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4/30 雄弁な白桃

4月最後の日が30日であることにちょっとしたおかしさを感じる。だって4/1はエイプリルフールだし、全てが虚構に満ちたエンタメ性を携えて始まりそうかと思えば新月の日に皆既日蝕がアメリカであって、まだ何をしようか考えながら過ごしているうちに「はい、30日ですよ」とひょっこり顔を出してくるなんてあまりにも都合が良すぎる。こんな風にしてどんどん時間が過ぎていくから、やりたいと思ったことはその時にやらないと本当にまずい。だってもう4月。まだ今年になったばかりなのに。時間が過ぎるのが早いのは、新しいことに挑戦していない印だと言われたことがある。新しいことを始めると覚えたり実際に行動するために時間を使うから、時間の経過は早く感じなくなるそうだ。でも新しいことでもそうでなくても楽しいことをしていたら時間はあっという間にすぎるし、好きでもなんでもないことだと20分が4時間に化けたりするからよく分からない。相対性理論ってそういうことを言っている?

庭に生きる友人がたくさんの種を分けてくれた。私はプランターを用意しなければならないが、もし順調に育ってくれたらさまざまなハーブがいつも新鮮な状態で食べられるようになる。それはとても理想的だし、もう市場で枯れてしまう危険のあるハーブたちに手を出さなくて済む。畑と呼べるほどの大きさでなくても、ハーブさえあれば最初の一歩をふみだしたと言える。ハーブティのことを考えると早くタネを撒かねばならないという気持ちになる。タネは土に撒かれただけで芽がでるのですごい。人間がそのためにできることもそれはそれであるけれど、基本的にはタネの持つ力を信じて撒くことしかできない。撒かれたタネも土を選ぶことはできないから、なるべく合う場所に撒かれることを信じてただ鎮座するしかない。耕作は土とタネと人との信頼関係によって成り立っている。

ニュージーランドにいた頃は黒く賢い猫にとても世話になった。およそ12年の歳月を経たその人はとても忍耐強く、慈愛と優しさに満ちた雄弁な雄猫だった。早く日本に帰りたい気持ちと、その人を日本に連れていくかどうかでとても悩んだ。飛行機に乗ると言うことは16時間以上の苦痛を与えることで、彼は私の席の隣に座ることはできないし、年齢を考えると大きな環境の変化を与えるのは良くない選択肢な気がした。それでも私のエゴで一緒に行きたいという気持ちの方が大きかったが、最終的には猫と暮らすことに長けた人に預かってもらい世話になることになった。最近その場所に暮らす彼の写真をもらったが、他の猫と仲睦まじく庭に座る姿が本当にいじらしく、しかもよく肥えていたのでなおさら安心した。どこにいくかよりも誰といるかが大切なことを改めて彼は教えてくれた。会えないのは寂しいけれど、彼が幸せに暮らせていることに感謝する気持ちの方が大きい。お世話になった大切な人が、幸せに暮らしてくれているだけで、辛いことも少しずつマシになる。

とおくはなれても そばにいるのは 暖かな寝息と白いネッカーチーフ


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