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コンサート

 私はコンサートホールの、ふかふかとした座席に腰掛けていた。ステージ向かって右側、前から二列目、通路からは三番目の席だった。

 前後左右に座っている人はいなかった。座席は市松模様のように交互に配置されていた。

 ところが、アナウンスによると演出の都合で座席を変える必要があるという。私のいるブロックは、ふたつ右隣の席、つまり通路から五番目の席へ、一列に並んで座るように指示された。

 私は左側に座る女性と顔を見合わせて、迷いながら「どうぞ」と告げた。今いる列の指定席を彼女に譲って、他の列に行く事にしたのだ。

 その女性の後ろの座席に座ろうとすると、強引に押しのけられてしまって、私は足取り重く座席の後方へ歩いていくことになった。

 座席は一つも空いていなかった。遂に一番うしろまで来てしまって、床に腰を下ろした。同じような人が何人もいた。

 客席の照明が落ちて、幕が上がる。待ち焦がれていた公演が始まってもただただ退屈で、途中で退室することにした。

 ステップワゴンの後部座席に乗り込んで、シートベルトをしめる。右側には何やら怒った様子の女性が座っていた。

「途中で帰るなんて」

 私が途中退室したことで、その女性も巻き添えになったようだ。よくよく見ると、先ほど座席を譲った人だった。

 機嫌をとる方法を考えているうちに、夢が終わった。

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