香港チャンピオンズデー2024 海外有力馬解説&展望
2018年に創設され、今年で6年目となる春の香港王者決定戦・香港チャンピオンズデー(Hong Kong Champions Day)(冠軍賽馬日)。
1日に3つのGⅠレースが行われ、各路線の頂点が決定される。香港の23/24年シーズンの総括と言えよう。
歴代最多となる数の海外調教馬を迎える予定の今年、迎え撃つ現地香港のメンバーも非常に強力であり、全てのレースがレベルの高いものとなることが期待される。
また、今年もJRAによる国内馬券発売が予定されており、日本馬の出走も相まって、国内における関心も年々高まり続けていると言えるだろう。
本記事では、3つのGⅠについて1つずつ有力馬解説・展望を行い、簡単に予想していきたい所存である。
なお、舞台となるシャティン競馬場は、今週ずっと雨が降っている。
当日も大雨が降る予報のため、馬場状態は注視すべきポイントになる、ということは展望・予想の前提条件として予め書き記しておく。
チェアマンズスプリントプライズ(Chairman's Sprint Prize)(主席短途獎)
4/28 14:50(日本時間15:50)
格付け:GⅠ
開催地:香港・沙田(シャティン)競馬場
条件:3歳以上・右回り・芝1200m
斤量:126ポンド(約57kg)
総賞金:2200万香港ドル(約4億3400万円)
出走予定馬
①(7)🇭🇰カリフォルニアスパングル(California Spangle)(加州星球)/B.アブドゥラ
②(11)🇯🇵マッドクール(Madcool)(消暑樂祭)/坂井瑠星
③(2)🇭🇰ビクターザウィナー(Victor The Winner)(維港智能)/K.リョン
④(10)🇭🇰ラッキーウィズユー(Lucky With You)(幸運有您)/A.アッゼニ
⑤(5)🇭🇰インビンシブルセージ(Invincible Sage)(賢者無敵)/H.ボウマン
⑥(1)🇭🇰ハウディープイズユアラブ(Howdeepisyourlove)(嫡愛心)/J.マクドナルド
⑦(6)🇯🇵サンライズロナウド(Sunrise Ronaldo)(旭日朗途)/D.レーン
⑧(8)🇭🇰フライングエース(Frying Ace)(威力奔騰)/Z.パートン
⑨(9)🇭🇰ムゲン(Mugen)(綠族無限)/B.シン
⑩(4)🇬🇧ビリービング(Believing)(堅信)/H.ベントレー
⑪(3)🇭🇰リトルブローズ(Little Brose)(禾道小子)/K.ティータン
※4/25現在、()内はゲート番
有力馬解説・展望
年末の香港国際競走における香港スプリント(GⅠ)と同じく、向正面半ばからスタートするワンターンの芝1200mコースで争われる、チェアマンズスプリントプライズ(GⅠ)。
日本から2頭、英国から1頭が参戦するが、中心となるのは香港馬であると考えていいだろう。
香港の短距離路線、特にスプリント戦線のレベルの高さについては、今更書き記すまでもなかろう。
昨年12月10日の香港スプリント(GⅠ)は、日本と欧州から有力なスプリンターを迎えて行われたが、蓋を開けてみれば香港馬が掲示板を独占する結果となった。
この結果を「ホームグラウンドの優位性があるから」という一言だけで片付けることはできず、香港のスプリント戦線は世界でもトップクラスと評価すべきだろう。
しかし香港スプリント後、年明けからの香港のスプリント戦線は混迷している。
香港スプリントを制したことで香港にある短距離GⅠの全てに優勝したこととなった王者・ラッキースワイネス(Lucky Sweynesse)が、思わぬ不振に陥ったからだ。
チェアマンズスプリントプライズの有力馬解説・展望に入る前に、ここ4ヶ月ほどの香港のスプリント路線の流れを復習しておこう。
事の発端となったのは1月28日、シャティン芝1200mで行われたセンテナリースプリントカップ(GⅠ)。
連覇のかかるラッキースワイネスが単勝オッズ1.3倍の圧倒的1番人気に支持され、銀行確定と言われたレースであったが、ラッキースワイネスは何と6着に惨敗。
単勝オッズからして、この衝撃度は例えるなら昨年のジャパンカップでイクイノックスが掲示板外に飛んだくらいのものだった。
明らかに精彩を欠く走りを見せたラッキースワイネスは、続く3月10日のGⅠ・クイーンズシルバージュビリーカップ(シャティン芝1400m)でも5着と、初めて2戦連続で馬券圏内を外す結果となった。
香港チャンピオンズデーの前哨戦である4月7日のGⅡ・スプリントカップ(シャティン芝1200m)では本来の姿を取り戻したが、レース後に故障が判明し、今シーズンは全休を余儀なくされている。
そして、一昨年の香港スプリントを優勝したウェリントン(Wellington)も、鼻出血の発症により電撃引退。
香港スプリント後はラッキースワイネスの後塵を拝し続けていたものの、ロイヤルアスコット遠征以外では3着圏内を外さない堅実な走りを見せ続け、香港スプリンター2番手の地位に居座っていた馬も、既に香港の地を去って故郷の牧場に戻っている。
と、ここまでお読み頂ければ分かるだろうが、香港スプリントから約4ヶ月の間に、香港のスプリント戦線の勢力図は一変した。
ラッキースワイネスが王座から陥落した今、誰が新たなる香港短距離王者となるのか──それを決定するのが、今回のチェアマンズスプリントプライズとなるだろう。
