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いつか朗読してみたいお話

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記事一覧

膝蹴りから開いた花─耳ビジ1周年と「たゆたう花」

膝蹴りから開いた花─耳ビジ1周年と「たゆたう花」

Clubhouseで平日のほぼ毎朝開かれている「耳で読むビジネス書(愛称「耳ビジ」)」ルームが2022年4月1日に1周年を迎える(当日朝8時からお祝いルームを開催。replayあり)と聞いて、「あれからもう1年経ったのか!」と驚いた。

「1年早かった!」と同時に、「なんと濃い1年だったのか!」という驚き。

「耳ビジ」を立ち上げ、引っ張ってきたナレーターの下間都代子さんと出会って以来、Clubh

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バリアフリーは踊る─「ファイティング黒田のラーメン劇場」

バリアフリーは踊る─「ファイティング黒田のラーメン劇場」


「束の間の一花」に音声ガイドがついた6月21日、「束の間の一花」のBlu-rayとDVDが発売され、ゆるゆる(萬木)と一花がわが家にやって来た。

庭で採れたミニトマト(去年は間に合わず、今年こそはと八百屋さんで苗を購入)をふたつ並べて歓迎したが、もったいなくてまだ開封できていない。

同じく6月21日、「束の間の一花」のHulu配信に「音声ガイド」版が加わった。「音声ガイド」を選ぶと、全10話

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ないものを取り戻す─さすらい駅わすれもの室「本読む彼らのおとし玉」

ないものを取り戻す─さすらい駅わすれもの室「本読む彼らのおとし玉」

2023.6.27 お知らせ📢「さすらい駅わすれもの室」をkindle出版しました。kindle unlimited(月額980円 初回利用は30日間無料)では0円でお読みいただけます。

clubhouseのつながりから生まれた「本読む彼らのお年玉」「思い出せない絵本」「語り部の記憶」は、次作以降に収められたらと思います。

わすれもの室+禁じられた金次郎+わにのだんす「さすらい駅わすれもの室

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「メリーゴーランド・メリーメリークリスマス」

 第1話「メリーゴーランド」

 しまった。うっかり提出するのを忘れていた。
 期限が切れているのを知って、すみれ遊園地たった一人の社員アキオは青ざめた。
 遊園地の運営にはさまざまな許可がいる。興行場法、消防法、その他さまざまな法律によって、安全で安心な遊園地を営業する義務が求められる。
 すみれ遊園地のアトラクション遊具が動かせるのは昨日、クリスマスイブまでだった。電気室で開園前のチェックをし

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108膝目『煩悩膝枕』男女逆転

108膝目『煩悩膝枕』男女逆転

この度、ようやく順番が回ってきまして。
書き上げていた膝枕を発表するに至りました。
聞いてくださったみなさま、ありがとうございました!気持ちよくデビューできました🙏

今井雅子先生による『正調膝枕』はこちらから!👇

私の作品は女性目線の「膝枕」で男女逆転です。
女性の方に是非読んでいただきたいです💖

女性僧侶のHARU作
『煩悩膝枕』

久しぶりの休日だと言うのに、私には会いたいと思

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「わにのういろう売り」〜今井雅子作「わにのだんす」アレンジ作品〜

「わにのういろう売り」〜今井雅子作「わにのだんす」アレンジ作品〜

今井雅子(文)、島袋千栄(絵)の絵本「わにのだんす」。これがClubhouseで毎日誰かに朗読されています。もともとは同じく今井雅子氏が書いた「膝枕」の朗読のブームの中、こんな絵本も書いているよと紹介され、それをきっかけに朗読されるようになったというものです。

