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【おすすめ本④】フィリップ・コトラー他「Marketing 6.0: The Future Is Immersive」

はじめまして。NRIデジタルの齋藤です。普段の業務では、データサイエンティストとして顧客のシステム企画段階におけるデータ分析に携わっています。
ここでは、最近特に関心があるマーケティング領域から、フィリップ・コトラー氏とヘルマワン・カルタジャヤ氏、イワン・セティアワン氏の三氏による最新書籍「Marketing 6.0 The Future is Immersive」(2023)をご紹介したいと思います。(※以下、書籍内の文言の訳は全て筆者によるものです。)


はじめに

マーケティングのフレームワークとして広く知られているものに、PEST分析やSTP理論があります。そして、これらのフレームワークを提唱したマーケティング分野の権威であり、「現代マーケティングの父」と称されるのがノースウェスタン大学教授のフィリップ・コトラー氏です。

書籍紹介「Marketing 6.0: The Future Is Immersive」

コトラー氏らは、時代の変遷とともにその時々のマーケティングにおけるキーワードを提唱してきました。彼らは、製品、顧客、人間社会、モバイル、デジタルと移り変わってきたマーケティングの中核をなす概念が、「没入感」(Immersive)へと歩みを進めようとしていると述べています。
以下に、本書で挙げられている概念やキーワードから、特徴的なものを、書籍内で挙げられている事例とともに解説します。

  • フィジタル・ネイティブ(physital native)
    「フィジタル(physital)」というのは、読んで字の如く、フィジカルとデジタルの融合を表現した造語です。そして、生まれた時からデジタルデバイスに囲まれ、デジタルデバイスを所与のものとして育ってきたZ世代やアルファ世代をフィジタル・ネイティブ(physital native) と呼び、彼ら・彼女らの特性として、オンラインとオフラインのシームレスな切り替えや、デジタル・AI・バーチャル空間への自然な適応が挙げられています。これらを踏まえることがこれからのマーケティングの鍵になると考えられます。

  • イマーシブ(immersive)
    「没入感(があること)」を表し、これからのマーケティングの中心となるとして取り上げられている本書の中心的概念です。本書では、完全な没入感を生み出すための構成要素として、次の五つが挙げられています。

     1. multisensory : 五感を刺激する
     2. interactive : 双方向のコミュニケーションがある
     3. participative : 積極的な参加を必要とする
     4. frictionless : 気が散る要素を最小限に抑える
     5. storytelling : 一貫した物語を構築する

    また、本書で取り上げられたイマーシブな体験の事例として、ポケモンGO、イケア、ロレアルのARを活用した取り組みや、ボルボやBMWのVRを用いた試乗体験、さらにはApple Storeでの購買体験があります。
    また、これらの事例以外でも、最近このキーワードをその名に冠したテーマパーク「イマーシブフォート東京」がお台場に開業したことなどからも、広く世界のマーケティング業界におけるトレンドになっていることが窺えるかと思います。

  • メタ・マーケティング(meta marketing)
    コトラー氏らは、デジタル化の進展に伴い、マーケティングにおけるチャネル戦略も進化して来たと述べています。オフラインに加えてオンラインでの顧客接点を持つマルチチャネル戦略に始まり、オフラインとオンラインのチャネルがシームレスに繋がるオムニチャネル戦略の発展が語られ、その上で本書で中心的に取り上げられているのが、消費者がオフラインとオンラインの境界を意識しなくなるようなマーケティングのアプローチ、メタ・マーケティングです。メタ・マーケティングの類型として、①multi sensory marketing、②spatial marketing、③metaverse marketing の3つが挙げられています。

本書から得た学び

コトラー氏らはこの書籍を通して、マーケティングにおける最新のトレンドを、数多くの事例を交えて明解に示してくれています。実際、この本で挙げられている事例以外にも、身のまわりに当てはまるケースがたくさんあり、まさに時代の流れを捉えた書籍と言えるのではないかと思います。

他方、より重要な点として、「時代が変わろうとも、マーケティングにおいて実践するべきことは一貫して変わらない」ということがあるのではないかと考えました。

この書籍では、まず環境の変化(Z世代・アルファ世代といったフィジタル・ネイティブの出現や、デジタルテクノロジーの進歩)を分析し、そこから各産業に共通するマーケティングのトレンド(=イマーシブ)へと論が展開されています。 すなわち、市場や事業環境の変化を迅速かつ的確に捉え、それに対して正しく反応することが肝要だということでしょう。

その点では、この書籍ではあまり触れられていなかった大きな時代の変化である「汎用生成AIの出現」は、今私たちがもっとも理解し、反応すべきものであると考えています。そして、NRIデジタルでは、変化に正しく反応すべく、生成AIの理解と活用を強力に推進しています。(下記リンク先もぜひご覧ください。)

私自身もこれからの業務において、NRIデジタルのバリューである「深い洞察と先見性」をより一層磨き、「圧倒的なスピード感」を持って変化に対応していきたいと思います。

(執筆:NRIデジタル DXエンジニアリング1 齋藤達也)

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