俺と格闘ゲームの話 終章 ~その後~
1,社会人時代もそこそこやっていたが…
大学院まで出た挙句、就職に失敗。フリーターを経由して某ドラッグストアの正社員になった後は転勤三昧でとても格ゲーをやっている場合ではなかった。
特に俺は片親だったからとにかく正社員になって安心させたらんと、ってやってたら失敗に失敗を重ねて今に至る。20代の頃の俺にもし何かを伝えるとするならば「とりあえず職安でもなんでもいいから自分の事を見つめてやりたいことを優先してみろ」っていうだろうなあ。
友人は最後の連絡をしたときもスト4とソウルキャリバーを現役でやっていると言っていたが、彼と連絡が取れなくなってもう10年近くたつ。別に喧嘩したとかそういうわけではないが、連絡手段を失ってしまい、今日に至る。K君、今でも元気してる?
そんな俺も二年近く静岡に住んでいる時、一時的に格ゲーに復帰していた。
その時俺は職場の寮に住んでおり、そこで静岡エリアの店長や薬剤師などと共同生活をしていた。とはいえ寮母みたいなのはいない寮だったからみんな土曜日に掃除する以外はやりたい放題。深夜に集まってゴルゴ13観たり、寮に住んでいない店長が開いてる部屋で一夜を過ごすなんて事があった。
その店長の一人が格ゲーが好きで、俺と店長は暇なとき結構格ゲーをしていた。お互い明日仕事あるというのに夜11時くらいから始めて深夜2時くらいまでやる。
「次で終わろう」
「そうしましょうか」
が合言葉で一時間という感じだった。
主にウル4をやっていて俺はメインリュウでサブがアドン、店長がディカープリメインだった。
その店長とは仕事を辞めるまでずっと仲良くしていた。
今もお元気してるんだろうか。寮に電子ドラムがあって、ストレスがたまった時にはそれをバンバン叩いたり、いきなり寮で焼き肉パーティを始めたり、気さくな方だった。
一応ゲーセンでもやっていたが、もう前のようなやる気はない。1クレやって満足してふらふらと出ていくような感じになっていた。その頃には艦これが流行り始めており、俺も二次創作を開始し、合同誌などに寄稿を始めていたこともあって興味はどんどん失われて行った。
ある意味、俺の格ゲーはここで終わる事になる。
たまに格ゲーをつまみもするが、相手はほとんどCPU。それで勝てない勝てないといいながら満足している俺がいる。
クソガキはもう大人になってしまった。
2,今でも捨てられないRAP2
そんな俺がいまだに大切に使っているものがある。
それはアーケードゲーム用コントローラーのリアルアーケードプロ2。俗にいうRAP2だ。
RAP2は爆発的に売れたアケコンだった。今までもアケコンは売っていたが、本格的なものはなかった。あくまでアケコンっぽいコントローラー、というものがほとんどだった。
その中で出された本格的アケコンがHORIが出したRAPシリーズだ。現在も出されており、eSPORTSとして格ゲーをするプレイヤーには必須のアイテムとなっている。
その初期でPS2専用に当たるRAP2を俺は未だに使っている。PS3/4対応の物を買っているにも関わらずだ。PS3にPS2コントローラー変換コネクタをぶっ差しながら今でもそれを使いながら格ゲーをしている。
なぜか。
このRAP2。大学4年の頃、かの友人から1万円で買い取ったものなのだ。
彼もまた当時台頭してきたヤフオクで誰かから買ったという。その重厚感あるアケコンはもうすごかった。こんな本格的なコントローラーあるのかと感じたほどで、俺は恥も知らずにこういった。
「これ売ってくれない?」
最初は普通のコントローラーで遊んでいたクソガキもゲーセンに行くようになってアケコンが欲しくなっていた。でも購入する手段もなく、やり方も知らない。
そんな時に彼はアケコンを持っていたのだ。
羨望のまなざしで見た。
「一万円じゃダメか」
「それならいいよ」
彼は俺の提示した値段に簡単に返答してくれた。
喜んで俺は財布から一万円を取り出し、それを買った。本当に嬉しかった。
特にRAP2は今のネシカ筐体に合わせたようなものではなく少し古めのCPS筐体などのちょっと小さめな大きさ。
これが3rdをしていた俺には嬉しくてうれしくて仕方なかった。
その後、amazon専用RAPを買ったり、RAP3proを買ったりしてはいるのだが、未だにこれを使っている。
今となっては連絡つかなくなった友人Kと俺を結びつける最後のものになってしまったからだ。
いや、もう彼と連絡がつくこともないだろう。大学の面々が集まる事もない。恐らく彼とは永遠に会う事もないとどこかで諦めている。静岡に転勤になった際、最後にワンチャンスあったがその時には彼も転勤して関西に飛んでいた。恐らくもう彼とはそういう星のめぐりあわせなのだろう。
だが、俺はそのRAP2を見ると思い出すのだ。
アホみたいに格ゲーに明け暮れて、ギャーギャー騒いだ挙句朝を迎え、ゲキレンジャーを見てあれこれツッコミながら言いあう。
「またやろうな」
「おう」
そう言って彼の家から出た後、柔らかな日差しに包まれたまま自分の下宿を目指して。
別府は温泉を水代わりに使うから下水の流れるどぶからは湯気が吹いている。それが足を少しだけ温めてくれる。
目をこすりながら俺は歩き出す。たくさんのゲームソフトを持ったまま。
そうして朝日の中に俺は消えていく。今日もなんか面白い事があるんだろうな、と思いながら。
青春はいつでもそこにあった。
そしてその傍らには格ゲーがあったのだ。
格ゲーは俺の青春の一部だったのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?