【発信者情報開示】AWSがアクセスプロバイダだった場合でも開示命令が認められた事例
1 はじめに
先日、Twitter上の誹謗中傷について、開示請求を進めたところ、アクセスプロバイダにAWS(Amazon Web Service,Inc)が判明しました。
開示命令を出してもらうまでいろいろ大変なことが多かったので、主に、同業者向けに情報提供です。
いろいろ思うところがある案件だったので、思いの丈に綴りたいと思います。
(ところで、最近は弁護士を通さず自分で開示請求をする人を見かけます。時間と余裕があるならばコンテンツプロバイダの開示請求まではいけると思いますが、そこから先は結構大変な場合が多いです。海外法人が出てくると登記を取るのも一苦労ですし、アクセスプロバイダの段階まで行くとプロバイダ側も、より一層、積極的に違法性を争ってくることがあります。途中から弁護士に依頼をするくらいなら、最初から依頼した方がよいことが多いです)
2 どこを相手に裁判するのか
まず、AWSはAWSジャパン合同会社という法人もあり、どこに裁判をすれば良いのかよく分からなかったです。
開示されたIPアドレスをもとにWHOIS検索をしてみると、以下の団体が出てきました。
他方、他の記載内容を見てみると、amazon「aws」とあり、おそらくAWSが相手方になるのかな、、という推測が立ったので、試しにAWSジャパンに開示命令を申し立てました。神田先生の文献を見ても、AWSがプロバイダになることは確かにあるようでしたので、裁判所にもその旨上申し、開示請求を進めてもらうことになりました。
ただし、AWSジャパンからは、米国のAWSが保有しているとの回答が来たため、AWSジャパン宛ての申立ては取り下げ、改めてAWS宛てに申立てをしました。
代理人はいずれも日本の先生が就任され、訳文添付等の必要はありませんでした。また、AWS宛ての開示請求の第1回の期日についても、AWSジャパン宛ての開示請求の期日において事実上決めることになりました。
3 なぜか管轄を争ってくる
一番解せなかったのは、上記のような流れで、日本の裁判所で本件を審理することが当然のように進んでいたにもかかわらず、第1回期日の2日前に答弁書が出された時点で、突然、裁判管轄を争う、と言われたことです。
要するに、AWSは、同社の定める利用規約上、ユーザーの居住国によってサービスを提供する会社が異なっており、日本のユーザーに対しては米国のAWSがサービス提供をしていない(すなわち日本で事業をしていない)から管轄はない、と主張してきたのです。
しかし、その利用規約なるものは日本ユーザー向けに日本語訳を公開していますし、本件で発信者が日本国内にいることは過去の投稿からも明らかでした。また、そんな発信者の情報をAWSジャパンではなくAWSが保有しているのであれば、それは日本ユーザーに関してもAWSは事業をしていると解するのが至極当然なのではないでしょうか。
AWSの担当者の意向なのかもしれませんが、、相手方代理人の意味不明な主張については、私は、裁判期日で強く疑問を投げかけたところです。
4 後になってから中間業者がいると言われた
また、上記に関して、発信者自身の情報を保有していると回答していたはずが、後になって、AWSとは別にアクセスプロバイダがいあるという回答ができました。(AWSである以上そういう可能性は認識していましたが、もっと早く言ってくれれば提供命令を申し立てる等して対応できたのに、、この点でも対応が後手に回ってしまいました。)
その後、提供命令を申し立てて、情報の開示を受けても、開示された情報に一致する法人は存在しないようであり、現在、どこの中間業者であるか、調査をしているところです。
※提供命令は迅速性を図る趣旨から、相手方において正確な調査をする義務までは求められません(それでも、電話番号やメールアドレスは知っているとのことでしたので、すぐ調べれば分かるだろ、、とツッコミを入れたくなるところはありました)
今も発信者の特定作業は続いていますが、AWSについてはかなり振り回されたという認識なので、他の方が同じような思いをしないようにと思い、本投稿をさせていただきます。
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