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Web3 とは~デジタルの民主化及び社会は実現するか?~

 インターネットの世界が変革期に差し掛かっています。1990年代初頭のインターネット黎明期のWeb1.0(パッシブ(受動的)にホームページの閲覧中心)から始まり、2000年頃から普及・拡大したSNSやwikiを使ったアクティブな参加型のWeb2.0。そして今年はWeb3(Web3.0とも)元年とも言われ、ネットの世界が様変わりしようとしています。

 Web2.0では米GAFAM等の巨大IT企業がプラットフォーマーとして情報や富を独占していました。これに対しWeb3では、分散型台帳技術と言われるブロックチェーンを活用することで中央集権的システムから分散型システムへと促され、プライバシーの確保や活動に応じた情報や富の平等な分配が可能になると言われています。
 米の巨大IT企業がWeb3に対応した新興ベンチャー企業群にたやすく駆逐されるとは思えませんが、これまでに多くの企業が栄枯盛衰を繰り返してきた歴史を鑑みると何が起きても不思議ではありません。

 ブロックチェーン活用というとビットコインやイーサリアム等の金融通貨の一翼を担う暗号資産が既に一般化しています。そのため金融分野においてはDeFi(Decentralized Finance:中央銀行を介在させない)と呼ばれる分散型金融がいち早く注目され、サービス開発も進んでいます。DeFiは管理者のいない分散型の金融システムであるため、ユーザ同士で金融サービスを行えます。ユーザ間の取引は全てブロックチェーンに記録されることから透明性が高く、データ改竄等の不正行為も不可能と言われています。今後、DeFiの拡がり次第では金融業界の勢力地図が大きく変わるかも知れません。

 Web3では金融分野以外でも様々なサービスが期待されています。今話題のメタバース(仮想空間内での様々なサービス)やNFT(Non-Fungible Token: 偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ)、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)などがその代表です。メタバースは必ずしもWeb3とは限りませんが、Web3ととても相性の良い組み合わせと言われています。

 昨年10月に米フェイスブックが社名をメタに変更して以来メタバースが俄然注目されています。ゲームに限らず、バーチャルな三次元空間をビジネス、エンタテイメント、ショッピング、教育など生活のあらゆる場に活用することで場所と時間の制約から解放され、人々の能力と活動の範囲を画期的に拡張するものと期待されます。将来的にメタバース内市場は、リアルの経済規模を軽く超える事も充分考えられます。更にメタバースがWeb3と組み合わさる事で生まれる新たなパラダイムは、より自由で多様性に富んだ民主的な世界を作り上げる可能性を秘めています。
 
 Web3ではコピーが容易なデジタルデータにブロックチェーン技術を活用することで唯一無二な資産価値を付与するNFTが重要な役割を果たします。NFTにより音楽、小説、グラフィックデザイン等のデジタルアートやゲームなど世界中の個人間で安心・安全な取引が可能になります。メタバース空間内でNFTを活用すれば、個展を開いてアート作品を売買したり、有料コンサートを開催したりと個人の活躍の場が広がる事が期待されます。

 またWeb3が本格化する時代では従来の株式会社などの組織運営とは根本的に異なるDAOと言われる組織形態が注目されています。DAOは、国境を越えた中央管理者不在の民主化したバーチャル空間における分散型自立組織です。DAOは投票による意思決定システムと所有権の分配により透明性の高い完全民主化した組織運営を実現します。資金調達も容易になり、働く人のインセンティブも明確になるというメリットも期待されます。わが国でも既にコンテンツ創作やイベントの企画運営、クラウドファンディングなど複数のDAOが運営されています。

 このようにWeb3とはWeb2.0における中央集権から脱し、デジタルの世界に分散自立化した真の民主化を実現するパワーを秘めたムーブメントなのかも知れません。
 さらにWeb3は、金融、エンタメ、ビジネス、生活分野などに留まらず、政治・行政分野でも大いにその力を発揮するかも知れません。逆に政治・行政分野こそ積極的にWeb3を活用して透明性の高い、平等でフラットな真の民主化を実現して欲しいものです。

<2022/10/13>

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