そんな中、香港現地における当日の1番人気となると予想され、空位となった香港短距離王者の座に最も近いと考えられるのが、完全なる復調を果たした実力馬。
「香港三強」の一角、カリフォルニアスパングル(California Spangle)だ。
今年に入ってからラッキースワイネスが不振に陥ったと書いたが、カリフォルニアスパングルも昨年の11月頃から不振に陥っていた。
元々はマイル路線を主戦場としていた馬で、特筆すべきは一昨年の香港マイル(GⅠ)。
自ら先頭に立ちペースを握ったカリフォルニアスパングルは、香港王者・ゴールデンシックスティ(Golden Sixty)の猛烈な追い込みを退けて逃げ切り勝ち。
遂に世代交代か──と思われたのだが、その後はゴールデンシックスティ相手に連敗し、2着に甘んじることとなった。アイツ本当に何なんですかね一度は先着したバケモンに苦しめられながらも、生涯に渡って3着圏内を確保し続けるという、抜群の安定感を誇っていたカリフォルニアスパングル。
だが、昨年11月19日に行われた香港国際競走前哨戦、GⅡ・ジョッキークラブマイル(シャティン芝1600m)で4着に敗戦し、生まれて初めて3着以下に転落。
本番の香港マイルではまさかの13着と大敗、その後も元日のGⅢ・チャイニーズクラブチャレンジカップ(シャティン芝1400m)7着、1月21日のGⅠ・香港スチュワーズカップ(シャティン芝1600m)4着と4連敗を喫した。
それも惜敗などではなく、勝ち馬から離されてキッチリ負けた。それまで一度たりとも3着圏内を外していなかった馬が、である。
潮目が変わったのは3月10日、クイーンズシルバージュビリーカップ(GⅠ)。
オッズ11.0倍の4番人気タイで出走したカリフォルニアスパングルは、新コンビのブレントン・アブドゥラ騎手に導かれてハナを叩き、直線でも脚色鈍らず逃げ切り勝ち。
一昨年の香港マイル以来となるGⅠ・2勝目を挙げ、感動の復活勝利を果たしたのである。この日、筆者は金鯱賞観戦のため中京競馬場に行っており、レース中継は帰り道に訪れた回転寿司店で見ていたのだが、見ていて思わず大声が出てしまった。金鯱賞を見てる時より騒いでた。大変ご迷惑をおかけし、すみませんでした。
勢いに乗ったカリフォルニアスパングルは、ドバイのメイダン競馬場へ飛んだ。
3月30日、ドバイワールドカップデーにおける芝1200m直線コースのアルクオーツスプリント(GⅠ)でもジャスパークローネが新潟競馬場を走るのを傍目に見事優勝、GⅠ・3勝として香港スプリント路線のレベルの高さを世界の舞台で証明してみせた。
ゴールデンシックスティ・ロマンチックウォリアー・ラッキースワイネス──この3頭は一部で「香港三闘神」と呼ばれていたが、この1月半の間に我々は思い出させられた。
ゴールデンシックスティ・ロマンチックウォリアーと並び讃えられ、「香港三強」と呼ばれた3頭の最後の1頭が誰であったのかを。
そう、その1頭とはゴールデンシックスティを破った馬──カリフォルニアスパングルだったのだ。
路線変更で復活したカリフォルニアスパングルは、満を持して香港短距離王者の座を狙っている。なお、香港三強および香港三闘神にロシアンエンペラー(Russian Emperor)を加えて「香港当代四大天王」とする場合もあるが、実際のところ日本で思われているほどの馬ではないので、加えても「ヤツは我ら四天王の中でも最弱」と言われるオチが待っているんだよな……。
カリフォルニアスパングルに対抗する、もう1頭の香港短距離王者有力候補はビクターザウィナー(Victor The Winner)である。
この馬は最早、日本の競馬ファンにとっても馴染み深い馬だと言えるだろう。
前走は日本の中京競馬場芝1200m、春のスプリント王決定戦・高松宮記念(GⅠ)。
香港馬の高松宮記念遠征はブリザード(Blizzard)以来、エアロヴェロシティ(Aerovelocity)に次ぐ史上2頭目の香港馬による高松宮記念優勝を目指しての出走となったビクターザウィナーは、素晴らしいスタートと驚異的なテンの速さで日本馬からハナを奪い去った。
最後の直線では大外に持ち出し、勝ち馬のマッドクールと2着馬ナムラクレアにヴィクトリーロードを明け渡してしまう形にはなったが、それでも3着で入線。
掲示板入りした馬の中では唯一、直線で外を走っての大健闘となり、日本の競馬ファンに「香港のスプリンターは強い」ということを教え込む結果となった。
直線の進路取りだけが悔やまれたところだが、高松宮記念当日は管理するダニー・シャム調教師が同日にシャティン競馬場で行われた香港ダービーに管理馬を出走させる関係上、中京競馬場に不在であった。
デレク・リョン・カーチュン騎手も高松宮記念当週が中京競馬場は勿論、日本国内における初騎乗だった。
雨が降りしきる非常に読み辛い馬場状態の中で、日本の競馬に対する知識・経験の差が出てしまった形と言えるだろう。これはもう仕方がないと言わざるを得ない。
ビクターザウィナー自身も初の海外遠征であり、香港馬は遠征競馬というものを国内では経験しない(香港は国土が狭いため)上、渋滞により中京競馬場には数時間遅れての到着となっていた。
雨が降る前の中京競馬場の芝コースで行われた高松宮記念の最終追い切りでは、ラスト1ハロン11秒台を馬なりで叩き出している辺り、馬場が渋ったことも彼にとっては良くなかっただろう。高松宮記念の開催時期、変えた方が良くね?
