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130億円規模の経済効果を生み出すNYの最新アートシーンとその経済効果の理由を分析!

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みなさん、こんにちは。NY在住MBA学生ライターのユカです。

今回もNYのトレンド・ビジネス情報をお届けしたいと思います。NYと言えば「何の街」だと思いますか? エンターテイメントの街? ファッションの街? 様々な分野において最先端の街であるNYなので、どれも正解と言っても過言ではありませんが、今回はアートの街であるNYに迫りたいと思います。NYの街を歩けば、そこらじゅうにウォールアートがあり、美術館やアートギャラリーも多く、NYで個展を開きたいと世界中のアーティストがNYを目指します。
そんなNYのアートシーンとその莫大な130億円規模にも上る経済効果に注目して、現状をお伝えしようと思います。

歴史から紐解く、なぜNYは全米でも屈指のアートの都となったのか?

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(出典: Unsplash https://unsplash.com/photos/78Wc9ahFIro)

現在NY市内には、5つの地区合計で1,500ものギャラリーと80以上もの美術館が存在します。毎年MoMAには250万人、メトロポリタン美術館にはなんと700万人もの人が訪れています。しかし、なぜNYはそもそも全米屈指のアートの都になったのでしょうか?なぜ博物館やギャラリーが溢れているのか、なぜアーティストがNYに集まってきたのか?それを知るためには、少し時間を遡らなくてはいけません。

マンハッタン地区内でも多数のギャラリーが軒を連ねるチェルシー。ここにギャラリーが出現し始めたのは1800年代です。当時はまだギャラリーの数も少数で、画商はNY市内の裕福な市民をターゲットにしていました。時は過ぎ、チェルシーのギャラリーは流れ込んでくる移民の波に揉まれるようになります。それを避けるように富裕層は上へ上へと移動していきました。そして、それに合わせるようにギャラリーもセントラル・パーク脇のアッパーイースト・ウェストサイドへと移動していったのです。

1900年代前半になるとギャラリーの数は140ほどに、そして押し寄せる移民による人口増加に伴い、その数は1960年代には400以上にも登ったのです。50年代には美術評論家のグリーンバーグや、美術品収集家であったペギー・グッゲンハイム (現グッゲンハイム美術館の創設者の姪) 等の活動のおかげで、ヨーロッパから表現派の絵画も流入し、NYのアートシーンへと融合していったのです。

1960-70年代の間は、一斉を風靡した伝説的ディスコ「スタジオ54」、60年代のポップ・アートの風雲児アンディー・ウォーホルの人気、さらにはコンテンポラリー・アートの発展に伴ってギャラリーの数も1975年には750にも増加しました。人口が多ければ、ビジネスチャンスも多いはず、その理屈に基づいてNYは数々のアーティストを魅了していきます。さらには、桁違いな富裕層がアートをコレクションしていたおかげもあり、当時治安が最悪だったエリアでも数々のアーティストが住み着いていました。都市部の方が人も機会も多く、多様な文化と人種に出会えるニューヨークは特にコンテンポラリー・アートの発展に大体的に寄与しました。
NYが全米でも有数のアートの都になったのには、移民流入に伴う歴史的背景と大都会としての発展があったからなのです。

17万人の雇用を支えるアート業界: 豪華絢爛なチャリティイベントやアートフェスティバルで経済促進

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(出典: https://www.metmuseum.org/blogs/now-at-the-met/2018/met-gala-costume-institute-benefit-brief-history)

上記は2016年に行われたメトロポリタン美術館でのチャリティパーティ、通称「メットガラ」のレッドカーペットの写真。メットガラでのレッド・カーペットの様子は生中継され、続々登場するセレブ着用のドレスは、即時Vogueをはじめとする世界中のファッション・モード雑誌のSNSに投稿されます。メットガラはそのチケット費用だけで300万円。メトロポリタン美術館内コスチューム部門の献金収集の目的で毎年開催されます。メットガラ自体、開催に3,500万円程度の経費を要しているのでかなり大規模です。それを余裕で上回る献金が集まる点も驚きですが、それを美術館が開催している点が何よりユニークですね。

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(出典: https://www.tribecaartnight.com/what-it-is)

NY市内では、随時美術館のチャリティガラやチャリティディナーパーティ、アートフェスティバルが開催されています。メットガラほどではありませんが、例えば、マンハッタン地区内のトライベッカというエリアでは2016年からTribeca Art + Culture Nightというイベントが行われています。そこでは、ロウアー・マンハッタンのエリアにまたがる25の施設でアートイベントを体験できたり、ギャラリーを無料で訪れることが可能です。これまで80ものアートイベント並びに1,000以上もの参加企業・団体を誇り、現在も毎年春と夏に開催されています。

