたの最寄りの町の書店さんに並ばない可能性もあるため(重要)、ぜひ気になる
『虎に翼』が面白い人に見てほしい! 独断で選ぶ歴代傑作朝ドラ4選
今期の朝ドラ、『虎に翼』が傑作ですね……!!
https://x.com/m3_myk/status/1776646203209617585?s=46&t=zAM7ACZHsH_qNfTzlQXfUQ
しかし、長年朝ドラのファンである私は思うのです。『虎に翼』ではじめて朝ドラを観た方に観てほしい朝ドラが、たくさん、ある……!!!!
というわけで今回は「トラつばではじめて朝ドラ入門したけど、N
新書の棚に来てほしいー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』刊行によせて
「新書大賞を獲りたい」と私が言っていると、昔からの知人友人から「かほちゃんの発言で、初めて新書大賞ってものがあることを知ったよ!」とか「新書って、ジャンルなの? 文庫は新書?」とか、しばしば言われるようになった。もしかしたら『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』ではじめて書店の新書の棚に行く人もいるのかもしれない、と最近ちょっと思うようになった。
たしかに私も新書を初めて手に取ったのは、大学に
『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』と地元の肯定
本屋大賞!!!!!! おめでとうございます!!!!!!
さて、本屋大賞を受賞した「成瀬」シリーズこと『成瀬は天下をとりにいく』『成瀬は信じた道をいく』の二冊。このシリーズが私は大好きなのだが、祝、本屋大賞! ということで今回は「成瀬」シリーズの魅力を解説したい。
このシリーズの面白さ。それは従来の「青春」物語を解体したところにある、と私は思っている。
『成瀬』シリーズの主人公・成瀬あかりは、
「推し活」と人間関係
とあるお笑い芸人の方のファンのnoteを読んで、一日中なんだかその方のことについてぼんやり考え込んでしまった。今日はその話を書こうと思う。いちおうnoteの概要を書くと、「あるお笑い芸人を好きになった男性が、本人に批判的なDMを送ったり批判的なツイートをしたことを契機に、SNSをブロックされ会場出入りを禁じられそうになるところにまで至った」というエピソードが語られていた。
もっとみる『不適切にもほどがある!』と『東京都同情塔』から見える、現代の「寛容」のむずかしさ
TBSドラマ『不適切にもほどがある!』が完結した。
宮藤官九郎さん脚本が元々好きだったり、世代の感覚の差を描くというテーマに興味があったりして見始めたドラマだった。
が、私がこのドラマについて最終的にもっとも気になった点は、ある種の、歯切れの悪さ、だった。
1.『不適切にもほどがある!』の結論
平成の『海がきこえる』、令和の『スキップとローファー』―倫理と恋愛の狭間で
高校生の時ぶりに『海がきこえる』を観た。いまBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下でスクリーン上映中なのだ。東京に行った時に観て、なんともいえない感動を得てしまった。
4/18(木)までの限定上映とのことなので、東京行けるお暇な方はぜひ……!!!!
で、私が『海がきこえる』を観てしみじみ思ったことは、「とにかく里伽子のようなヒロインは今生まれ得ないのではないだろうか……」ということだった。なん
『東京都同情塔』感想と、読書会を開催してみてよかったこと
先日、はじめて読書会を主催した。
私としても読書会という場はけっこうチャレンジング……というか「どんな感じになるんだろう」とどきどきしていたのだが、結果としてとても楽しかったし主催者としても勉強になることがたくさんあったので、今日はその話を書きたい。
内容は、課題図書を読んでもらってきて、グループ(8人くらい)ごとにその感想を語り合う、というもの。今回の課題図書は、九段理江さんの 『東京都同情