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虎に翼 第27話

司法科の高等試験に落ちても、卒業しても、次こそはと寅子(伊藤沙莉)たちの学びと努力は続く。

『竹もと』に集って学ぶメンバーの中に、涼子(桜井ユキ)のお付女中・玉(羽瀬川なぎ)がいて、しかも辞書を片手に読み進めているのが『Uncle Tom's Cabin(アンクル・トムの小屋)』。
。米国の奴隷解放問題に大きな影響を及ぼしたとされる作品である。いつの時代も、エンターテイメントは政治と無縁ではない。

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花岡(岩田剛典)は司法官試補として働き、昼休憩に寅子と待ち合わせてお昼ご飯を共にする仲だ。清い。そしてこのふたりらしい。
ふたりの待ち合わせ場所の噴水は愛知県名古屋市の鶴舞公園、昔から名古屋市民の憩いの場である美しい公園で、第1話からちょいちょい映っている。ドラマ内で裁判所として登場する重厚な建物・名古屋市市政資料館とともに名古屋にお越しの際は是非、聖地巡りを楽しんでいただきたい。

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『竹もと』にも土足で踏み込むのか、特高。土足というのは「場を侵す」ことを端的に示すなあ。これを思うと、猪爪家家宅捜索時に「靴はお脱ぎいただきたい」と毅然と言ってのけた優三(仲野太賀)はとことんファインプレーだったと振り返る。が、相手が検察でなく特高だった場合、あの要求を飲んでくれたかは甚だ怪しい。思想を取り締まる権力は、相手を震え上がらせてナンボであるのだから。

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「まだ諦めてないのか。無駄な努力と言ったのに」
「朝鮮人で、思想犯の兄を持つ君を(高等試験に)受からせるやつがどこにいる」

久保田先輩が口述試験に落ちたとき、そうだと思いたくなくて打ち消していた考えがある。女性だから合格できなかったのではと。
しかし今日、特高の言葉を聞いて確信したのだ。朝鮮人が受かるわけがないというのなら、女性だからという理由があっても不思議ではない。実際、現代でもつい数年前に、医大の受験生で女子だけ減点されていたことが明らかになったではないか。
社会的属性差別が試験にあるのならば、どんなに優秀でも、どれだけ努力しても、合格しない―。

これで本当に、石を穿つことができるのか。
そして、崔さんは無事でいられるのか。ドラマはいま昭和13年、太平洋戦争は目前である。

(つづく)


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