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V "For Us" 誰にも見つからないところへ ~日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.107

君が心変わりしてくれるなら
僕は 全てを投げ打つだろう
僕らのために

For Us


君は僕の家から去って行った
知り合えて良かったと思う反面、
僕らが最善を尽くしたことに
胸が 痛む

僕は今カリフォルニアにいる
まだ 君を待っているんだよ
君が心変わりしてくれるなら
僕は 全てを投げ打つだろう
僕らのために

Ooooh
君と一緒にいられたらいいのに
Ooooh
君と一緒にいられたらいいのに

手遅れになる前に来て
僕が行く前に言うことがあるよ
もうこれ以上待てない
僕らは
誰にも見つからない所に行ける
君に それを知らせなきゃ

Ooooh
君と一緒にいられたらいいのに
(君と一緒にいられたらいいのに)
Ooooh
君と一緒にいられたらいいのに
(君と一緒にいられたらいいのに)

君は僕の家から去って行った
知り合えて良かったと思う反面、
僕らが最善を尽くしたことに
胸が 痛む

僕は今カリフォルニアにいる
まだ 君を待っているんだよ
君が心変わりしてくれるなら
僕は 全てを投げ打つだろう
僕らのために



韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/6212529

『For Us』
作曲:Monro , Freekind.
作詞:Freekind.
編曲:Monro


*******


今回は、2023年9月にリリースされたBTSのVによる1stソロアルバム「Layover」収録曲 "For Us" を意訳・考察していきます。

ボーナス・トラックを除く新録5曲のアウトロ的立場であるこの "For Us" 。Spotifyの企画で本人が、あらゆる手を尽くしても届かないもどかしい気持ちを比喩的に込めた作品であるとこの楽曲を解説しています。
サウンドを「ヴィンテージ」であるとも表現しており、彼が何にこだわってこのアルバムを制作したのか、その要点が垣間見えます。

のっけからボイスチェンジャーで変換されたちょっと異様な機械音声で始まる風変わりな展開に驚きますが、奥で流れるメロウなピアノラインがその後訪れる血の通ったテテの歌声との橋渡しをしています。

他にもカセットテープデッキのボタンの音が入ったりと、細かい演出が入っているのはなぜなのかなとずっと考えていたのですが、ひとつ思いついたのでこっそり書きますと(もうどこかで既出かも)、

"Love Me Again" のMV衣装を観た人から「宇宙人みたい」という意見をもらったことを若干腑に落ちていない様子で明かしていましたが、ずばり「宇宙から来た主人公、地球の子と恋に落ちるも上手くいかず星に帰る」という裏設定…があったりするのではと(小声)。
(現実的な線で行くと、ふたりは国境を越えたカップルで、言葉の壁があったり、故国にどうしても帰らなくてはならない理由で離れ離れにならざるを得ない…等)

具体的な地名が何故登場するのかも不思議で調べてみると、カリフォルニアには米宇宙軍基地があり、かつてスペースシャトルもそこから打ち上げられていたといいます(国際空港もある)。

宇宙(空)に飛ぶためにカリフォルニアまで来て星(故国)に帰る準備をしているけれど、時間ギリギリまで「君」の心変わりを信じて待っている。伝えきれなかったメッセージをテープに収めようとするけれどうまくいかない…。

そんなファンタジーをダブらせながら、誰にでも起こり得る身近な「すれ違ってしまったふたりの物語」のエンディングとしてこのアウトロを聴いてみるのもまた一つの愉しみ方かもしれません。

それでは、肝心の歌詞の方を詳しく見ていきたいと思います。




You went from my home to ※1
(君は僕の家から○○に行った)
It was nice to know you
(君に出会えてよかった)
And it breaks my heart That we gave it our best shot ※2
(そして僕らが最善を尽くしたことに胸が痛む)

