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4/29 雨が降るから

一人で歩くのも好きだが、友人と街歩きをすると新しい発見があったりする。一人ではいかないような観光向けの店やいつもは人混みで避けている通りなどを歩くと、普段見ていた道とは違う色が見えてくる。自分のペースと友人のペースが混ざって独特のリズムを生み出すところも面白い。南京から来た友人は今日旅立つので、昨日が1日観光できる最後の日となった。彼女はこの日横浜に行きたいというので、この日は電車に乗ってみなとみらいにいった。「みなとみらいってどういう意味?」と聞かれて「The Future of harbourだよ」と答えた時、なんて革新的な名前なんだろうと身震いした。こういう仕事をしてくれるコピーライターやネームプランナー(そんな肩書きがあるかどうかは分からないが)は、視野が今ではなく未来に根付いている。根が足のようになって歩きだすモンステラのよう。私は中華街もみなとみらいも雨の日に行くことが多い。この日は曇天という名前にふさわしい灰色の空で、祝日なこともあり大変な人だかりができていた。昭和の日とは、昭和天皇の誕生日だった日が祝日になったそうだ。昔はみどりの日と呼ばれていたが、平成天皇の誕生日は祝日にならないのだろうか、とぼんやり考えた。この日は終日頭が重くぼんやりとしたまま人混みをあるいた。みなとみらいにあるコスモワールドは、高校生の時初めて付き合った人と散歩しに来た。その人は東白楽に住んでいて、横浜でデートするのが好きだった。中華街や横浜はもちろん、なぜか慶應大学日吉キャンパスで頻繁に散歩することをプランされた。ディズニーシーでは世界史の一問一答問題集を持って列にならびながらクイズを出し続けてきたり、自分のセトリをカラオケに持っていたり、かなり変わっている人だったが心は澄んでいる羊のようだった。彼は自分の大学がいかに素晴らしい場所かを仕切りに説明したがり、フランスオペラの講義の話をピロートークにするのが好きだった。おそらく大学ではあまり友達のいないタイプの人だったのだが、決して悪い奴ではないが独特の世界観すぎて着いていけなくなるのだろう。私が突然歌い出したり踊り出したりしてもニコニコと眺めてくれる気前の良いところも気に入っていた。みなとみらいに来るとたまにその人のことを思い出す。最終的にはフランスの大学院に留学してそれっきりになったが、今はどうしているのだろうか。フェイスブックで名前を検索しても一度も出てきたことがないのは、元気にしている知らせなのだろうか。
通り過ぎる雨と昔の恋人は等しく、
吸い込まれた水滴は2度と戻らない
春の雨にはみなとみらいが似合う

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