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虎に翼 第22話

寅子(伊藤沙莉)が穂高先生(小林薫)から託された、膨大な数に上る共亞事件の調書資料の筆写。
法科の皆が手伝ってくれる……穂高先生は、この仕事には信頼の置ける者にと言った。自然、寅子が仲間を信頼していることが伝わるし、寅子を見つめる花岡(岩田剛典)に、涼子さま(桜井ユキ)の
「『何か手伝えることはないか?』そうお声をかけたらよろしいんじゃなくて?」という台詞で、花岡のちょっとめんどくさい性格および、寅子への仄かな想いが皆にしっかりバレて…いや、伝わっていることがわかる。
毎回だが、台詞に無駄がない。

資料筆写のあとは、轟(戸塚純貴)も加わり、事件の検証。共亞事件を洗い直すのは寅子のためだけでなく、将来法曹界で生きる彼ら彼女らの糧になるはずだ。穂高先生の狙いは、これもあるのではないか。

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はるさん(石田ゆり子)の実家から絶縁状。旅館という客商売の性質上、身内に犯罪者がいるということを気にするのはわかる。わかるが、冷たいなあって。そしてチラッと思う、この先に待ち受けている大きな戦争。香川県丸亀にある実家に頼れないと、色々と困りごとが出てくるのでは……。

直道(上川周作)、花江(森田望智)夫婦にも猪爪家から籍を抜くよう言うはるさんに、花江ちゃんの

「お母様。それ、今じゃないです」

強くなった……花江ちゃん。第3週のあの悶々とした日々がなければ、そしてあそこで直道が花江ちゃんが一番大事という選択をしなければ、この強さは培われなかったかもしれない。毎週、登場人物たちが何かを経験し克服し、その小さな積み重ねで新たなできごとを乗り越える力を獲得していく物語に見える。

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はるさんがこまめに記録していた手帖。

「ここ数年のものはぜんぶ台所にありますよ」

家宅捜索に来た検事たちは、台所は女の領分だからと、尊重したのではなく侮って、証拠になるものはないと勝手に判断し探さなかった。
今週のサブタイトルは「朝雨は女の腕まくり」。
朝の雨はすぐにやんでしまうから影響ない、女が怒って喧嘩腰になっても怖くないのと一緒だ…という意味のことわざ。なめやがって。

家族裁判で明らかになる、共亞事件調書資料と、はるさんの手帖との齟齬。
手帖の内容は、その日の献立、家族の食欲と体調、へそくりで買った着物の資金調達についてまで。微に入り細を穿つ、猪爪家の記録。
第5話、寅子が桂場に言った

「私の母はとても優秀ですが……恐らく今想像していらっしゃるよりもずっと頭がよく、記憶力も優れています」

この言葉が証明されるかのような手帖の内容だ。いや、20話での家宅捜索時の「気が動転しているときは、記憶が曖昧になるでしょう」でも現れていた。

戦前の裁判で、家庭の中に居る女性がつけていた家族の為の手帖が、証拠としてどれほどの力を持つのかわからない。しかし、少なくとも直言(岡部たかし)の「自白は全て嘘だ」という言葉を引き出すことができた。
とても小さな穴であろうと、突破口にはちがいない。そして穂高先生は、その突破口を諦めはしない。

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穂高先生が寅子に紹介、紹介に次ぐ紹介。集められた共亞事件容疑者の弁護人たち。
錦田弁護士を演ずるのは、磯部勉!大河ドラマでもお馴染みだが、ハリウッド映画の吹き替えでは、ハリソン・フォードやジョージ・クルーニーなど名優の声を演じてきた。これからしばらく朝からこの渋くてよい声が聴けるのが楽しみだ。

そして、挙手して名乗ってくれた雲野弁護士(塚地武雅)。集まった彼らが一様に驚く穂高先生の「依頼人の無罪を主張しようと思っている」。

勝ち取れるのか、無罪を?明日が待ち遠しい。

(つづく)


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