※引用文につけた和訳は直訳
(意味を通すための改行操作あり)
https://music.bugs.co.kr/track/6212529

※1 go from A to B…AからBに行く
→歌詞中「to」の後に対象の場所がないのは、「僕」は「君」がどこに行ったのか把握できていないから?
※2 give it one's best shot…最善を尽くす(参考

別れを迎え、自分の手が届かない所に行ってしまった「君」。
この出会いを後悔はしていないけれど、すれ違いながらもわかり合おうと全力を尽くした記憶が今となっては心苦しい。


Now I'm in California
(今 僕はカリフォルニアにいる)
I'm still waiting for ya ※3
(僕はまだ君を待っている)
Will you change your mind
(心変わりをしてくれないか)
I would give it all up
(僕は全てを投げ出すだろう)
For us
(僕らのために)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212529

※3 ya=you(参考

ここで冒頭でお話ししたカリフォルニアが登場します。
「君」が戻ってきてくれるならそれと引き換えに、自分が置かれている環境、立場、持っているもの全てを投げ打ってもいい、と。このようなやりとりはいつの時代にも、どこの国でもありそうです。
どうにかしてよりを戻したいと思い詰める「僕」の姿も、そこまで言ってくれる人にならと思い直す「君」の姿も目に浮かびます。


Come before it's too late
(手遅れになる前に来て)
I got things to say Before I go
(僕が行く前に言うことがある)
There's no time to wait
(待つ時間はない)
We can hide away ※4
(僕らは隠れることができる)
Need to let you know that
(君にそれを知らせる必要がある)

※引用文につけた和訳は直訳
(意味を通すための改行操作あり)
https://music.bugs.co.kr/track/6212529

※4 hide away…人から見つからない所に行くこと(参考

「We can hide away」
この部分を初めて読んだ時、「許されざる恋」といった背徳感のあるワードが頭をよぎり、ちょっと怯んだ私がいました…スターとして恋ひとつままならないであろう現実●●の「彼」とリンクさせ過ぎてしまいそうになってしまいました。

そんな時に主人公・宇宙人説をふと思いついて、そうかなる程、と。
移り気しやすい「君」が自分以外の他の誰かの所にいかないように、誰にも邪魔されない外の世界(宇宙)に行くことができれば自分たちは幸せになれるのだ、それを「君」に伝える必要がある…そんなシナリオが思い浮かびました。

そしてこのひと言です。

Ooooh
I wish I could stay with you ※5
(君と一緒にいることができたらいいのに)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212529

※5 I wish I could~…~できたらいいのに(実際はできない)(参考
もう「君」が自分の元に戻って来ることはないとわかっていながら、未だ一緒にいられることをこんなにも望んでいる「僕」。

そしてきっとこの後「僕」は、後ろ髪を引かれたまま宇宙(空)にたったひとりで旅立っていくのです。




初のソロ・アルバムを制作するにあたり「自らの本来の色を見せるために努力した」と語ったテテ。プロデューシングこそその道のプロであるミン・ヒジン氏に一任したものの、アルバム「Layover」はテテが普段から「自分に何ができるのか、何がしたいのか」について考え続け、試行し続けてきた結果に他なりません。

アルバムに自作曲がひとつもないと肩を落とした方もいたようですが、ひとつも残念なことは無いと私は言い切りたい。このアルバムには彼が持つ表現力が余すところなく注がれています。
歌唱力、パフォーマンススキル、そして彼を語るのに忘れてはならない演技力
ヴォーカリストに演技力が必要か否かについては意見は分かれるかもしれませんが、声だけ(楽曲)でも、逆に表情だけ(MV)でも演技(感情を再現すること)ができる力を彼は十二分に持ち合わせていると思います。
自作詞でもない、自身の経験でもないストーリーを読解し、自分に引き寄せ、見事に表現しきっている。彼にしか作れないものがそこに在る。

表現者・Vの創作のルーツなどをまとめた記事がWeverse Magazineで公開されています。必読案件。↓

中継地「Layover」にたどり着き、いずれ再び旅支度を始める彼の次の行き先が今から気になるところです。Good Luck。



今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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