これだけのマイナス要素が揃えば、掲示板から飛んだとしても何ら不思議はないが、結果は3着。
しかも前述の通り、掲示板入りした馬の中では唯一、直線で外を走っていたビクターザウィナーの能力には、最早疑うべきところなど無い。
センテナリースプリントカップ(GⅠ)は中穴人気での優勝だったが、元々は香港スプリントの前哨戦であるGⅡ・ジョッキークラブスプリント(シャティン芝1200m)でもラッキースワイネスと差のない競馬を展開しており、GⅠ制覇は決してフロックではないと筆者は見ている。
まだ5歳と、香港馬としては若いと言える馬。
このチェアマンズスプリントプライズにおいて高松宮記念覇者マッドクールへのリベンジを果たし、香港の新たなる短距離王者となり、これから先の香港競馬界を引っ張っていく1頭になってほしいところである。
カリフォルニアスパングルとビクターザウィナー、この2頭が1番人気・2番人気になると考えられるが、問題が1つある。
この2頭は両方とも逃げ馬なのである。
競馬ファンの皆様は、もうお察し頂けるはずだ。
強い逃げ馬が2頭──このレース、緩いペースにはならない可能性が高い。
今回が初対戦となるため、カリフォルニアスパングルとビクターザウィナーのどちらがハナを切るかは予想しづらいところがある。
また、2頭とも控える競馬ができる馬だ。
しかし、私はロケットスタート能力を持ち、テンも速くずっとスプリント路線を使われ続けているビクターザウィナーの方が先頭に立つのではないかと思う。
枠順的にもビクターザウィナーの方が内であり、カリフォルニアスパングルは外目、ビクターザウィナーの半馬身後ろくらいに付けることになるのでは──と見ているが、前の2頭がゴリゴリやり合う展開も考えられる。
ペースを作っているのが想定1番人気・想定2番人気の有力馬となると、後ろの馬たちもペースが速いとしても着いて行かざるを得なくなる。
カリフォルニアスパングルとビクターザウィナーは、最後まで止まらないと考えられるからだ。
ハイペースだったとしても、この2頭を追いかけなければ間に合わなくなる。
差しきれず、まんまと逃げ切られてしまう。
ということで、今年のチェアマンズスプリントプライズは消耗戦じみた地力勝負になるのではないか、と私は予想している。
そして、前が速くなった場合に警戒したいのが差し馬の台頭だ。
前の2頭をまとめて差し切る可能性があると考えられる馬で、1番最初に名を挙げるべきはラッキーウィズユー(Lucky With You)ではなかろうか。
昨年暮れの香港スプリント(GⅠ)でブービー人気ながら2着に激走し、ラッキースワイネスとともに「ラッキーラッキー馬券」を演出した馬だが、続くセンテナリースプリントカップ(GⅠ)においても2着に健闘。
ウェリントンに二度目の先着を果たし、香港スプリントの走りがフロックではなかったことを証明してみせた。
クイーンズシルバージュビリーカップ(GⅠ)は1ハロンの距離延長に問題があったか惨敗したが、再び1200mに戻る今回はしっかり押さえておきたい馬だと言えよう。
また、ハウディープイズユアラブ(Howdeepisyourlove)も侮り難い1頭だ。
今シーズンに香港クラシックを戦った5歳セン馬で、今回がGⅠ初挑戦となる。
とはいえ、これまで戦ってきた相手は決して弱くなく、ギャラクシーパッチ(Galaxy Patch)(※チャンピオンズマイル出走予定のため後述)に先着を果たした経験がある上、今回はオーストラリア最強の男ジェームズ・マクドナルド騎手と3戦ぶりのコンビを組む。
前哨戦のスプリントカップ(GⅡ)は4着に敗れており、買うのはまだ早いという気もするが、その素質は間違いないものだと思われる。
フライングエース(Flying Ace)はセンテナリースプリントカップ5着以来2度目のGⅠ挑戦となり、スプリントカップ3着からの参戦。
前々走ではハウディープイズユアラブを下しており、香港リーディングジョッキーのザカリー・パートンとのコンビ継続も心強いと感じられる。
前哨戦スプリントカップの2着馬がインビンシブルセージ(Invisible Sage)。
1月7日のバウヒニアスプリントトロフィー(GⅢ)では、芝1000m直線コースのハンデ戦でこそあれビクターザウィナーに先着しているが、前走スプリントカップでは決して完調とは言えなかったラッキースワイネスに余裕を持って差されており、このメンバーを相手にどこまでやれるのかという疑問はある。
まあ、それを言ったらスプリントカップから参戦するハウディープイズユアラブやフライングエースなども怪しくなってしまうわけだが……。
ムゲン(Mugen)は今回がGⅠ初挑戦となり、ここがトップ層との力関係を測る舞台となる。
レッドライオン(Red Lion)、クーリエワンダー(Courier Wonder)、デュークワイ(Duke Wai)といった重賞戦線にも顔を出してくる馬たちに先着した実績こそあるが、ハンデが軽かったことが1つの大きな要因となっていると見られる。これをどう評価するかがポイントになる。
オーストラリアからの移籍初戦を迎えるのがリトルブローズ(Little Brose)で、2歳時にはGⅠ・ブルーダイヤモンドステークス(ラドブロークスパーク芝1200m)優勝の実績があるが、3歳以降は成績が振るわない。
