俺と格闘ゲームの話 15 ~00年中盤の格ゲー問題~
さて大学生時代も格ゲーをなんだかんだやりまくっていたわけだが、当時は格ゲーの情勢も煮詰まっており、何も問題がなかったわけでもない。
その辺りは触れておかなければならないだろう。
1,エミュレーター問題 ~ゲームを買うか買わざるか~
マジコンが世間を騒がせる前に水面下で結構やられていたのはエミュレーター問題だった。
まだ今のようにダウンロード販売もなければ、過去のゲーム復刻みたいなものもない時代。やれるゲームは自分たちの家周りにあったゲーセンか、ゲームショップ、中古ショップなどで買う事がほぼ全てだった。
インターネットもあったにはあった。だが、持っている人間と持っていない人間が結構明確だった時代でもあり、大学指定寮という名の下宿でもインターネットが敷かれていないところの方が多かった。だから大学にメディアセンターみたいなインターネットを引かれている場所を売りにしている、なんてくらいインターネットが出来る環境が、特に九州の一部分となると限られていた。
無線wi-fiはおろか勝手に下宿に有線を引くなんてありえない時代だったわけで、インターネットは基本的に携帯が基本を担う事が多かった。パケット通信し放題のパケホーダイなんてものがあった、まさにその頃だ。
だから動画なども家で手軽にみられる時代というわけでもなく、メディアセンターで動画をダウンロードして、動画再生ソフトを使って家のパソコンで見る、なんてことをしている人も少なくなかった。「GOM media player」という言葉をアラフォー前後の大人に言ってみるといい。反応する奴は一定数いるので。そういうやつらは家で手軽にインターネットを使えなかった時代の人間だ。
まだダウンロードをする、ということがあまり悪い事ではなかったと考えられていた時代。丁度データ共有ソフトwinny問題とかもあったから、そのあたりが5,6年かけて法整備されようかとしていた頃だ。
動画をDLしてソフトを使って家で見る。
それが出来るという事は当然、ゲームをDLしてソフトを使って遊ぶ、という考えもあったわけだ。
そうなるとろくなことを考えない大学生はそういうエミュレーターをダウンロードできる世界を誰かがこっそり教えてくれて、こっそり広がるわけだ。
まさにメルブラのソフトを割って広げるのと同じ感覚だ。
あとは、みなまで言うまい。
当時ゲーセンで稼働していたNAOMI基板は流石にエミュレートしているものはなかったが、さすがにストツーのCPS基板、NEOGEO基盤程度は海外の誰かがエミュレート化していてダウンロードも出来るようになっていた。
それを誰かがDLしてソフトを詰め込んで、それを誰かにデータをあげて、さらにそれをあげて……。
しかも基盤をエミュしているからPS2のソフト達に比べても挙動が筐体に近い。実際3rdなんかはPS2などのラグよりもそっちの方が快適なレベルだった。
現在では公式から過去のゲームを格安でダウンロード配信して、その気になればオンラインでいまだにそのゲームを愛している誰かと筐体そのものレベルでの稼働で対戦できるようになった。いい時代になったものだと改めて思う。
エミュ問題。俺からはどうこう言える問題ではないので何も言わないが、社会人になり、金に余裕が出来るとそういうことをやらなくなった。
インターネット環境が整えばどこかで動画をDLして家のパソコンでやる事もない。自分の好きなものに金を落とす、物を買うことに喜びすら覚えるようになった。
音楽なども元々の音源を見つけるほうが楽しくなってCDを買う事が増えた。
改めて思い出すと、やっぱり後ろめたいもんがあったのである。
昔はメールアドレスの取得ですら有料だの無料だの面倒だった時代、今では無料で安定感のあるメールアドレスを取得でき、さらに会員限定だったmixiやニコニコ動画も非会員で見られるような時代になった。
各々動画サイトは合法で様々な映画やアニメを見られる有料動画サイトが生まれ、今は誰もがその恩恵にあっている。
やはりその背景には、昔のゲームやソフトをインターネットという媒体で気軽に買えるようになった、というのが大きい。どこを探しても見つからなかった餓狼伝説やファイターズヒストリーを公式が安い金額で売ってくれる時代になった。
この時代を経験しているから本当にありがたいと思う。やっぱり買えるなら買いてえもの。好きなものなら。
改めて、昔のような時代にならないでもらいたいもんだと、懺悔も含めて考えている。
2,スマブラ問題 ~スマブラは格ゲーなのか、格ゲーとは何ぞや~
現在では格ゲーとして扱われるスマブラ。
これが俺達の時代、格ゲーなのか否か、と議論されていた時代があった。
理由は様々だ。
コマンド入力が簡単で、2D格闘では特殊技のような出し方で必殺技が出るものを格ゲーと言っていいのか。
落ちているアイテムを拾って自分に有利な形を作るようなものを格ゲーといっていいのか。
