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読書感想 高野秀行著 「語学の天才まで1億光年」

「ゆる言語学ラジオ」というYouTube番組で紹介されていたのがきっかけで読んだ一
冊。

著者の高野秀行さんの本は、これもラジオで紹介されていた「謎の独立国家ソマリラ
ンド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア
」を読んだことがある。

こんな場所があるのかいとただただ驚いたことを覚えている。

高野さんの本は音訳されている本も多いが、新刊なので音訳されるのに1年とか2年と
かかかるのかと気長に思っていた。
着手くらいはされているかと調べてみたらもう音訳図書ができていたのでびっくり!!

視覚障碍者は点字にしてもらったり朗読してもらった本を読むのだが、新刊図書を紙
媒体で読むという事ができない。点訳や音訳にはかなり時間がかかるので、1年2年待
ちなんてこともある。

ハリー・ポッターのような大ブームになった作品は速攻でリリースされることもある
が、そこまで力を入れてくれるのは稀。
そう考えるとどんだけにんきあるのか、高野作品!!

おかげで晴眼のお友達にあまり遅れを取らず話題についていけた次第である。


25か国語以上できると言ったらそりゃもう語学の天才と言われてしかるべきだろう。
そんな著者が「語学の天才まで一億光年」と言っているわけだが、その真意は?!

英語はおろか、大学で専攻したドイツ語なんか今や挨拶くらいしかできない私はもう
ミジンコレベル。いや、そんなこと言ったらミジンコに失礼?!

ちなみに私が携わったことがある外国語と言えば、英語、ドイツ語、フランス語とい
う全部見事にヨーロッパの言葉。当然全部先生がいてテキストがあった。

一方その土地独自のローカルな言語にはそんなものはない。文字すらない言語もある
。高野さんはどうにか現地の人にアクセスしたりして、先生でも何でもないただの 
母語話者というだけの人についてその言葉のあれこれを収集して、自分でテキストを
作ってしまったりもする。

言葉はRPGで言うところの魔法アイテムだと高野さんは言う。
学校でやらされているだけの時は全くやる気も出ないけれど、攻略対象があって、そ
のために必要なアイテムとなれば爆速で勉強し始める。


最近は小さいころからの語学学習が推奨される傾向にあるけれど、私は一概にそうと
も言えないと思っている。実際小学校3年から6年まで必修だったフランス語、私は無
理やり勉強させられていたのでボンジュールも書けるようにならずに卒業したという
黒歴史がある。

しかし、「語学ってコツコツ勉強しなけりゃいけないんだ」と思い、中学で専攻した
英語は比較的まじめに勉強した。
反面教師としてのフランス語は役に立ったけれど、結局身にはつかなかった事には変
わりない。

一方大人になって目的をもって外国語を勉強する人はモティベーションが高いからめ
きめき上達したりする。

著者にとっては語学は冒険に必要なツール。冒険というモティベーションがあるから
多数の言語を習得できたのだろう。そしてそうこうしているうちにどうやら語学学習
も冒険の一つになってしまったようだ。


怪しげな場所でも潜入時には彼らと同じ言葉を話せればより親密になり信用もされる


考えてみれば、私たちが同じ外国人でも日本語ができない人よりできる人に信頼を寄
せるのと同じだろう。


アメリカに行けば英語ができるようになるなんて言う人がいるけれど、ただ漫然と過
ごしていてはいけない。日々「こんな場面で現地の人は何て言っていたか」をひたす
ら収集してそれを積み重ねていく。
学校英語しか習ってこなかった著者が初めてインド旅行に行ったときのエピソードが
興味深かった。


私の知り合いにも留学経験もないのに語学が堪能な人が何人かいる。彼らに聞いたと
ころ、学びたい言語を話す人がたくさんいるコミュニティーに入って交流したと言っ
ていた。
「こういう時にはこう言うのか」をたくさん集めて積み重ねていくと生きた言葉を体
得することができるようだ。

何だ、語学が堪能な人は実は皆高野式を実践していたんじゃないか!!


言葉は使っていないと忘れてしまうし、よほどの記憶力がなければ覚えるのも大変。

この本は「25か国語ができる語学の天才」の裏事情を書いてくれている。
そうは言っても2か国語で音を上げている私にとってはもう十分天才の領域なんだけ
れどね。


ところで挨拶の言葉がない言語があるというのにはびっくりした。
そこで挨拶の機能を果たしているのは「ご飯食べた?」というような文言だったりす
るらしい。

昔「SEX AND THE CITY」というドラマを見ていて、スポーツジムでもどこでも皆「Hi
!」と挨拶していたのでこいつら軽いなと思っていた。けれど、いろいろな出自を持
つ人たちが一緒に暮らしている社会ではちょっとした声掛けが人間関係をスムーズに
しているんだなと今は考えられる。


英会話学校できまったトピックについて話せても「未だに「come on」の使い方がよ
くわからなかったりする。

やはり生きた言葉を勉強するには母語話者のコミュニティーに突撃するのがいいだろ
う。

それからとにかく声を出して練習は大切なようだ。
高野さんも母語話者がしゃべっているのを録音してリピートしていると書いていた。
私もラジオの語学講座を聞くときはちゃんとリピート練習しよう。


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