香港調教馬としては珍しい牡馬であり、種牡馬入りの可能性も残されているのだろうが、近走成績を見る限りは難しそうだと結論せざるを得ないか。
英国から参戦するビリービング(Believing)は昨年9月のGⅠ・スプリントカップ(ヘイドックパーク芝1200m)で3着という実績があるが、正直なところ今回のレースでは難しいと言わざるを得ないだろう。
昨年の香港スプリントに参戦した欧州トップスプリンターのハイフィールドプリンセス(Highfield Princess)が6着に敗戦したことを考えても、今の欧州スプリンターでは香港のスプリンターには太刀打ちできないのではないだろうか。
馬場適性の問題もあり、シャティンの芝が向くようなら──とは思うが、こればかりはやってみなければ分からないし、仮に激走があっても頭まで来れるかどうか。
ただ、馬場状態が悪くなりそうなのは良いのではないかという気はする。
2頭の日本馬も、申し訳ないが地力が足りるか疑問だ。
日本の短距離重賞ですら勝ちきれていないサンライズロナウドは本当に厳しい戦いを強いられるだろうし、マッドクールも昨年の香港スプリントで見せ場なく惨敗してしまっている。
ワンチャンあるとすればマッドクールだろうが、高松宮記念は馬場条件がかなり特殊であった上に、ホームとアウェーというのも考えると、ビクターザウィナーとの差は逆転されてしまう可能性が高い。
ただ、シャティン競馬場は前述通り週中に大雨が降っているため、馬場状態次第では日本馬が激走するかもしれない。
2頭の健闘と無事を祈るのは勿論だが、馬券を普通に検討した場合は、マッドクールを3着に入れるかどうかということになりそうか。
過去、日本調教馬は4着が最高着順であり、一度たりとも馬券に絡むことができていない(香港国内ならば4連複・4連単に引っかかっているが、JRAの国内馬券発売においては無関係である)のがチェアマンズスプリントプライズ。
ラッキースワイネス・ウェリントンがいなくなったと言えども、今年もこの壁は高いものになるだろう。
チャンピオンズマイル(Champions Mile)(冠軍一哩賽)
4/28 18:00(日本時間17:00)
格付け:GⅠ
開催地:香港・沙田(シャティン)競馬場
条件:3歳以上・右回り・芝1600m
斤量:126ポンド(約57kg)
総賞金:2200万香港ドル(約4億3400万円)
出走予定馬
①(7)🇭🇰ゴールデンシックスティ(Golden Sixty)(金鎗六十)/C.ホー
②(6)🇭🇰ヴォイッジバブル(Voyage Bubble)(遨遊氣泡)/J.マクドナルド
③(11)🇭🇰ビューティーエターナル(Beauty Eternal)(永遠美麗)/Z.パートン
④(4)🇭🇰ビューティージョイ(Beauty Joy)(美麗同享)/B.アブドゥラ
⑤(10)🇯🇵オオバンブルマイ(Obamburumai)(大宴重酬)/D.レーン
⑥(9)🇬🇧ブレーヴエンペラー(Brave Emperor)(勇大帝)/L.モリス
⑦(2)🇯🇵シャンパンカラー(Champagne Color)(鑽彩)/坂井瑠星
⑧(5)🇯🇵エルトンバローズ(Elton Barows)(傲蹄巴魯)/西村淳也
⑨(1)🇭🇰ギャラクシーパッチ(Galaxy Patch)(錶之銀河)/B.シン
⑩(8)🇭🇰レッドライオン(Red Lion)(紅運帝王)/H.ボウマン
⑪(3)🇭🇰タージドラゴン(Taj Dragon)(神虎龍駒)/A.アッゼニ
※4/25現在、()内はゲート番
有力馬解説・展望
香港マイル(GⅠ)と同じく、シャティン競馬場の芝1600mで行われるワンターンのマイル戦。
日本馬も3頭出走予定であるが、ここには1頭、最早説明する必要を感じないスーパースターホースがいる。
ゴールデンシックスティ(Golden Sixty)。
今回がラストランになる、香港史上最強マイラーとの呼び声も高いGⅠ・10勝馬。
現在チャンピオンズマイル3連覇中であり、4連覇をかけて出走する。ちなみにGⅠは4連勝中となっている。
セン馬の9歳となった今でも、衰えは全く無いどころか、むしろ更に強くなっているのではないかと感じさせるバケモンである。
今シーズンは香港マイル(GⅠ)を完勝。
一頓挫あって1月の香港スチュワーズカップ(GⅠ)は回避となったものの、1月中には既に馬場入りを再開しており、目標をこのチャンピオンズマイル1本に絞って順調に調整が行われている。
主戦騎手を務めるヴィンセント・ホー・チャクイウは今シーズン、落馬負傷のために戦線を離脱したが、4月に入って調教騎乗を再開し、既に復帰を果たしている。
そして、バリアトライアル(実戦形式の追い切り)におけるゴールデンシックスティの動きは、非常に素晴らしかったと断言できる。
シャティン競馬場のオールウェザーコースで行われたバリアトライアルに、ゴールデンシックスティはカリフォルニアスパングル(California Spangle)とともに出走。
カリフォルニアスパングルが先頭でペースを作る中、ゴールデンシックスティは後方3番手付近を追走し、大外をブン回して直線コースへ向いた。
鞍上のC.ホー騎手が追い出しを開始した瞬間、異次元の末脚で前を捉え、カリフォルニアスパングルを相手に余裕の先着を果たした。
カリフォルニアスパングルが馬なり調教であり、ほとんど追われていなかったとはいえ、このパフォーマンスは目を見張るものがある。ゴールデンシックスティは間違いなく絶好調、最高の状態で出走してくるはずだ。
