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読書感想 今井雅子作「ルミチカ」

幼馴染の女子高生ルミとチカはアコースティックユニット「ルミチカ」として活動中

もっと多くの人に知ってほしいと、パソコンに詳しい男友達のヨッチも巻き込んで動
画サイトやブログを始めてみたものの・・。

「NHKネットコミュニケーション小説」というシリーズの一冊。ルミとチカを通して
若い人にもそうでない人にもネットのいいとこわるいとこがわかりやすく紹介されて
いる。

2012年初版という事で、世の中がスマホ全盛になる以前が舞台だが、全く情報が色あ
せていない。

現在はSNSなどツールは増えたものの根本はそのころも今も変わらないと思っている
のは私のような情弱だけだろうか。


女子高生という色眼鏡で見られたくない彼女らは始め、音楽だけをupする。自分たち
の音楽を聴いてほしいからだ。でもカウント数は伸びない。
そして「顔も出してほしい」とか「本当はブスなんじゃないか」なんていうコメント
がつく。
一方同じ女子高生で顔出ししているユニットはすごい再生数だ。


その後ブログを始めたり、自信作にケチをつけられたり、盗作疑惑で炎上したりする
中で、二人はネットを使って自分たちをどう売り出すか孤軍奮闘していく。
そして、そんな二人がティーンズ音楽オーディションに出場することになるが・・。


最後にあとがきとしてTBSラジオ「セッション」のパーソナリティー、荻上チキさん
が、ルミチカが対面した問題を取り上げてインターネットについてわかりやすく総括
してくれている。そこらへんはさすがNHKネットコミュニケーション小説だ。


当時に比べ、今は法も整備されて、学校でのネットリテラシー教育も充実してきてい
るらしいと聞く。しかし、初版から10年たっている今でも、ネットの誹謗中傷で自殺
何て言う悲しい事件が起こっているのも事実。

以前ネットニュースに視覚障害の友人が取り上げられた時も、「障碍者死ね」とかそ
の類
のコメントがかなり来たらしい。

ネットの世界には常に何か文句をつけるためのネタを探しているような人がいるよう
だ。

障碍者本人は鼻で笑っていたが、晴眼者の友達の方がショックを受けていた。

ルミチカに来たコメントもそうだけれど、ネガティブなものであってもそれが次につ
ながるアドバイスだったら今後の成長につながる。でもこういった非生産的で悪意に
満ちたコメントは反応するだけ相手の思うつぼ。

それにしても、「全盲夫婦が苦労はあったけれど子育てがんばりました」なんていう
人畜無害な記事なんて無視すればいいのにわざわざ不愉快なコメントを書く人ってど
れだけ暇なのだろうか。一度聞いてみたい。


他にもフェイスブックで知り合った人とリアルで会ったら化粧品の勧誘だったとか、
Twitterでイベントのチケットを買おうとしたらお金をだまし取られたなど、怖い話
も身近で聞いた。


しかし一方で、私たち視覚障碍者は雑誌も新聞も読めず、街中の広告も読めない。店
に何が陳列されているかもわからない。それがネットさえあれば、近くのおいしい店
も新番組も新しい家電も自分で調べられるのである。
一人で外に買い物には行かれないけれど、家に居ながらにして地方の名産なんかも買
えたりする。

文字ツールで見える人たちと文章のやり取りができるようになったのもネットのおか
げだ。

いい面も悪い面もあるけれど、少なくともインターネットのおかげで私たち視覚障碍
者の世界は確実に広がった。

今では、ネットが使えるか使えないかで見えない人の間に大きな情報格差が生まれて
いる。

しかし、ネットはあくまでツール。それに振り回されては本末転倒。
自分がネットで何をしたいか明確に意識する必要があるのではないか。
お金を稼ぎたい。仲間が欲しい。情報が欲しい。自分の考えを発信したい。


便利に使ってはいるけれど、ここでいったんルミチカと一緒に初心に帰ってネットと
の付き合い方について考えてみるのもいいかもしれない。
私なんぞは実は著作権だの肖像権だのなんとなくわかっていそうでわかっていないこ
ともあるような気がする。
少なくとも人に迷惑をかけたり、不快な思いをさせたりはしないように心せねばと気
持ちを新たにした。

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