また、NYのアートイベントが他と違うのは、それがコミュニティの人種に根付いている場合が多いということもいえます。例えば、アジア人映画祭では、日本を含むアジア諸国の映画を見ることができますし、ユダヤ人映画祭ではユダヤのルーツに関連する映画を紹介しています。また、中南米のアートやアメリカン・アート、ヨーロッパのアートも国を代表するアーティストやアートの様式によって異なるイベントが開催されます。トライベッカ映画祭をはじめ、ニューヨーク映画祭、年に2回のファッションウィークを挟み、NY市内では毎月と言っていいほど頻繁に、何かしらアート関連のイベントが開催されています。

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(出典: https://www.nyfwexperience.com/?utm_source=prs&utm_medium=spn&utm_campaign=NYFW_site_link&utm_term=general&utm_content=nav)
アートがNY市経済に貢献するのは、イベントのおかげもありますが、それだけではありません。トレンドの発信地であるNYでは、たくさんのスタートアップ企業も生まれます。アートフェスティバルが開催される場合、大半がNY市政府やNY市に本拠地を置く企業が協賛している場合が多いのです。実際、アート業界の企業だけで、州経済に約30億円も貢献しているそう。イベントの主催や、映画の撮影・プロモーション、コンクール・コンテストの開催、さらにはダンスなどのパフォーマンスアートを加えると、NY市内という小さい面積でいかに幅広いジャンルでアートが根付いているか実感できます。

このように、NY市内のアートシーンというのは大規模なイベントからローカルなイベントまで幅広く、そして頻繁に行われていて、さらに地域のコミュニティにも根付いています。17万人もの人々の雇用を支えるだけあって、アート業界はNY市経済を支える重要な柱となっています。

最新アートから未来を予測、時代はAIとの融合

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(出典: https://www.theatlantic.com/technology/archive/2019/03/ai-created-art-invades-chelsea-gallery-scene/584134/)

アートと一言で言っても、その種類は枚挙に暇がありません。実際、NY市内のアートシーンも、少しずつテクノロジーとの融合が起こっているのが事実です。今までは、絵画やインスタレーション・アートが多かったものの、最近では体験型のアートイベントも増えています。
しかも2019年3月には、NYベースの世界最大級オークションハウスChristie’sが、AIが描いた肖像画を約4,800万円で落札したばかりです。時代は確実にAIといったテクノロジー路線を進んでいるのです。

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2019年2月にはチェルシーのギャラリーでこんな展示会が開かれました。一見するとなんの変哲もない普通のアート展示会ですが、実は展示されていたアート作品の全てがAIによってつくられた作品。しかも、AIの個展をNYで開催するのは史上初だったそうです。過去500年間に作成された10万点以上もの作品をAIに読み込ませ、新たな作品を制作するようプログラム。その結果生まれたものは、AIだと言われなければ絶対に分からないような傑作の数々でした。

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(出典: https://news.artnet.com/opinion/gray-market-pacex-1628053)
さらに、NYに本拠地を持ち50年以上もコンテンポラリー・アートを扱ってきたペース・ギャラリーは、2019年8月にPaceXという新たなプロジェクトを始動しました。アートとテクノロジーを1つのもとして認識し、物的な作品を作ることよりも「体験」を重視した作品を作る芸術家を支援する計画です。参加する芸術家は、今までに無いような作品を作るパイオニアとなり、プロジェクトを始動したペースギャラリー側も、「ほぼスタートアップ状態から始める」とコメントしています。実はこのペース・ギャラリー、2014年にはチームラボとコラボレーションをしたこともあるんです。多角的なスペースで人がテクノロジーを体験できるようなイベントを多数主催しているチームラボは、過去に単独アーティストによるミュージアムとして世界で最も多い来館者数を記録。初年目だけで来館者230万人を記録し、商業的にも大成功を収めています。NY市内でチームラボが体験型イベントを開催する日もそう遠く無いのかもしれません。

いかがでしたか?

今回の記事では、NYという街になぜアートが息づいているのかを解説しました。歴史的な背景や多様な人種が共存している土地柄から、昨今のトレンドまで、アートはターゲットが狭いゆえ、商業的にはニッチな業界ですが、NYという土地柄今後も発展し続けるでしょう。特にテクノロジーの進化具合を見越すと、体験型アートは常に人々を惹きつけそうです。アートに積極的に貢献しているニューヨークだからこそ、アート好きが集まり、新しい形のアートが生まれる。今後も衰えを知らないニューヨークのアートビジネスに期待大です。

<ライター:ユカ> 何となく旅行とか、洋画とか、読書とか、瞑想とか、健康的な食事とか、世界情勢とか、環境保護とか、人間のこととか、心理学とか、アートが好きです。いまのところ20代、いまのところNYC在住のトリリンガルの女の子です。

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