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4/25 猛龍の竹

信じられないくらい太陽が強さを表して、満月から一夜経ただけで南の島に来たような日差しだった。持っている服と履きたい靴と手元にある肉体がすべてがちぐはぐなまま日が暮れていく。足元にある土と草だけが現実と自分を融解させ得る可能性をもったまま、精神性だけがどこまでも浮遊して一本の糸を伝うと辛うじて回遊できそうな。この季節だけが本物であるように、この季節だけが延々と続くことを祈りながら羊毛を着た仲間たちに変わらぬ愛を届ける。日が昇ると目が覚めるのは、今の鼓動が地球の自転とちょうど重なっているから。目覚めにさめざめと心の中で泣いたりせずに済むように水から澄み渡るように無事に渡鳥としての役目を終えられるように、日が沈むまで行けるところまではどうにか進む。夕暮れの一瞬だけ現れるあの色は再現性のない色だから一瞬でも目に焼き付けるのが吉。月は本当は空に浮かんでいるのではなく、湖に浮かぶのが反射して見えるだけ。月の本当の居場所は湖の真ん中あたりの浮草の下。天使が昼寝するので長居は禁物。

里帰りにいく滝の下には水色の絨毯が敷き詰められているからそこで気がついたら千年が過ぎていることもままある。苔むした岩の枕で見た夢の瞳に映るのは頂で一休みする小狐の涙。そこでまた百物語を始めてしまったのでまだまだうちには帰れそうもない。蝋燭を消したらやっと永遠の帳が落ちたので、今度こそ本当におやすみなさい。次に会うのはきっとこの星ではないから、そこでも砂は浜を象るかどうか見せてみてくださいね。


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