生涯30戦、その全てで手綱を取り続けた最高の相棒とともに、ゴールデンシックスティは今まさに有終の美を飾ろうとしているわけだ。
銀行──と言いたいところだが、懸念が1つある。
それは当日の馬場状態である。
ゴールデンシックスティは重馬場の経験が無い。
彼の勝利は全てがGoodまたはGood to Firm、いずれも日本語では「良」とされる時のものだ。
渋った馬場の経験はYielding(稍重)のみ、しかもたった一度だけ。2022年のGⅠ・香港ゴールドカップ(シャティン芝2000m)である。
この時は前走の香港スチュワーズカップ(GⅠ)で2着に敗れ、16連勝がストップした直後だったというのも考慮したいところだが、結果としては1着馬のロシアンエンペラー(Russian Emperor)から5馬身半離されての3着に敗れている。
2023年、Good to Firm(良)の香港ゴールドカップ(GⅠ)ではロマンチックウォリアー(Romantic Warrior)を抑えて優勝していることも考えると、馬場が悪化した場合は「銀行」たり得なくなるのではないか。
当日、馬場状態がYielding以下まで悪化するようならば、あえてゴールデンシックスティを疑ってかかるのも面白いかもしれない。
香港ゴールドカップと違ってマイル戦であることも考えると、流石に馬券を外すところまでは想定しづらく、地力だけで押し切ってくる可能性の方が高いと思うが、ゴールデンシックスティが2着に落ちるだけでも三連単のオッズがある程度付きそうな気がする。
対抗馬の筆頭は、やはり昨年の香港ダービー馬ヴォイッジバブル(Voyage Bubble)になるだろう。
香港マイルではナミュールに先着しての2着、その後はゴールデンシックスティ不在となったGⅠ・香港スチュワーズカップ(シャティン芝1600m)で、オッズ1倍台の1番人気に応える初のGⅠ制覇を達成。
香港ゴールドカップではロマンチックウォリアーと差のない競馬を展開し、僅差の2着に食い込んだ。
前走ドバイターフ(GⅠ)こそ13着と大きく崩れてしまったが、初の海外遠征・初の左回りであったことに加え、馬群が密集したことによって最内枠からのスタートが災いとなり、直線では完全に進路が無くなった。
更に目の前でキャットニップ(Catnip)が故障・落馬したことにより、決して小さくない不利を受けてしまった。
展開が向かなさすぎた上、事故もあって危うく巻き込まれるところだったことを考えれば、ドバイターフのレース内容については度外視しても問題ないだろう。
ただ、レースではマトモに走れなかったとはいえ、ドバイで使ったという事実は無視するべきではない。
ドバイから間隔が1ヶ月ほどしかないため、最大の懸念は海外遠征と詰まったローテ間隔による疲労だ。
海外遠征以前に今シーズンはGⅡ・ジョッキークラブマイル(シャティン芝1600m)での復帰から1ヶ月に1戦のペースで走っており、今回が6戦目となる。目に見えない疲労を疑ってしまうのは致し方ないことだろう。
実際、バリアトライアルにおいてもヴォイッジバブルの走りは軽い調整程度のものに留まっており、陣営としても疲労を溜めないことと状態の維持をメインに調整していると考えられる。
目の前で落馬事故が起こったことによるメンタル面への影響も心配されるところではあるが、身体能力自体が非常に高い馬であることは間違いない。
また、香港スチュワーズカップ以来のJ.マクドナルド騎手との再コンビもプラスになると考えられ、ここで巻き返してほしいところである。
この馬もまだ若い。新たなる香港のマイル・中距離王者に最も近いのはこの馬ではないかと筆者は考えている。
ラストランを迎えるゴールデンシックスティ相手にどれだけ走れるか、ヴォイッジバブルの走りに注目したい。
ビューティー軍団も無視できない。
まずはビューティーエターナル(Beauty Eternal)。
Z.パートン騎手が主戦を務める本馬は、香港マイルの前哨戦であるジョッキークラブマイル(GⅡ)を制覇している。
イマイチ勝ちきれないところがあり、GⅠには手が届いていない善戦ホースと化してしまっているが、ヴォイッジバブルに先着を果たしたりするなど、能力的には十分GⅠに手が届いても不思議はないはずだ。
ビューティージョイ(Beauty Joy)はチャンピオンズデーの前哨戦、GⅡ・チェアマンズトロフィー(シャティン芝1600m)でビューティーエターナルを抑えて優勝。
ジョッキークラブマイル(GⅡ)ではビューティーエターナルの2着、香港スチュワーズカップ(GⅠ)ではビューティーエターナルが2着でビューティージョイが3着と、たびたびビューティーエターナルと一緒に馬券に絡んでいる。
筆者は香港スチュワーズカップに際して、「ビューティーエターナルとビューティージョイのワイド1点!」と発言して見事に的中させたことがあるのだが(隙自語)、2頭のビューティーはどちらも実力馬であり、ビューティー馬券で挑むのも面白いのではないだろうか。
なお、香港マイルではビューティージョイ5着にビューティーエターナル6着、クイーンズシルバージュビリーカップ(GⅠ)ではビューティーエターナル4着、ビューティージョイ7着であった。
絶対お前ら仲良いだろ。勝負服のデザインは微妙に違ってるけど。もういっそコンビのアイドルユニットとして売り出せ(?)
