ボリュ美

はてブで3桁書くつもりで6話で終わったボリュ美シリーズの総集編です。

001 [出会い]

俺が傭兵だった頃、
ビリーとマイクっていう女好きな仲間がいたんだ

そいつらはほんと仲が良くて、
でもいっつも胸チラ派かパンチラ派かで言い争ってた

ある日、息抜きに訪れた安酒場に
とても魅力的な女がいた

ビリーとマイクはすぐにその女に話しかけに行ったけど
俺はなぜかそんな気になれずに店の隅で一人で飲んでた

しばらくして、ガラスが割れる音がして振り返るとビリーが倒れるのが見えた

どうやら女の胸の谷間を覗こうと背伸びしていたところを、敵のスナイパーに撃たれたらしい

「助かったー…」
パンツを覗こうとしていたマイクが四つん這いのまま呟いた

すると女がおもむろにパンティーをずらし、
ガルボみたいなうんこを高速で射出し、マイクの眉間を撃ち抜いたんだ!!

俺は驚いて女に向けて銃を構えた

すると女はニッコリ微笑んで俺にこう言った
「あんた、アタシと組まない?」

それが、ボリュ美との出会いだった。

002 [終わりと始まり]

「もう別れよう」

突然の言葉に彼女は驚き、何処かへ行ってしまった
そして戻ってきて腹を刺された

『……??』

「分かってっから!お前のこと、全部!!分かってっから!!」

戸惑う彼女を強く抱きしめた後、俺は腹に仕込んでおいたゼクシィを取り出して見せた

「結婚しよう」
そう言いながら彼女の薬指に白ネギの青い部分をはめた

『…もう。ボリュ美は豚肉じゃないゾ。』

そう言って笑う彼女の目には澄んだスープが溢れていた

ほどなくして俺たちの間には男の子が産まれ、
その子に「友郎」(読み:tomorrow)と名付けた

これはワニが死ぬ、1日前の話。

003 [おはなし]

あるところに記憶が30秒しかもたない女がいました

何処からかその噂を聞きつけた男が女を家に連れ帰り、
おもしろがって女を何度も何度も驚かせました

女はその度にビクッとし続け、そのうち肩の筋肉が異常に発達していきました

男は来る日も来る日も女を驚かせているうちに、
だんだん女の事が好きになってしまいました

そしてある日、女の事が愛おしくなった男は、
女を優しく抱き寄せました

その瞬間、女は驚き、男は肩で顎を砕かれてしまいました

女は混乱し、泣きながら男に謝りました

男は薄れゆく意識の中で
自分の愛が伝わっていればいいなあ…と思いながら死にました

女はよく分からないけれど、
自分が男を殺してしまった事で泣き続けましたとさ。

…30秒弱。

004 [ホットケーキ]

「世の中には二種類の人間がいる。ホットケーキを丸く綺麗に焼こうとする人間と、そうではない人間よ。」

慎重にフライパンに流し込みながら
ボリュ美はそう言った

その豊満な見た目とは裏腹に
彼女は調理器具を使いこなし、分量もきちんと計るタイプだ

僕は答えた

『そうだね。まあ「そうではない」が有りなら、何でも二種類に分けられるけどね。』

ホットケーキを見つめながら、ボリュ美は呟いた

「でも結局は一種類なのよ。生まれてきて、死ぬ。そうではない人間はいないの。」

僕は考えた
なぜ彼女はこのタイミングで、こんなにも当たり前の事を言い出したのだろう

意図はない

ボリュ美は、そういう人だ

僕はホットケーキを食べた

分量通り計られ、丸く綺麗に焼かれたホットケーキは、
美味しかった。

005 [カルマ]

「やっと神が来た」
そんな気がした

胸が熱くなり、言いようのない高揚感の中
私の体は黄金色に輝き始め
溢れたエネルギーが全身の毛穴からビーム!となって放たれた

嗚呼、世界は私のビーム!によって滅ぶかもしれない
だが仕方が無い
何故なら私は「神」なのだから


しかし世界は滅ばなかった
そして私は神でもなかった

私の体は輝くのをやめた
同時にビーム!も光を失い、錦糸卵となってふわりと地面に落ちていった

私はショックのあまり、それから二日間その場に座り込んでいた
そして三日目、錦糸卵を拾い集めて冷やし中華を始めました

私の冷やし中華はたちまち評判となった
あれから一度も私の体は光らなかったけれど、錦糸卵は出た

アナザースカイにも出た

頭の中で女の声がする

「ダーリン、世の中には二種類の人間がいる。全身の毛穴から錦糸卵が出る人間と…


私は思考を宇宙へスライドさせた。

006 [完]

「探さないでください」
そう書き置きを残してボリュ美が消えた頃、
棺桶型の巨大ロボが現れた

ロボは周囲にガスを撒き散らしながらゆっくりと進んでいった

そのガスを吸った人間は皆、猫かご飯に変わっていった
子供には影響は無かった

「ダーリン知ってた?
世界平和には共通の『敵』が必要なの。」

ボリュ美がホットケーキを焼きながら、そんな事を言っていたような気がする

でもな、ボリュ美、お前は間違っている

たとえお前が全てを変えたとしても
結局は繰り返すんだ

全ては繰り返す

世界が滅んだとしても

俺ではない誰かがロボを止めた
しかしロボの中にボリュ美はいなかった

今度は世界各地にロボが現れた

そして俺は傭兵になった。

ー 完 ー

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