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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(アヤカシの世界へ③)

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以下本文


 昨日は崎本君とたくさん話した。一緒に帰ったし、チャットでもメッセージをくれた。渚に報告したかったのに、渚は電話には出なかった。
 朝、学校に行ったらいつも1番に来ているはずの渚が来ていなかった。変だなと思ったけど、また寝坊でもしたのだろうか。
 しかしその次の日も、渚は学校を休んだ。今まで渚が何日も学校を休むことなんて無かった。渚のお母さんが、行方不明になった時を除いて。

「高田さん。ちょっといい?」
「はい」
「あのね、宮路さん今日もお休みでしょう?」
「そうですね」
「何か聞いてない?」
「え? いえ、特に何も……。渚は風邪で休んでるんですよね?」
「そうなんだけど……。珍しいなと思って」
「先生。渚だって人間ですよ。風邪くらい引きますよ」
「そう……よね。きっと普段頑張ってる疲れが出たのね。あ、そうだこれ。夏休み中の進路相談の手紙、宮路さんの家に届けてくれない? 締め切りもあるし」
「……わかりました」

 渚のお母さんが居なくなってすぐの頃は、こうして何度もプリントを届けに行った。最初の頃は部屋からも出て来てくれなくて、よく渚のお父さんと話をした。
 段々と外に出て来られるようになって、学校に復帰する頃にはなんだか渚の雰囲気は変わっていた。近寄りがたいというか、口数が減ったというか、大人っぽくなった。
 ちょっと触ったらパキッと折れてしまう氷の板のようなその雰囲気に、私が守らなくちゃ、私が渚を助けなくちゃと体が震える思いだった。
 可哀想な渚。私にも連絡できないほどの風邪なんて、初めてのことだ。

「で、なんで崎本もついてくるわけ?」
「いいじゃんか別に」
「何? なんかやましいことでもあるわけ?」
「そんなんじゃない、けど……。なんか、俺が踏切の話をした後に何日も休んでるから、なんかヤバかったかなって……」
「はいはい。渚が休むなんて珍しいですもんねぇ。小学生以来かな」

 なぜか家が反対方向の崎本君も一緒に渚の家に向かう。他愛も無い話をしながら、私の心臓はバクバクと脈打っていた。手に持つプリントたちに、私の汗が滲んでいく。


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