俺と格闘ゲームの話 5 ~ネオジオ編 1~
クソガキにとってストリートファイター2の存在はでかいという話をした。
だが、それと同じくらい存在のでかかったのがネオジオであった。
今でこそKOF(キング・オブ・ファイターズ)の印象が強いが、実はKOFメインの層とクソガキ世代は微妙にずれが生じる。クソガキから中学生になれなかった世代が居座っていたのがKOFで、クソガキたちにとって存在感があったのはKOFよりは餓狼伝説や龍虎の拳の方が強い。
むしろ餓狼伝説や龍虎の拳の集大成としてKOFがあったと言っても過言ではなく、現在のKOFとは様子が少し違う。
そのあたりの話をしていこう。
1,どこにでもあったNEOGEO筐体
SNKというゲームメーカーにとって切り離せないのはNEOGEO筐体であった。
こいつはストツーの基盤であるCPSシステムというやつに比べて安く、街の小さな商店のいたるところにあった。
NEOGEO筐体の恐ろしいところは一つの筐体に最大四つゲームを入れられることである。だから一つの筐体で四倍おいしい。そして四つ入っているから特定のゲームをやらなくてもほかのゲームをやるからインカム(筐体でのゲームをプレーする事)が結構安定していた。
ストツーが日本を席捲していた時になぜライバルメーカーのSNKが業績を伸ばせていたのか、というところは格ゲーブームに乗っただけでなく格ゲーが得意でなかったり興味ない層にもやれるゲームを一つの筐体に、それも安くてCPSシステムより安価に置けるNEOGEO筐体があったというところもあっただろう。
当然NEOGEO筐体を置いている店にはクソガキがかなりいた。
都内などはとかくクソガキにとってゲーセンは歩いて一時間くらいかかる場所にしかなく、さらに不良の巣窟と言われていた時代だったから、ゲーセンに気軽に行けない田舎のクソガキにとってはスーパーの片隅にあるNEOGEO筐体が当時のクソガキたちを支えたのだった。
2、クソガキとNEOGEO事情
うちの田舎にもNEOGEO筐体はたくさんあった。
クソガキの徒歩圏内に個人商店のスーパーが一件、精米店のついでで駄菓子屋っぽい店が一件あって、案の定そこは俺達クソガキの集まりだったのだが、そこにはNEOGEO筐体が置かれていたものだった。
スーパーの方にはNEOGEOが二つ稼働しており、精米店のところには一つ稼働していた。
まだ当時は格ゲーをするときに一つの筐体に一人が使うという時代ではなく、一つの筐体に二人が隣同士座ってやる事が多かった。クソガキの集まりで田舎だと近くに学校みたいなものもないから別地区の奴が来ることもない。
そんなもんだから駄菓子やらジュースに使う金をゲームに回していたってわけだ。
うちは親が厳しかったもんだからそういったNEOGEO筐体に金を突っ込む事すら許されなかった。スーパーの方は1クレ50円と安かったからそれも許さない辺り、親のゲーセンに対する考えが見えてくる。
レンタルビデオをいつも借りてくれたり駄菓子欲しさに小遣いが欲しいと言ったら毎日もらえたので今考えたら貧乏ってわけでもなかったのだが。
だからクソガキの俺にはNEOGEO筐体でゲームがしたい、というのは結構憧れの存在だったのだ。
3,俺とNEOGEO筐体の思い出
そんな中で一度だけ怒られた事がある。あまりにもインパクトが残っていていつ頃だったかも記憶にあるほど。
ちょうど夏ごろで、俺はおふくろにアイスが食べたいとねだった。
その頃はJリーグアイスというものがあってアイスを買ったらシールか何かついてくるので俺はそこそこ買っていた。だからおふくろから小遣いをもらって前述のスーパーまで買い物に行ったのだ。
その時ちょっと多めに貰っていて「おつりは返して」とおふくろに言われて。
買うのはすぐだった。クーラーの利いた店内で買ったからさあ家に帰ろうとした時、友達がNEOGEO筐体の前にいたのだ。
「なにしよん」
と聞くと、ゲームがしたいけど金がないから見ていたらしい。
当時は金のないクソガキがギャラリーとして集まっている時代だった。
「やりてえよなあ」
とかその友達と話していると、ふと今俺は小遣いがあって手元にちょっと金がある。
目の前には餓狼伝説2が稼働している。
俺、今やれるんじゃないか。
それを言うと友人と俺、大騒ぎ。
ちょっとうしろめたさもあったが、インカムに50円をゆっくり入れた。
50円をインカムに入れる時のドキドキ感は今でも記憶に深い。
これはのちに語るが餓狼伝説2はスーファミソフトで出ていたのだが持っている人間も少なった。だからスーファミでストツーしかしたことないクソガキにはもう餓狼伝説2が出来る事はもう魔性以外のなんでもないのだ。
そして餓狼伝説2を起動してキャラクターセレクト。
俺はなぜか山田十兵衛という柔道の爺さんキャラが妙に好きで、初めて餓狼伝説2をするならぜったい煎餅爺さん(山田十兵衛の事。飛び道具が煎餅を投げるキャラだったため)を使うんだ、と意気揚々とキャラクターセレクトに。
一方で絶対使いたくないキャラもいた。クソデブのメガネキャラがいたのだがそいつは死んでも使いたくないと思っていた。だって死ぬほどかっこ悪いから。
これがのちに餓狼伝説2で大暴れしていたチン・シンザンであることを知るのは10年以上後。
だが、スーファミしか知らないクソガキはキャラクターセレクトに時間制限がある事を知らなかった。そして餓狼伝説2はその制限時間が短い。
それを知らずにぼうっとしていたら友達が
「時間!時間!」
っていうので気付いた時にはもうだいぶ時間が経っている。
慌てて横を押すがこういう時ってなぜか反対の方にキーを回していたりして煎餅爺さんが遠い。
そしてタイムアップした瞬間にキャラクターセレクトしたのは煎餅爺さんではなく隣の、絶対使いたくなかったデブメガネ。
ぐにゃあとなりながらやる気がそがれていく。そんな俺の気持ちも知らずに煎餅爺さんはピースサインをしている。どうしてくれるんだ俺の50円。
そうやって精神的に幻滅しているうえ、さらにいつまでもスーパーにいるとおふくろに怪しまれる。
「もういいや」
という言葉と共に友達にゲームを託して帰った。
そして家に帰っておつりを返すとおふくろが俺を怒鳴りつけた。
「勘定が合わない。なんでだ」
その凄みに押されて俺は恐る恐る「NEOGEO筐体に金を入れました」と白状したら
「お前はお母さんとの約束を破った!だからJリーグアイス食べるの禁止!」
とJリーグアイスも取り上げられることに。
ブルーな一日を過ごすことになった。
そんな酸っぱい思い出がNEOGEOにはある。
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