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中国武漢からの手紙

 今回は中国武漢市(中国中部の湖北省)で華中農業大学(Huazhong agricultural university)に研究留学中の大前奈月(なつき)さんをご紹介しましょう。
彼女は学生時代から語学、写真と一人旅が趣味だとか。
 初めての中国訪問では日々、中東含めた様々な国の人との関わりで刺激を受けていると話されます。リモートインタビューの予定でしたが、すでに原稿をきちんとまとめてくれていて、彼女の律儀さが現れています。自己紹介から始まりますが、これから数年間は研究のために滞在されるとのことですので、現地からの中国レポートは今後も連載する予定です。

自己紹介:
 初めまして、NTSで翻訳や企画などを担当させて頂いております大前奈月と申します。現在中国に留学中です。

1)NTSとのご縁の経緯

 私の場合は幸運が重なって偶然ご縁を頂けたという方向です。図書館が好きで、様々な分野や体系的にまとまった本を眺めるのが趣味の一つでした。    
 お気に入りの本の一つが「元素の生物化学」で、そこでNTS社を知りました。また、作品としての本の論理構成の美しさや文章を書いたり語学が好きで翻訳という仕事に憧れを持っていました。

 数年前に、「元素の生物化学」の翻訳を行われていた石井教授主催の機械学習の集まりに参加した際に翻訳の相談したところ、「Julia データサイエンス Juliaを使って自分でゼロから作るデータサイエンス世界の探索」をグループ翻訳することになり、NTSとの最初のご縁を頂くこととなりました。その後、「Agricultural Bioinformatics―オミクスデータとICTの統合」「ニューロモルフィックコンピューティング: 省エネルギーな機械学習のハードウェア実装に向けて」の翻訳にも関わる機会を頂き、現在は企画にも関わらせて頂くようになりました。

 翻訳本の企画提案にあたり、本や翻訳という立ち位置の意味を考えたり、出版を通した社会課題への貢献なども考えるようになりました。現実的な制約も多くありますが、海外ならではの作品や興味深いトピック・コンセプトを日本に取り入れたり、海外在住経験を生かして日本の長所を海外に売り出す手伝いなどもできたらと考えています。吉田社長の、大きな社会課題も含めた挑戦的で壮大な構想や新たな技術やコンセプトなども積極的に取り入れる姿勢にも共感することが多く、少しでも実現に貢献できたらと考えています。

 また、知識や経験豊富なスタッフの中で企画提案するという貴重な機会を頂き、知識の深さと幅の必要性を痛感するとともに、知識や意見が何らかの形に繋がること・ものづくりに関われることには大きなやりがい(と共に責任)も感じており、良い提案を通じてNTS社へも貢献できるよう、不足点を補いつつ今後とも精進します。

2)翻訳本と研究のテーマ方針

翻訳:環境課題へ
 身近な地球レベルの課題としてはプラスチック汚染、食料・水確保、気候変動、エネルギー問題、生物や環境保護などは重要な課題と強く感じており、以前研究所に勤務していた際には微生物を用いた環境課題解決に関わるプロジェクトに参加し、この経験は色々な分野での微生物の応用可能性を強く意識するきっかけとなりました。
更にコロナや中国に来てこれらの世界課題の重要性を再認識したこともあり、翻訳の企画では自然とこれらの方向のトピックが多くなりました。気候変動生物学、ナノテクノロジーを用いた環境浄化、極限酵素と産業利用、マイクロバイオームと気候変動、One Healthなどに関する企画を行い、1、2年以内に出版される予定なので、ご関心ある方はぜひお手に取って頂けるととても嬉しいです。

研究:微生物と植物の相互作用
 現在の研究分野は微生物と植物の相互作用です。人間の体に住む腸内細菌が人間に様々な影響を与えるように、植物の各部位に住む多数の微生物が植物に様々な影響(病気にしたり、植物のストレス耐性を高めたり)を与えています。
基礎方向ではこれらの分子機構や進化を検証しており、技術的にはバイオインフォマティクスと分子生物学を主に用いています。農地での実用には課題も多いですが、病原体や環境ストレス耐性強化などにより、安定した食糧生産や化学肥料削減などへの応用の可能性もあり、基礎と応用の両方から植物と微生物相互作用にアプローチできたら理想です。最近出版された本でいうと「バイオスティミュラント」に近い分野です。
 色々な世界課題は一人では手に負えないので、翻訳と自分の研究でそれぞれこれらに関わり、地球規模の社会課題に何らかでも貢献できたら理想です。

武漢長江の黄鶴楼

3)写真

科学だけでなくアート・感覚という方向からも自然システムに
 趣味の一つは写真で、森林ごとに異なるシステムに惹かれ、生態地理歴史的に特徴ある様々な森林シリーズでまとめようと森林中心で撮っていました。写真を通して、自然(人との関わりも含めた)システムに対して、科学だけでなくアート・感覚という方向からもアプローチできたらとも思っています。中国では日常も新鮮で日常のスナップ写真が増えました。中国の自然はスケールが大きく特徴的で、文化も独特で興味深く、いつか写真遠征して色々なテーマでまとめられたら理想です。あとは中東も訪れたいなと。

武漢南湖と高層ビル

〜<次号に続く>

プロフィール:
株式会社NTS 企画グループ 翻訳担当
華中農業大学(Huazhong agricultural university, CSCフェロー) 

<2023/02/18>