そもそも2on2のパーティゲームを格ゲーといっていいものか。
こんな感じで結構賛否両論だった。
スマブラを格ゲーととらえていたか、パーティゲームととらえていたかで結構話が変わるだろう。
かくいう俺でもスマブラはパーティゲームという考え方だったのだ。
では前述したものが格ゲーになかったかと言われるとこれも答えに窮する。
コマンド入力には初心者向けに「簡単コマンド」を採用している作品もあったし、ポケットファイターのようにコマンドではなくボタンをタイミングよく押す事で成り立つゲームはあった。キャラクターもパーティゲームっぽいミニキャラだ。
アイテムに関してもハンマーのようなものはなくともサムスピのように爆弾など攻撃するお邪魔アイテムが出る作品だってあった。
2on2なんかはGGXイスカが出たばかりで、これをパーティゲームというのもそこそこ無理があった。
では何がそれらを分けたか。
それは差別、というほどではないが、どこかしら誰もが「任天堂が出すものは子供向け」というイメージがあったからだろう。
これはハードの話になっていくが、任天堂は90年代中盤の次世代ハード戦争において、ソニーのプレイステーション、セガのセガサターンに後れをとってしまい、ニンテンドー64を出してもプレイステーションに負ける流れになってしまった。
それに対して任天堂が取った作戦がファミリーゲーム方針。ゲームを深くやり込む人達のためにゲームを売るのではなく、家族やゲームをやらない人にとっかかりを持つ作品を出す方針だった。
その時に急先鋒となったのがポケモンだった。
今でこそやり込み要素の塊になったポケモンだが、それよりもピカチュウを中心とするかわいいキャラクターを強く売っていた時期がある。ニンテンドー64ピカチュウデザインなんかはまさにその典型例だろう。
その中で生み出された作品が『格闘ゲーム竜王』こと大乱闘スマッシュブラザーズであった。
実際初代スマブラは格ゲーとして売るよりは、マリオやカービィ、ピカチュウが所狭しと戦うパーティゲームとして売り出されていた記憶がある。それもそのはず、今ではよく語られる「格闘ゲーム竜王」の企画、任天堂内で総すかんを食らった作品なのだ。
結果売り出す事が出来たが、恐らく任天堂も「格ゲーが今更売れるわけないじゃん」と思っていたからパーティゲーム要素を強く意識した販売戦略を取ったのだろう。残念ながらそれは正解であった。任天堂のキャラクター同士を戦わせられる。そしてみんなでワイワイ言いながら遊べる、という考え方はそのままスマブラの顧客層に繋がり、買い支えのきっかけになった。そしてそれは長い年月をかけて格ゲーの国際大会「EVO」で正式種目として扱われるほどの存在になっていく。
00年代はちょうどそういう過渡期であった。
00年代にはすでに1on1で腕を競い合う流れは出来ていたのにも関わらず、その「子供向けに開発されたコンシューマ機で、格ゲーなんかこれっぽっちも作ってこなかった任天堂が出したパーティゲーム」という意識が強く、かなり賛否が分かれた。
後、ゲーセンに持っていけないというのも強かったかもしれない。
当時は良作対戦ゲーの条件に「ゲーセンに置かれる」みたいなものがあったため「所詮はゲーセンに出す事も出来ない、4人でワーワー遊ぶニンテンドーのパーティゲームでしかないスマブラが、1on1でぎりぎりの雰囲気の中行う格ゲーの主流になれるはずがない」みたいな考えがどこかにあったはずだ。
ゲーセンに置かれて一流。それが出来ないスマブラは所詮パーティゲー。
これが当時の否定派が考えたものだった覚えがある。
勿論それは今で観ると偏見でしかないのだが、格ゲー冬の時代を過ごした奴らにとってパーティゲームで盛り上がってきた奴がいきなり格ゲー参入させろ、格ゲー扱いしろ、と言われて反発したのかもしれない。
今考えると滑稽だが、そんなことをクソ真面目に議論していた奴らもいたのだ。
今となっては「EVO」が正式種目に入れるなど時代は変わった。
格ゲーの主役だったリュウ、テリー、平八などがコラボ参戦した事もあって今ではスマブラ様様たる雰囲気もある。
岩田聡の執念ここに至れり、という感じだ。もはや今、スマブラを格ゲーじゃないと言う方が少なくなっただろう。
俺も否定するつもりもない。20代のように「格ゲーかくありき」なんて尖りもしない。各々の反射神経などを駆使して勝負するなら格ゲーでいいのだ。というかストツーの海賊版たるストツーレインボーや初代マリオブラザーズを対戦にしている大会をみてから二人が一つのゲームで対戦するなら何でもありだなと思うようになった。ありがとう、裏塔劇。
00年代で格ゲー周りみたって色々問題があった。そしてそれは割と時代と社会の影響を受けてのものだったと今改めて思い返すと考えさせられる。
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