そして、香港勢で続いて注目したいのはギャラクシーパッチ(Galaxy Patch)だ。
このギャラクシーパッチ、今シーズンに香港クラシックを走っている4歳世代なのだが、既に狂気のローテーションを歩んでいる。
日本でも芝ダート国内海外を反復横飛びする狂気のローテーションを歩んできた4歳馬がいるが、アレとはまた別の狂気を感じさせるのがこのギャラクシーパッチだ。
昨年11月から今年1月にかけてシャティン芝1200mのハンデ戦(条件戦)を3連勝、頭角を現したギャラクシーパッチ。
2月のシャティン芝1200mの条件戦ではハウディープイズユアラブの2着に敗れて連勝がストップし、3月3日のシャティン芝1000m戦でも5着に敗戦した。
と、ここからギャラクシーパッチは意味不明のローテーションを開始する。
次走に選ばれたのは3月10日のクイーンズシルバージュビリーカップ(GⅠ)。4歳にして、いきなり歴戦の猛者たちが待つGⅠへの殴り込みをかけた。
勿論、GⅠは初挑戦。斤量差もなく、連闘での出走。加えて、ギャラクシーパッチはここまで1200mまでしか経験がなく、1400m戦は初めてであった。
ここでギャラクシーパッチはなんと2着に激走。
カリフォルニアスパングルに1馬身差まで詰め寄り、この結果により香港クラシック二冠を達成していた4歳馬の筆頭格、ヘリオスエクスプレス(Helios Express)を超えるレーティングを獲得してしまった。
そんなギャラクシーパッチの次なる矛先は香港ダービー(L)に向けられた。
香港ダービーはシャティンの芝2000m戦であり、実に600mもの距離延長ということになる。
しかも、ギャラクシーパッチは香港でのクラシック登録がなく、莫大な追加登録料を支払っての出走。
クイーンズシルバージュビリーカップでの激走から割とすぐ直後にこの選択が発表された上、香港ダービーは3月24日開催。中1週でのレースとなった。
そして、ギャラクシーパッチはまたも2着に激走した。
かくして、今回選ばれたのは1200mのチェアマンズスプリントプライズでも2000mのクイーンエリザベスⅡ世カップでもなく、1600mのチャンピオンズマイル。
今度は400mの距離短縮となる上、ギャラクシーパッチにはマイル戦の経験が無い。
もう私にはこの馬のことが分からないのだが、1400mと2000mという全く異なる距離で結果を出していることは間違いない上、終いの脚には見るべきものがある。
1400mと2000mが行けたなら、中間の(?)1600mも問題なさそうな気はする。シランケド。
とにかく押さえておかないと痛い目に遭いそうだと、そう感じさせる魔性の馬である。おもしれー馬……。
このレースにも英国からの出走馬が1頭。
ルーク・モリスを背に出走するブレーヴエンペラー(Brave Emperor)は、フランス・ドイツ・イタリアと欧州各国を渡り歩きながら、マイル重賞を4勝している。
前走はカタール・アルライヤン競馬場で行われたマイル戦、アイリッシュサラブレッドマーケティングカップ(カタールGⅡ)で、昨年のGⅠ・アイリッシュ2000ギニー(カラ芝1600m)の2着馬カイロ(Chiro)を抑えての優勝を果たしている。
今回がGⅠ初挑戦となるが、これまでのレースとは桁違いにメンバーレベルが上がるため、この舞台でどこまでやれるかは分からない。試金石となる1戦だと言えよう。
とはいえ、様々な国の競馬場、様々な馬場に適応して結果を出してきたという点は評価できるのではないだろうか。
恐らく人気はしないと思うので、相手に入れてみるのももしかすれば面白いかもしれない……?
ここ2戦、クイーンズシルバージュビリーカップ(GⅠ)とチェアマンズトロフィー(GⅡ)で連続3着なのがレッドライオン(Red Lion)。ヒモとして一考の余地ありか。
タージドラゴン(Taj Dragon)はベストは芝1400mという印象があるが、ドンピシャの条件と思われたクイーンズシルバージュビリーカップは8着に終わった。
このメンバー相手で能力的に足りるか、という点ではハッキリ申し上げて疑問が残ると言わざるを得ない。
日本勢にとっては、ここも厳しいレースになるだろう。
オオバンブルマイはある程度渋った馬場にも対応できる馬だが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州で4月6日に行われたGⅠ・ドンカスターマイル(ロイヤルランドウィック芝1600m)からの転戦ということで、短期間に複数回の輸送と検疫を行っているために疲労が心配される。
また、1600mという距離への適性がどうかというのも気になる。アーリントンカップ(GⅢ)を勝ってこそいるが、あれは名手・武豊が終いに賭けるような競馬をしたからこそという印象もあり、ベストは1500mではなかろうかと思う。
ザ・ゴールデンイーグルの勝利は見事であったが故に巻き返しに期待したいが、あまりにも馬場が悪くなりすぎるのも良くない。渋りすぎないことを祈りたい。
昨年の毎日王冠(GⅡ)で展開利こそあれシュネルマイスター・ソングラインに先着しているエルトンバローズは能力が高い馬だが、中山記念(GⅡ)から分かる通り馬場が悪くなることが大きな懸念材料になる。
また、この馬も1600mがどうか。やはりベストは1800mな気がしてならないのだ。
シャンパンカラーは近走が振るわないというレベルではないが、芝の1600mを走るのは昨年の安田記念(GⅠ)以来となる。右回りなのがどうかというところだが、ようやく芝のマイルを走らせてもらえるのは良さそうだ。
難しいとは思うが、馬場が渋る今回はもしかすれば激走があり得るかもしれないと思うところはある。
ゴールデンシックスティの有終の美か、ヴォイッジバブルが世代交代を告げるか、ビューティー軍団の戴冠か、それとも思わぬ馬の激走があるのか。
いずれにせよ、香港の英雄・ゴールデンシックスティの最後の走りを目に焼き付けたい。
クイーンエリザベスⅡ世カップ(Queen Elizabeth Ⅱ Cup)(女皇盃)
4/28 18:40(日本時間17:40)
格付け:GⅠ
開催地:香港・沙田(シャティン)競馬場
条件:3歳以上・右回り・芝2000m
