【データから見る】ヤクルト・小澤怜史のストレートの異質性(2023年)

本記事の結論


・小澤怜史は、2023年シーズンにおいて、90イニング以上を投げた全12球団56人の投手のうち、ストレートのピッチバリューは上から3番目
・平均球速140.4キロながら、12球団トップクラスのストレートの質を誇る

ストレートのピッチバリュー(wFA/C)上位8投手

当記事で取り上げるのは、wFA/C(Fastball runs above average per 100 pitches)という指標です。ストレート100球当たり、どれだけ失点を増減させたかを示した指標で、プラスが大きくなればストレートの結果が良かったことを表します。算出方法は割愛しますが、詳細は下記をご覧ください。https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_index_detail.aspx?gid=10197

90イニング以上に登板した投手56人のうち、wFA/Cにおける上位8投手と、各投手のストレートの平均球速、投球割合、被打率、Zone%(ストライク割合)、Whiff%(スイング空振り率)をまとめたものが下記になります。

参考:※1、2

山本由伸が傑出した数字を叩き出しています。そして意外にも、ロッテ・佐々木朗希の名前が上位に挙がりませんでした。

各投手のストレート分析

まず、山本由伸、才木浩人、平良海馬、山下舜平大の4投手は平均球速150キロ前後を記録。他にも要因はあると思いますが、球速面など球威により、高い数値を残していることが窺えます。

一方、床田寛樹、青柳晃洋の2投手は全投球に占めるストレートの投球割合が40%を割りました。さらに両投手はストレートと近い球速帯のツーシームをストレートと同等の割合で投げ、共にツーシームのピッチバリューはマイナスの数値になっています。(床田:ツーシーム被打率.278、青柳:ツーシーム被打率.338)

ストレートの空振り率もそこまで高くないことから、ツーシームによってストレートが生かされたのではないかという仮説が立ちます。

小澤怜史のストレート

半分近い投球割合を占め、かつ平均球速140キロ前半ながら、上位に名を連ねている小澤怜史と岸孝之のストレートの凄さが分かります。
岸は高回転数でノビのあるストレートを投げることで有名で、2桁勝利8回の経験を持つ球界を代表する投手の1人です。そんな岸のストレートよりも、多く空振りを奪うなど、高数値を記録したのが小澤のストレートです。

上記の映像のように、小澤のストレートは、シュート回転しながら、浮かび上がるような軌道を描きます。いわゆるサイドスロー特有のストレートです。

ここで1つの疑問が生じます。サイドスロー投手が投げるストレートは球速がなくても、その特異性で打者を圧倒できるのではないか?

2022年シーズンの小澤のwFA/Cは1.69と2023年以上の数字を記録しています。しかしながら、同じサイドスローの青柳は2022年まで3年連続でwFA/Cがマイナス。その代わりにツーシームではプラスを記録しており、2023年シーズンと反対の結果になっています。2023年の不調も、ここに要因が隠れていそうです。

サンプルサイズは青柳のみになりますが、必ずしもサイドスロー投手特有のストレートが有効というわけはなく、小澤の投げるストレートが異質であることが分かります。

2024年シーズンの起用法はまだ分かりませんが、傑出したストレートを持っており、他の球種を磨けば、2桁勝利も期待できるのではないでしょうか。

参考サイト

(1)  プロ野球ヌルデータ置き場

(2)  1.02 Essence of Baseball


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?