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そして雨になる

かつて、見える系の占い師をする知人に

こんなことを尋ねたことがある。

会って嬉しくなる人はいる?と。

即答した彼女は、およそ普段のキャラクターから離れていた。

ううん、居ない!

驚くほど清々しいもので、
彼女自身とのギャップに

思わず運転席から助手席に
顔を向けてしまった。

分け隔てのない対応とウィットに飛んだ会話。

場を明るくする心配りとチャーミングな人柄。

仕事柄に培ったものもあるかもしれないけど、

即答した彼女を察するに、
職業柄、見たくなものがこれまでに

沢山あったのだろうな、とそんな風に感じた。

まぁ、仕事柄、誰かに肩入れするようなことを

言うのも難しかったのかもしれない。

ふとそんなやりとりをした思い出が
過りながら、

また会いましょう、うふふと

待ち侘びたアーティストの友人と現地集合で

晩秋から冬の間は虹の町とも言われる
滋賀県の北西部

高島市朽木町の「はせ川」へ。

朽木(くつき)町は滋賀県高島市でも山側で、

奥の山で猟ったジビエが楽しめるお店や

奥座敷的な隠れ名店が点在する。

山裾まで降りてきた靄が
横切る龍のように細長く伸びている

それを横目に車を走らせ続けると

今度はまだらに紅葉する山が眼前に迫ってくる。いい季節だ。

少し見上げれば深緑の針葉樹に
雨雲が被さって、

水墨画的な美しさの山頂。

しっとり濡れた紅葉がチラリチラリと
舞い落ちる。

見飽きることない山景色のドライブウェイを楽しみながら

一年ぶりのランチとなった彼女との再会に
心躍らせた。

でもなぜか彼女と会うと、高確率で雨が降る。

彼女の作品を買いに行く時も雨。

お店の麓にある駐車場で合流して一言目には

お互いが観念と確信が合わさったような気持ちで言い放つ。

「また雨じゃん!」からの

「会うと雨になる組み合わせってあるんやなぁ」

お互い晴れ女。だけど会う日は高確率で雨になる。

なんでやねん、と笑うしかない。

1年前、たまたま見かけたSNSで
彼女が綴る自身の作品紹介

その行間の艶っぽさに惹かれてファンとなり、

作品を求めて実際に会ってピンと来た割に

距離をどう詰めるかどうか
思案したりなんかして。

彼女に恋したのかと
突っ込む自分がいたり。

新蕎麦を求める共通点から

葛川にある「杢」(こちらも確かなお味の有名店!)にて

相伴したのが一年前。

まぁ、新蕎麦にはまだ時期尚早だったオチ付きの

珍道中を楽しんだ訳なんだけども。

あの日も雨だった。

窓から黄色と赤の二色の紅葉が
時折吹雪のように

落ちていく景色を見ながらはせ川さんのランチ。

岩魚のふっくらした焼き加減に感動しながら

柿とほうれん草の胡麻和えも
塩梅の良いもので。

きっとこれは近くの山で獲ったなめこなだろう、

と勝手に思いを馳せてお出汁の香りが躍る味噌汁を堪能し。

友人のオーダーした鯖寿司の美味しさにも目を丸くして。

繕うこともない、気を遣うこともない、

たとえ言葉足らずでもどこか通じているような

心地良さの中にある会話と、

美味しいランチタイムを過ごす。

普段は特段連絡を取り合うこともなく現地集合現地解散の潔さと

歳を重ねても心地よい距離感と関係を築く細く長くの予感。

仲の良さとは比例しない情報量。全てを知る必要もなく。

20代、30代と駆け抜けて、

この歳にならなきゃその大切さに気が付かなかっただろうな。

今度は琵琶湖方面まで下り、二次会は

建具や古材を生かして作ったインテリアが素敵な

古良慕さんにてティータイム。

高島市に移住する突き抜けたアーティストの話から

地元も移住問わず、ポテンシャルの高さについて話したり

取り留めないことから様々に。

雨が繋げるご縁を楽しむ1日。

さて、また明日から仕事頑張るぞ。と解散。

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