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俺と格闘ゲームの話 8~ドラゴンボール 超武闘伝2~

1,悟空が使えるか否かで話が変わった 超武闘伝2

 アラフォーに足をかけたか足がつかり込んだオッサン達にとって格ゲーといえばストツーの次にこれが来るかもしれない。
 いわゆるドラゴンボール格ゲーというやつだ。
 ちなみに「超武闘伝2」と書いて「すーぱーぶとうでんツー」と読む。超をスーパーと読めばクソガキであった可能性は高いので読者は覚えていると言い。

 ドラゴンボールのゲームがファミコン、スーファミともども多く出ていた時代。だが今の作品みたいに孫悟空など多くのキャラクターをバリバリ動かせる、みたいな作品というのはなかった。
 クソガキ達もやっぱり自分たちで悟空や悟飯といったキャラクターをバリバリ動かしてかめはめ波をバンバン打ちたい。
 だから当時のクソガキ達にとってアニメやゲームのキャラクターになりきって近所の公園などで戦う、格闘ごっこが流行ったのだ。そこでは孫悟空にもセルにもなんにでもなれたから。

 そんな憧れを抱いていたクソガキ達にとってドラゴンボールが格ゲーとなったのはもう大騒ぎだった。
 当時アニメでは人造人間編も終盤に差し掛かっており、いわゆる人造人間の傑作であるセルが独自の大会「セルゲーム」を開催。セルが負ければ地球は守られるが誰も勝てなかったら地球は破壊される。
 そんな状況に当時のクソガキはドキドキハラハラしていた。
 漫画ではもう悟飯青年編から魔人ブウ編に突入していたからジャンプを読んでいたクソガキとそうでないクソガキには若干のラグがある。だが、覚醒した悟飯が悟空の瞬間移動すら覚えて帰ってきたセルをどうやって倒すのかをクソガキは毎週楽しみにしていた。

 そのセルが倒される辺りが扱われる。
 さらに劇場版のボージャックたちも参戦、ってボージャックって誰?
 この辺りは劇場版を観に行けるクソガキとそうでないクソガキがいたのもあってさらにラグが大きい。なのでボージャックやザンギャを格ゲーで知った層も少なからずいたはずだ。

 当時はテレビスペシャルで過去のドラゴンボール映画をやっていたから人造人間13号、クウラ(メタルクウラ)、ブロリーあたりは知っている人も多かったが、この時点ではまだボージャックはあまり存在感がなかったのだった。

 まあ、よい。
 とりあえず孫悟空が格ゲーとして使える。悟飯やベジータ達と共にセルを倒せる、と思って誰もが買ってもらった……はずだった。

 そこで明かされる「孫悟空」が使えない真実。
 セルゲーム以降、ドラゴンボールは孫悟空から孫悟飯への主役変更を図っていた時期であり、孫悟飯が強くプッシュされている時期だった。だから最初の場面で味方ポジションで使えるのは悟飯、ベジータ、トランクス、ピッコロの四人だけ。
 悟空はストーリーモードで一度戦えるだけ。あとはセルと戦って引き分けデモをするだけだった。そんなぁ!

 一応このゲームの前であるドラゴンボールスーパー武闘伝というゲームは出ていたのだが、そこでは悟空が使える。しかもスーパーサイヤ人ではない、黒髪の時からだ。
 それに比べると使用キャラはみんなスーパーサイヤ人、しかも悟空は使えない、という事実はクソガキには物足りなかったのだ。キャラクター数だけでいえば前作の方が多かったのも考えるとまあ物足りなさは感じていた。

2,悟空が使える!?裏技の存在

 だがそのクソガキ達にまことしやかに流れた噂がある。
 どうやらある一定の条件をすると悟空が使えるという。そして映画で悟空達と激しいバトルを繰り広げた、あの伝説のスーパーサイヤ人ブロリーとセットで…?

