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ハーフ&ハーフ

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男女のどこにでもある話。主にやらしいことをしています。 フィクションです。
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もも

「もうやめちゃいなよ、そんな人生」

頭痛と喉の渇きで目が覚めた。また昨日の記憶をどこかに落としてきたみたいだった。覚えていたのは昨日最後に接客したよく知らないおっさんのその言葉だった。あんたにわたしのなにがわかるんだ、ハゲちらかしちまいな。なんてさすがに言いすぎだと思ったから優しいあたしはそんなこと言わなかった。たぶん。

この間、うっかり抱いた彼は元気かしらなんて考えながら、冷蔵庫を開けて炭酸

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タカヒロ2

タカヒロ2

「なにになさいますか?」

着ていたベンチコートを脱いで、カウンターの向こうに立つ彼女が言う。

メニューを見ると、けっこうちゃんとしたバーらしく、酒の種類も豊富だ。ただ、カウンターの向こうに立っているのはオネエなバーテンってだけだ。

「このお店は、お酒もちゃんとしてるのよ。わたしたち、ちゃんとバーテンなの」

なるほど、おもしろい店だと思って、ジントニックを頼んだ。向かいに立つ彼女はももと名乗

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タカヒロ1

「あなたってどうしてなんでもいいよ、って言うの?興味ないってこと?」

3か月前に、軽井沢で盛大に結婚式を挙げてみんなに祝福されていたときのあの笑顔とは別人みたいな顔で、彼女が言う。

またそれか、と思う。

正直俺はモテるタイプの見た目だし、空気も読めるから要領もよく上司にも気に入られる。簡単なんだ、人生なんて。そう思っている。

彼女のことはもちろん、興味がない。

育ちはそこそこ良いのかもし

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さゆり 2

「もっと、舐めて」

体を捩ったタカヒロのはだけた服の隙間を見つめていたら、彼はそう懇願してくる。彼って、こんな人だっけ。本命と何かあったのかな、弱ってるのか。と思いながらも、理性を吹っ飛ばす寸前のタカヒロの目を見ているとなんだか子宮が疼く。

彼の膝の上にまたがって、人差し指の先で首筋から鎖骨を通り胸までつつっとなぞると、彼の暖かい吐息がわたしの顔にかかる。彼のぽってりした唇がだらしなく開いてい

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さゆり 1

「ねえ、愛してるって言ってよ」

息を荒くしたタカヒロが、わたしの腰に硬くなった欲望をこすりつけながらそう言う。わたしはその言葉になぜか抗えずに、その言葉を言ってしまう。

タカヒロと知り合ったのは、たまたま行った飲み会だった。普段の土曜日は居酒屋の仕事があるから行かないけど、その日はオーナーがたまにはやすみなと休ませてくれた。ただ、だからといって突然休みになったところで何か予定があるわけでもなく

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正臣 3

「さゆり、舐めて」

顔にペニスを近づけると、さゆりが咥える。すこし腰を押し付けると、喉奥まで入って嗚咽を漏らす。

湿気った部屋にはおもちゃの電動音とさゆりがペニスをしゃぶる下品な音だけが響いている。雨は止んだらしい。

「さゆり、新しいおもちゃはいいかんじ?」

そう問いかけると彼女は俺のペニスから口を外して、こっちを見つめる。

「そうだね、悪くないかも」

「そっか」

俺はそれを聞いて、

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正臣 2

「じゃあ、ためしてみようか」

さゆりの耳元でそう言ってから、赤くなっている耳を甘噛みした。

ぴくりと跳ねたさゆりの体を捕まえて、ベッドに寝かせる。Tシャツの上から大き目の胸の形を捉えて、やわやわと揉みしだく。

一生懸命目をつぶって快楽の波に乗っている顔がかわいくて、興奮する。職場の居酒屋では、そんな顔してないのに。

Tシャツの裾をたくし上げて、淡いピンクのブラをずらすと、胸の大きさのわりに

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正臣 1

「べつに、何か残さなくたっていいんじゃない?爪痕?みたいなやつとかさ」

さゆりにそう言われて、ハッと目が覚めた。

俺はどうして、生きているうちに何かを成し遂げてなにかを残さなきゃいけないなんて勘違いしてたんだろう。

さゆりは俺が美容専門学校に通っていたときよく行っていた居酒屋で働いていた。

化粧っ気はなく、黒くて長い綺麗な髪をひとつに束ねて、Tシャツを着ている。サバサバしていて、いかにも姉

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マリ 2

「入っちゃっていいの?」

真っ暗な美容室は無機質で、なんだか怖かった。

「大丈夫、ここ座って」

正臣はそういって、さっきわたしが髪をカットしてもらっていたイスに促す。ドキドキしながら腰掛ける。心臓の音が聞こえそうなくらい、静かだった。

わたしがイスに座ると正臣は後ろに立って、鏡越しにわたしと目を合わせる。そうして切ったばかりのつるつるした髪を撫でて、ブラウスから覗いた鎖骨をなぞる。

その

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マリ 1

「人の口に指入れるってさ、信用してなきゃ出来ないよね?」

正臣は笑いながらそう言って、唇をすこし開く。ぷりぷりした唇からちらりと覗く歯がかわいくて、わたしはその中に人差し指を差し込む。

指を差し込んですこし進むとぬるりとした舌に指が触れる。このまま前歯で噛まれたら痛いだろうから、やっぱり正臣の言うように信用していなきゃこんな事はできないだろうとおもう。

「でもオミくんもさ、わたしがこのまま指

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リョウ 2

「支度できたー?」

マリに声をかけられて、髪を整えていた手を止めて顔をあげる。
今日の彼女は真っ白いシャツワンピース。
オレンジ色のボブヘアをくるんと内巻きにして、唇も濃いオレンジ。初夏だ。

「できたよ、出かけよ」

ぼくたちのデートはいつもお決まりのランチから。
マリのお気に入りの大きなパラソルが立てられたテラス席で、甘いシロップがけのフレンチトーストにカリカリの塩辛いベーコン。それに濃いめ

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リョウ 1

「わたしがいなくなったら悲しい?」

彼女はしょっちゅう、ぼくにそうやって聞く。脅すような目で。その言葉を投げかけられるとまるで、釘を打たれている気分になる。動けないし、痛い。

「マリ、なんでそんなこと聞くの?悲しいに決まってる」

ぼくはマリの茶色い目を見ながらそうやって答える。童顔でかわいい顔してるけど、マリはぼくより15歳年上で、エステサロンとか経営してる。付き合ってもう、5年くらいになる

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ヤマト  2

「とりあえず、なんか飲む?」

そう言っておれは冷蔵庫からビールを取り出して、リョウに渡す。まだ飲めるかは知らないけど、おれはシラフだったから。

「ヤマト飲みな、俺はジュースちょうだい」

そう言われたから、リョウには冷蔵庫に入っていたポカリを渡した。俺はビールを開けた。

「ヤマトってさ、ゲイなの?」

突然そんなことを聞かれるからびっくりして、口をつけたビールを吹き出しそうになった。

「違

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ヤマト  1

ヤマト

「フレンチって1番エッチな感じがする」

カジュアルなフレンチレストランで食事をしながら、そんな意味のわからない事を言う奴は、おれの周りでこいつだけだ。

リョウと知り合ったのは19歳の頃、おれはバンドをやりたくて、東北の田舎からひとり上京してきた。
フラッと立ち寄った小さなライブハウスでスタッフをしていたのがリョウだった。
中性的な顔立ちで、背が高く、黒くて長い髪。耳にはピアスだらけ。

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