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専門性には経営者以上の責任がある

法律は、最低限の社会性を担保しているものである。
仮に法律が正しくとも執行する側が間違った判断をおこない法律を適用することがある。
ずいぶん前の話だが「年金型」生命保険の二重課税問題で、最高裁が二重課税であると判決を下したことで、還付されるようになった。
課税当局は、適法だと判断して課税していたが、法律違反だと判断された。
長崎県の税理士だったと思うが、国と闘い勝訴した。

私が対応した中では、未払い残業代の問題があった。
こちらも1年間かけて適法性の有無を争って是正勧告を取り下げてもらった。
社会性や法律の問題は、ルールを最低限遵守したうえで争えることである。
企業における日常業務の中で適法に業務を遂行していきながら、当然法律の
規定以上の社会性を踏まえて、会社における日常業務の改善を、人事部門の責任者は主体的に実行する。
弁護士に頼みこんでも、前提となる、特に適法性に基づく事業運営がなされていなければ、はじめから争う前提はなく弁護士は引き受けない。

当然のことだが、人事部門の責任者として敗れれば退職する覚悟が必要だ。
理由は、経営者が適法性と社会性を踏まえた事業遂行をおこなうとしているのに、その責任をまっとうできなかったらその責任は、本来、人事部門の私にあり退職は必然だと考えているからだ。
このように業務遂行においては、確固たる姿勢で望むからこそ、よい企業づくりができると信ずる。

日常業務の中で経営者と真摯な話し合いをおこない業務改善をおこなっており、経営者が納得したうえで、その改革ができていなければ、その責任は人事部門の責任者である自分が負うべきものだろう。
専門性には、それに付随する責任が常に伴う。
経営者が個別専門的な事象についてすべて把握、理解できるわけがない。

社員10数名程度の会社であれば別だが。

ちなみに社員総数約600名のうち事務系従業員数約70名の2年間の未払い賃金の試算総額は、労働基準監督官が指摘する内容が正しいと仮定すれば、その会社の賃金レベルで約3億円になった。
いかに日常業務、いわゆる実務を適法にしっかりとやっておくかが問われる理由である。

また、違法な就業体制によって支払われる金銭的な損失だけでなく、企業の社会的評価の低下、さらに従業がもつであろう企業に対するネガティブな労働意識など金銭的損失に加えて長く尾を引くことになり、企業の成長を引き下げていく要因となるだろう。

企業活動には、社会的な責任が伴うが私のような人間にはむずかしいものだった。
そこで自分で学んだなかに、ジョンソン&ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」という経営理念があった。
この経営理念は、1943年創業家出身の第三代社長ロバート・ウッド・ジョンソンによって制定さているが、読んでいただければ一目瞭然、企業の在るべき姿が見事に書かれている。
良いものは時代を超えて生き抜く見本である。

経営管理の原理原則には、時代という要素は関係がないと考える私にとって、この内容はこれから先も永遠に生き続けると信ずる経営哲学だ。
ビジネスは時代を認識する感性が要求されるが、経営管理の原理原則は、愚直なまでの経営理念の実行だけが必要とされる。
その意味でもどのような企業に在籍していようが「我が信条」は、経営管理の根本原理として学ぶべきものである。
優れた内容はもとより、もっとも重要なことは、社会における企業の行動原理について、企業がとるべき優先順位と行動手順が具体的かつ的確に記されていることだ。

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