 それがわかるとクソガキ達はドキドキワクワクだ。
 あのオレンジの胴着を着た男が使えるというのだから。

 こうなった背景にはやっぱりアニメ本編以外に特番で悟空主人公の映画をテレビで流しまくっていたからだろう。
 漫画がどれだけ悟飯を主人公にしようと考えても、テレビスペシャルの主人公は大抵悟空だ。それもスーパーサイヤ人がかなりプッシュアップされていたから劇場版もスーパーサイヤ人登場がほとんどだったクウラ、メタルクウラ、人造人間13号、そしてブロリーといったところばかりだった。
 そこで活躍するのは悟飯ではなく悟空。

 ドラゴンボールで一番強いのは悟空、と刷り込まれまくっていたわけだ。

 だからこそ前述の不満であり、制作側もそれを分かっているせいか悟空が普通に使えないのにジャケットに悟空を書いた。うそつき!サギ!である。

 だからこそ、そのまことしやかな情報に飛びついた。
 だって悟空が使えるんだもん。

 その情報はこうだ。
 最初に真っ暗な画面で「オメェの出番だ!悟飯!」というセリフが出た後、悟飯が空を飛んでいるオープニングムービーが始まる。
 そこでコントローラーで「↑X↓BLYRA」の順でボタンを押すと悟空が使えるという。
 そして使用が決まった時、どこからともなくブロリーが「カカロットォ」と声を出すという。

 噂を聞いたクソガキ達はゲームを起動すると震える手でコマンドを入力していった。
 すると。

 で、出た!
 カカロットォ!

 という言葉が!

 そしてストーリーモードの対戦モードにカーソルを合わせて選択すると……。
 そ、孫悟空がいる!孫悟空がいるじゃないか!
 その横にはブロリーもいる!

 これだけでクソガキ達は狂喜乱舞。
 この「↑X↓BLYRA」というコマンドを当時のクソガキは全員覚える事になっているのだ。
 これを読んでいる諸兄も30中盤あたりの1980年代中盤あたりに生まれた上司にこの話をしてみるといい。男のクソガキ経験者はほとんど全員知っているコマンドだから。

これでもう大騒ぎ。それだけ孫悟空の存在は大きかった。

 ちなみにやはりクソガキコミュニティで広がっていたこともあってほらも多く混じっていた。
「裏技コマンドを一回のOPで20回連続出すとゴテンクスが使える」
「ミスターポポがOPで登場すると魔人ブウが使える」
 みたいなことだ。
 インターネットある今では信じられない事だが、こういうガセネタもクソガキは信じたのでみんなオープニングで試行錯誤していたものだった。
 特に裏技成功のカカロットという言葉は成功するたびに重なっていくので「カカロッカカロッカカロッカカロ……」というようになっていたと記憶するクソガキは多いはずだ。

 そんなホラやガセネタが本当かどうか実証する。
 ホラがホラを呼ぶから魔人ブウが使えた、とか、スーパーサイヤ人3が使えた、とか噂だけが飛ぶ。

 そんなおおらかな時代だったのだ。

3,ストーリーモードはやっぱり楽しかった

 これは後に販売される3にも関わってくるのだが、2で孫悟空が使えないにも関わらずそこそこ満足されていた背景にはストーリーモードの存在があった。
 ストーリーモードはセルゲーム編のストーリー。そしてボージャック、ザンギャといった馴染みはほとんどない奴らとのドラゴンボールを探し出すオリジナルストーリーの二つ。
 むしろボージャックとザンギャはこのオリジナルストーリーがあったからなじんだというクソガキも少なくなかったように思う。映画にはゴクア、ビドーというキャラもいたが、彼らの存在感はあまりなくこの二人は記憶深いのはゲームの存在が大きい。
 ザンギャとクリリンが戦っていた、という事を成長した後知ったというクソガキも多かっただろう。その時悟飯が悟空やクリリンと同じオレンジの胴着を着ていたという事とかも。

 彼らとドラゴンボールを探しあって最終的にはボージャックと戦ったクソガキは多いはずだ。とてもいいシナリオであった、というほどではなかったものの、ドラゴンボール探索のタイミングではドラゴンレーダーを借りる時にブルマやブリーフ博士と会えるなども魅力的だった。

 だから3の時、それらが削られた事はかなりショックだった。
 悟空、ベジータ、大人になった悟飯、悟天、幼少のトランクス、魔人ブウ、人造人間18号といった人気キャラ(裏技を使えば2の時にいた未来トランクスも)が使えたが、ストーリーがないから彼らを使える以外に魅力がない。
 2よりも3がすぐ飽きられた背景にはそのあたりが関係しているだろう。

 あとピッコロポジションで使えた界王神様はあの時なんか妙に強そうなポジションで出ていたけど、原作でのあの扱いはどうなのよ。あと、やっぱりゴテンクスはここでも使えなかった。O村君の嘘つき!

 そんな意味である程度ゲームとしてのバランス、話題性が整っていた超武闘伝2。
 スーファミ人気も相まってやっぱり記憶に残る作品だった。

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