さて、この「わにのだんす」。ワニが街中でダンスを披露してお金持ちになって……という話で、ダンスをしているときのオノマトペ表現がとっても楽

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その人から見える自分

その人から見える自分

最近は、書くことより、他の方の記事を読みにいくことが多くなった。

例えば、読んだリアクションをくれた人は、これまでにどのような記事を書いたのだろうかと気になり、辿るようにしている。

最近、ホーム画面上に【月別】というとても便利な機能があることを知った私は、年月ごとに記事が分別されているので、まず初めの頃の記事を見るようにしている。

多くの方の初投稿では、noteを始めた理由や自己紹介を書いて

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エゴサでは満たされない─箱入り娘白雪姫

エゴサでは満たされない─箱入り娘白雪姫

「鏡よ鏡」は元祖エゴサーチ⁉︎歩いているときに、ふっと何かを思いつくことが多い。たいていボーッとしているからだ。ボーッとして、ゆるんで、できた隙間にアイデアがポコっと顔を出す。

11月13日いいヒザの日「膝祭り」(プログラムはこちら。第二部追っかけ再生はこちら)が近づく2021年のある日、散歩の途中で「ヴァージンスノー膝って白雪。箱入り娘膝枕は、まさに白雪姫では」と気づき、「白雪姫」を下敷きにし

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【教えて】「最高の贅沢」は追体験できないのでしょうか?

【教えて】「最高の贅沢」は追体験できないのでしょうか?

大学入学を期に親元を離れ、北九州で一人暮らしを始めたばかりの頃。
近所のスーパー(マイカルサティ)の総菜コーナーで買えるサラダ巻きの味にハマった時期がある。

そのスーパーが特別な工夫を施していたというわけではなく、コンビニでも買えるような無個性なもの。
半額シールが貼られる時間を待って買っていたから、作りたてでもない。
でも最高にうまいものだと思っていた。
母に定期的に送っていた葉書に、自分がサ

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続・羅生門

 ー芥川龍之介「羅生門」に敬意を表して

 また或る日の暮れ方のことである。一人の男が羅生門へと向かっていた。
下人である。四、五日前にこの羅生門で、女の死骸から長い髪を抜き取っていた老婆と出会い、その老婆の着物を引きちぎるようにして奪って、ひと匙の粟がゆに変えた。草履の紐にしかならない薄汚れた老婆の着物は、一時の腹を満たす糧にすらならなかった。
 ふと、老婆が引き抜いていた、死んだ女の長い髪を思

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ベアトリーチェの死

ベアトリーチェの死

 1599年9月11日、22歳のベアトリーチェは死んだ。
 死刑は、ローマ郊外の石造りの橋の上で行われた。ベアトリーチェは、刑の直前に死刑執行人から渡された白く長い生地を髪が見えなくなるまでくるくると頭に巻いた。切断する首が見えやすくするためだった。ターバンのように巻きあがった布の純白が、ベアトリーチェの肌の白さを際立たせる。ベアトリーチェは丸太で作られた台にうつ伏せになった。死刑執行人が彼女に馬

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雪女と冷たい男

雪女と冷たい男

 ー小泉八雲「雪女」に敬意を表してー

 雪女は殺せなかった。老人と少年を吹雪で山小屋に追い込んで眠らせて、二人まとめて命を奪うはずだった。でもできなかった。その少年、巳之吉が美しかったからだ。老人の方は迷わずいけた。氷と雪の妖は、美しいものを愛してしまう。巳之吉は彼女たち妖の一族にもひけを取らない美貌を持っていた。憂いを帯びたまなじり、黒く澄んだ瞳、形よく通った鼻筋に小ぶりで細い唇。
 「ああ、

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YMNS

YMNS

 地球は死のうとしていた。温暖化から始まった気候の変動、ウイルス・細菌の突然の強毒化など、本来数万年かけて緩やかに進む変化がわずか数十年で起きた。生物の絶滅は8割に及び、人類は住める場所を7割も失った。一度動き始めた小さな歯車は徐々にその回転と軸を大きくし、もう誰にも止めることができなかった。
 一方で、科学技術の進歩にも目を見張るものがあった。巨大宇宙船で太陽系の端まで行くことができるようになる

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