短編小説『共に奏でよ沈黙を』
右へ、左へ。
揺れる鉄の箱の中で、私は今日もじっと耐えている。
平日のほとんどをこの懸垂式モノレールに乗って朝夕移動するようになってひと月が経つ。この春私は大学に進学した。家がある始発駅と学校の最寄駅との距離はお気に入りの歌を五曲も聴けば着く程なのだが、何べん乗っても足がすくむ。目が回る。キモチガワルイ…こんな事ならもっと、受験勉強、頑張れば良かった。第一志望の大学なら地に足のついた在来線に乗るだけで済んだのだから。ぐるぐると渦を巻く頭の中に、車内アナウンスの澄んだ声が