斤量:126ポンド(約57kg)
総賞金:2800万香港ドル(約5億5270万円)
出走予定馬
①(10)🇭🇰ロマンチックウォリアー(Romantic Warrior)(浪漫勇士)/J.マクドナルド
②(9)🇬🇧ドバイオナー(Dubai Honour)(譽滿杜拜)/T.マーカンド
③(1)🇯🇵ヒシイグアス(Hishi Iguazu)(滂薄無比)/D.レーン
④(5)🇯🇵プログノーシス(Prognosis)(先見)/川田将雅
⑤(6)🇭🇰ストレートアロン(Straight Arron)(直線力山)/C.ホー
⑥(4)🇭🇰ソードポイント(Sword Point)(知足常樂)/K.リョン
⑦(11)🇭🇰ニンブルニンバス(Nimble Nimbus)(觔斗雲)/A.アッゼニ
⑧(8)🇭🇰ファイブジーパッチ(Five G Patch)(錶之五知)/B.アブドゥラ
⑨(3)🇯🇵ノースブリッジ(North Bridge)(北橋)/岩田康誠
⑩(7)🇭🇰ハッピートゥギャザー(Happy Together)(越駿歡欣)/A.バデル
⑪(2)🇭🇰マッシヴソヴリン(Massive Sovereign)(大至尊)/Z.パートン
※4/25現在、()内はゲート番
有力馬解説・展望
香港チャンピオンズデーのメインレースは、故・エリザベス女王の名を冠するクイーンエリザベスⅡ世カップ。
年末の香港カップ(GⅠ)と同じく、芝2000mの競走だ。
最有力候補はロマンチックウォリアー(Romantic Warrior)。
この馬についても、最早説明の必要はなかろう。
現在このレースを2連覇中、3連覇をかけて出走する香港中距離界の英雄である。
今シーズンも彼は素晴らしい成績を収めている。
特に10ハロンでの活躍が顕著な馬だが、今期はオーストラリア遠征からスタート。復帰戦となったGⅠ・ターンブルステークス(フレミントン芝2000m)は休み明け・初の海外遠征というのもあってか折り合いを欠いて4着に敗れたが、これはあくまでも叩き。
本番のGⅠ・コックスプレート(ムーニーバレー芝2050m)では自信を持って大外を回し、先に抜け出したミスターブライトサイド(Mr.Brightside)を173mの短い直線コースで捉えきり、香港調教馬初の快挙を成し遂げた。
そして、GⅠ・香港カップ(シャティン芝2000m)は欧州10ハロン路線の強豪ルクセンブルク(Luxembourg)の追撃を退け、堂々たる連覇を達成。
香港ゴールドカップ(GⅠ)も不利な大外枠にブチ込まれながらも、最内に潜り込んで直線で抜け出し、ヴォイッジバブル(Voyage Bubble)を抑えての優勝となった。ついでに私のエア馬券、ロマンチックウォリアー単勝10万円も的中。無事に銀行成立、165,000円を引き出すことに成功し、私が銀行と言ったレースは銀行が崩壊するというジンクスをも粉砕してくれた。
ミドルディスタンス路線において、ロマンチックウォリアーは香港は愚か、世界的に見てもトップクラスの能力を有する。
今回もジェームズ・マクドナルド騎手を鞍上に迎えるが、この時点で最早勝利は半分決まっているようなものとさえ言える。
何故か──J.マクドナルドが騎乗したロマンチックウォリアーは、香港で一度たりとも負けたことがない。
オーストラリアでの2戦を含めても、ロマンチックウォリアー&J.マクドナルドのコンビが敗戦を喫したのは、上述のターンブルSの1回だけだ。
このクイーンエリザベスⅡ世カップの後、ロマンチックウォリアーは安田記念(GⅠ)に参戦する予定である。
海外馬陣営の「日本遠征も検討している」は基本的に「行けたら行く」と同じくらい信用に値しない言葉だが、今回は本気度がかなり高いように見える。
ロマンチックウォリアーを管理するC.シャム調教師は今年、既に高松宮記念(GⅠ)にビクターザウィナー(Victor The Winner)を送り込んでおり、その際にも「今回の遠征の経験はロマンチックウォリアーの遠征に必ず生きる。高松宮記念と違い、安田記念では東京競馬場に直接入厩できるので、調整は更に楽になる。我々は必ず6月には日本に戻ってくる」とのコメントを残している。
そして、既に安田記念での鞍上も発表済み。ロマンチックウォリアーの主戦を務めるオーストラリア最強の男・J.マクドナルド騎手が来日することが決定しており、この事実がマクドナルド騎手へのインタビューで判明した辺りからして、マクドナルド騎手には既に安田記念での騎乗依頼が入っていると見て良さそうだ。
4着に負けたターンブルSが稍重であり、それ以外は良馬場でしか走っていないことから、馬場状態の不安こそあるが、能力的には1枚抜けている感はある。
無事にクイーンエリザベスⅡ世カップの3連覇を達成し、是非ロマンチックウォリアーには東京競馬場に来てもらいたい。
安田記念、私はロマンチックウォリアーとJ.マクドナルドに本命の印を打つつもりだ。ワンチャン府中まで観に行くまである。
対抗馬の筆頭は昨年の2着馬プログノーシスになると思うが、彼については他の日本馬もろとも後述するとして、海外馬の中で次に注目したいのはドバイオナー(Dubai Honour)である。
英国の名門、ウィリアム・ハガス厩舎が管理する馬で、我らがトム・マーカンド騎手との再コンビで出走する。
昨年はオーストラリア遠征で覚醒。GⅠ・タンクレッドステークス(ローズヒルガーデンズ芝2000m)とGⅠ・クイーンエリザベスステークス(ロイヤルランドウィック芝2000m)での2連勝を決め、続くクイーンエリザベスⅡ世カップにおいても3着となった。
ヨーロッパに戻ってからのレースでは結果を出せず、今期は一頓挫あってオーストラリア遠征を見送ったが、復帰戦となったケンプトンパーク競馬場でのAW2000mのリステッド競走は順当に勝利。
ここに向けてしっかりと調整をしてきていることが伺える上、先程申し上げた通りトムがポイントだ。
桜花賞を制したステレンボッシュ、皐月賞を勝ったジャスティンミラノがいずれも「前々トム」だったことにより、一般にも前トム系競走馬がガチであることがバレ始めているわけだが、このドバイオナーは前々々トムにして今トムである。
