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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(アヤカシの世界へ④)

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以下本文


 狸ジジイが帰って来ない。隠しているのか隠していないのかわからないような扉の奥にある部屋の中は、ジジイが作った物や各地から集めた訳アリ品や、ジジイの趣味の骨董品なんかが置いてある。俺もガキの頃はよく見せてもらった。
 そんなジジイの元で修行したお陰で、「物を見分ける力」はすぐについた。四辻御堂を親父から継いだ時、「これで澪さんの役に立てる。恩返しができる」と思ったのに、澪さんは俺の前から居なくなってしまった。
 それからは家業の「訳アリ品」集めの傍ら、ずっと澪さんを探し続けた。多分、澪さんが「迷いの結界」を張っていたんだろう。見つけようと探せば探す程、目当ての物は見つからないという特殊な結界だ。使えるのはごくごく限られた人間とアヤカシだし、そもそもその結界を知っている者すら今の人間界とアヤカシ界では珍しい、太古の結界術だ。
 澪さんは優秀だったから、どこかで知ったその術を試しに使って、見事発動させられたというところだろう。
 そうこうしている間に狐共が襲ってきて、また澪さんに助けられてしまった。このままじゃあ、恩を返すどころか、澪さんが・・・・・・。
 それにしても遅くないか? あのジジイは昔から女に甘いというかデレデレしいというかなんというか、とにかく変なことを吹き込まれる前に連れ戻した方がいいかもしれない。これからが正念場だってのに、あの風来人の言うことであいつの気持ちが変わったら、澪さんを助けるどころじゃなくなっちまう。
 掛け軸の裏の扉を勢い良く開け、ズンズンと通い慣れた廊下を歩く。ここを歩くのは何年振りだろうか。
 「秘密の部屋」に着くと、案の定ジジイがあいつの肩に手を置いて耳に何か囁いている。

「こんの狸ジジイ!」
「おや、うるさいのが来た」

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