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ファストフッション産業の衰退からみる、古着産業の勢い。米大手古着売買サイト『ThredUp』の古着革命とは。

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ニューヨークはファッションウィーク真っ只中。そこで今回はファッション業界で勢いのある古着産業のトレンドをご紹介します。

2019年9月、ここニューヨークでも大きな話題となった『Forever21』の倒産。10月には全米の178店舗が閉店しました。
この事をきっかけに、世界のファッション産業の流れが大きく新しい方向へ変わっていくターニングポイントのような風潮がここにニューヨークでも起こっています。

つい最近でもニューヨークタイムズで、『How Fast Fashion Is Destroying Planet』(どのようにしてファストファッションはこの地球を破壊しているか。)という記事が発行されていました。

1. アメリカ全土の若者たちの意識を変えるきっかけとなった『バングラディシュのダッカ近郊ビル崩落事故』

Forever21が倒産する数年前から、すでにニューヨークの若者たちの意識の中に『ファストファッションの産業は世界をダメにする。』といった考えが浸透していたのを、実際ニューヨークに住んでいて肌で感じていました。

若者たちの関心を集めるきっかけとなった2013年4月に起こった『バングラデシュのダッカ近郊ビル崩落事故』とは、ビル内の縫製工場が法律や規定以上にミシンを発動させ、ビルが崩落し、死者1,000人以上、負傷者2,500人以上を出した大惨事です。

この事故が、世界に展開する欧米や日本のファストフッション企業がバングラデシュの劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して経営利益を上げている状況を浮き彫りにしたと言われています。

アメリカ全土、そしてここニューヨークでもとても大きな事件として報道され、SNSでは生き埋めになった犠牲者たちの画像など、事故の悲惨さを物語った画像が当時次々とアップされていました。SNSで広く広まった事で、若者を中心に、ファストファッションでの非買運動が行われたそうです。

2. 『Forever21』を倒産までに追い込んだアメリカの社会背景と要因

現在、アメリカのファストファッション業界は、簡単に使い捨てできる衣服が環境に及ぼす影響に対する反発や、『バングラデシュのダッカ近郊ビル崩落事故』をから浮き彫りになった労働環境の安全性にまつわる懸念に直面しています。

若年層は『サスティナビリティ』(地球に戻り再生していく、持続可能なこと)を価値観として商品を選び、購入し、そういったことに力を入れるブランドや企業に目を向けるようになっているのです。

Forever21は『ファストファッションがこの先も過去10年間にやってきたスタイルが受け入れられ、やるべきことはただ適切な立地を選び、これまでしてきた事業分割で新鮮味を作り出せばいいという考え方に賭けていた。』とアメリカのリテールコンサルティング会社の専門家はコメントを出しています。
『そういった物理的な美の価値観は、現在の買い物客たちがそれほど持っていない。』とも言っています。

すでに、今のニューヨークではForever21のライバルの競争相手が入っているショッピングモールが徐々に衰退化し始めているのが現状なのです。
すでにシアーズ、メイシーズ、JC ペニーが閉鎖し、減少していく客足に苦闘しています。

Forever21の副社長リンダチャン氏は『レンタル市場やリセール市場をよく耳にする。間違いなく何らかの変化は起きているのだと思う』と語っています。

3. ファストファッションが衰退していく一方で古着産業が大成長

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今、アメリカでは古着市場の成長が止まらないと言われるほど急激に成長しています。
アメリカの古着の大手売買サイト『ThredUpの市場は240億ドル(約2兆6000億円)規模までに拡大したと言います。
2018年に古着を購入した女性は5600万人。前年比と比べ1200万人増加しています。

アメリカの『ファストカンパニー』誌は『ありがとう、Marie Kondo!』というタイトルで『Marie Kondoは私たちにときめきを感じないものは捨てるように刺激した。そして今、ファッション業界に古着ブームが到来した。』と書いているほどです。

4. アメリカのファストファッション企業も新しい道を開拓中

アメリカを代表する長年トップを走り続けつファストファッション企業のGAPInc.。GAPを筆頭に姉妹店のOLD NAVYやBanana Republicではすでにサスティナビリティを意識した生産過程の開拓に取り組み始めています。

ビンテージのGAPデニムを再利用してアップデートしていくコレクションをアーティストのMick Leusと展開したり、2021年までにはGAPの使用するコットンの材料を自然に還元できるもので100%統一する目標を定めています。
その他にもOLD NAVYの作るデニムの生地の洗浄に使う水を独自の技術を駆使し減らし、排出される水も自然に戻ることを可能にすると発表しています。

実際にニューヨーク市内のBanana Republicのお店に行った時、リサイクルした紙を60%ほど原材料に使用して作られたTシャツのコレクションやセーターが棚に並んでいました。

5. 急成長するアメリカ最大オンライン古着ショップThredUPの動き

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去年8月、オンラインの古着ショップThredUPは、リテール(小売)とリセール(古着販売)を繋げるサービスを発表しました。

『Resale-As-A-Service(RaaS)』(リセールアズアサービス)とは、一般の方から寄付された古着を、適切な価格付けと、撮影を済ませ、小売店やオンラインショップへ毎週入荷させるサービスです。

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ー古着販売をシェアする

ThredUPはここ数年での成功を収めた知識や経験の秘密を競争相手でもある他者の小売販売業者にもシェアして実行してもらおうとしています。
ファッション産業の小売り事業者がRaaSに参加してもらうことで、協力しあって情報を分け合いながら「No waste(廃棄物やゴミを出さない)エコシステム」をつくろうとしています。

古着産業はアメリカではすでに『ニッチ産業(特定の人たち向けの産業)』US$24billion市場に拡大しています。
すでに、JCペニーとメイシーズがThredUPとパートナーシップを結ぶと発表しています。

古着業界はクリスマス商戦にも進出

クリスマスはアメリカ人にとってはお歳暮シーズンのようなもので、一年間お世話になった知人や友人にプレゼントを配る習慣があります。

ロサンゼルス・タイムズ誌では「Used stuff is the next big trend in Christmas shopping」(次のクリスマス商戦のトレンドは古着。)と報じ、
ある男性がクリスマスプレゼントとして、妻に中古のレザージャケットをプレゼントし、妻は男性にビンテージのグッチの財布をプレゼントした話を紹介していました。それらのプレゼントはアメリカ大手デパートなどではきっと見つけることのできないユニークなアイテムであり、ビンテージならではのプレゼントの価値がある、と伝えています。
このように、クリスマスでも中古をプレゼントする事で、他ではなかなか見つけることができないアイテムを購入でき、また、使い捨てファッションのような無駄な消費を減らせることにつながると考える人が増えているそうです。

ThredUPによる調査によると、ミレニアルズと呼ばれる若い世代の消費者たち(小学生から大学生)の80%はユズードアイテムでギフトの買い物を計画していると答えているという結果も出ています。

アメリカ国内の古着産業の発展はものすごいスピードで発達していて、ThredUPの影響もあり、2023年までには$51billion(5兆1000億円)まで市場が拡大するであろうと言われています。すでにブルムバーグのデータによると、過去7~8年前くらいから著名な投資家たちは古着市場に$1.1 billion以上の投資をすでに始めていると言われています。

特に衣類業界では「サステナブル」を意識する動きが強まっている中で、今回は古着産業にフォーカスを当ててみました。日本でもメルカリの普及によって、古着を売買する習慣が広まったように感じます。今後はアメリカのように、小売店でも古着コーナーが一角設けられる店舗が増えるのではないでしょうか。

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