昨年のクイーンエリザベスSが重馬場だったことから、馬場が渋ることもドバイオナーにはプラスとなるのではないかと見る。能力的にも頭まで検討の余地があるだろうが、外目の枠を引いてしまったことがどうか。
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海外馬の3番手には、今年の香港ダービー馬マッシヴソヴリン(Massive Sovereign)を挙げたい。
元々はアイルランド調教馬であり、エイダン・オブライエン厩舎の管理馬だったのが、売却されて香港に移籍してきてからは目覚ましい走りを見せている。
まだ香港では2戦しか走っていないが、いずれもシャティン芝2000mであり、どちらも優勝。香港において無敗を堅持している。
まだ4歳であり、買うにはまだ早いという気もしないでもないが、香港ダービーのパフォーマンスも目を見張るものがあった。ザカリー・パートン騎手の継続騎乗も心強いだろう。
このメンバーを、ロマンチックウォリアーを相手にマッシヴソヴリンがどこまでやれるか、注目したい。
直 線 力 山 ことストレートアロン(Straight Arron)は、ドバイターフ(GⅠ)6着からの参戦。
今シーズンは香港カップの前哨戦、GⅡ・ジョッキークラブカップ(シャティン芝2000m)を優勝しており、同じく2000m戦の香港カップと香港ゴールドカップでは4着に健闘している。
少しずつ着実に力をつけてはいるという印象で、今回から主戦騎手のチャクイウ・ホーが復帰してくるのもプラス材料と見て良いのではないだろうか。
ソードポイント(Sword Point)はジョッキークラブカップ2着馬だが、近走が振るわないため人気はしなさそう。
GⅠでは力不足という気はするが、渋った馬場への適性次第では大穴となり得るか。過去に良馬場以外で走ったことないから分からんけど。
今年に入って力を付けてきたと感じられるのはニンブルニンバス(Nimble Nimbus)。
2月4日にハンデ戦のGⅢ・センテナリーヴァーズ(シャティン芝1800m)を制し、香港ゴールドカップでは3着にまで上がってきた。
1着馬ロマンチックウォリアー、2着馬ヴォイッジバブルからは離されての入線だったため、メンバーレベルがあの時よりも高くなる今回、どこまでやれるか。
2シーズン前の話にはなるが、ハッピーバレー競馬場でYielding(稍重)の経験が2度あり、そのうち1度は勝利していることからして、渋った馬場にも対応できそうな雰囲気はある。
毎度馬体診断のやべー人が激推ししてくるファイブジーパッチ(Five G Patch)は、今シーズンは勝利こそないものの、重賞で2回掲示板に載っている。
過去Good to Yielding(稍重)で2回走り、2着・3着という戦績。ある程度渋っても走れそうで、人気しないようならヒモに入れるのも一興か。
ハッピートゥギャザー(Happy Together)はGⅡ・チェアマンズトロフィー(シャティン芝1600m)からの参戦。
過去には1800mまでしか経験がなく、2000m戦は今回が初めてであると同時に、GⅠも初挑戦である。
今シーズンは1月10日のGⅢ・ジャニュアリーカップ(ハッピーバレー芝1800m)を含め5勝を挙げているが、GⅠの舞台でどこまで戦えるのか、真価を問われるレースとなりそうだ。
日本馬の最有力候補はプログノーシスで、今回の香港チャンピオンズデー全体を通して最もチャンスがある馬はこの馬ではないかと感じさせる。
昨年の札幌記念(GⅡ)の結果からして馬場が渋ることも問題なさそうであり、今年の金鯱賞(GⅡ)では昨年から更に成長しパワーアップした姿を見せた。
追込しかできなかった頃とは一変、位置取りも自在になってきて、レースの組み立てにも自由度が増してきた。いつでもGⅠを取れる馬になったと感じる。
香港カップでは後手に回る競馬になってしまったが、その分このクイーンエリザベスⅡ世カップにかける想いは強いだろう。
昨年は2馬身突き放されたロマンチックウォリアーが相手というのが難しいところだが、一気のGⅠ制覇も十分あり得る。川田将雅騎手の手綱さばきに期待である。
ヒシイグアスもシャティン競馬場への適性が非常に高い1頭で、今回は一昨年の宝塚記念(GⅠ)で彼を2着に導いたダミアン・レーン騎手とのコンビ復活となる。
もう若くなく、残されたチャンスも限られている。万全の態勢で出走してくるのではないだろうか。
昨年の香港カップ(GⅠ)ではロマンチックウォリアー・ルクセンブルクに続く僅差の3着で、展開や馬場適性次第では逆転の目は少なからずあるはずだ。
ヤスナリ・イワタとのコンビ継続で挑むノースブリッジは、コーナー4つの2000mというコース形態自体は合うのではないかという気がする。
カタールのアミールトロフィーでは掛かりっぱなしになってしまい、ボスの手を大いに煩わせたが、距離短縮によりこの馬のベストの距離となるのはプラスと言える。
能力的にどこまで通用するかは分からないが、一昨年のエプソムカップ(GⅢ)は重馬場であったし、馬場が渋って紛れが生まれるのは歓迎だろう。
枠順も内目を引いていることから、天才の一発にかけてみるのも悪くないのではなかろうか。
──と、ここまで長々と書いては見たものの、今回のレースについては当日の馬場状態とその馬場への適性が明暗を分けることになるのではないかと考えられる。
何せ、今週はずっと雨でレース当日までそれが続く見込みだ。当日にも馬場状態は刻一刻と変化し、トラックバイアスも時間によって変わってくるだろう。
よって、有力馬が馬場適性の問題で十分に力を発揮できず、逆に馬場適性のある穴馬が突っ込んできても何の不思議もない。
ハッキリ言って、何が勝ってもおかしくない。
要するに何も分からんズ。
とはいえ、そうした馬場適性の見解も踏まえながら、出走各馬のことを書かせて頂いた次第である。
少しでも皆様の参考になるものとなって、香港チャンピオンズデーをより楽しんで頂くことに繋がれば嬉しく思う。
それでは、最後に川田将雅騎手から一言頂き、本記事を締めくくりたいと思う。
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