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【小説】四つ星男子のセンセーション!(5)

あらすじ

「お前は、星が見つけた希望の子だ」
腐れ縁四人が、周りの大人たちに言われ続けた言葉だ。
生まれながらに星の加護を受け、魔法を扱うことのできる四人は、国中の憧れである『魔法騎士』のトップで、『四英星』と呼ばれている。

六花の星、コルンバ。
黍嵐の星、アリエス。
陽炎の星、アルフェラッカ。
芽吹の星、レオ。

そんな四人が最期に望んだのは、四人の軌跡を形にすることだった。
しかし、その願い虚しく四人は戦死。
四人は転生し、男子高校生デビューを果たす。
再び集った四つ星は、今度こそ望みを叶えるため、高校生活を謳歌する――!

前回の話

登場人物紹介

レオ

四英星が一人。冷静な主人公。冷たい人に思えるが、誰よりも仲間思い。左に流した前髪が特徴的な黒髪。

コルンバ

四英星リーダー。物腰柔らかで、優しい性格。どんな武器も使いこなせる強さと知恵を兼ね備えている。少し長めの銀髪。

アルフェラッカ

四英星のムードメーカー。お調子者で、少し抜けているが、仲間を持ち前の明るさで支える存在。
毛先を遊ばせた赤髪。

アリエス

四英星のシリアス担当。気高さを感じるような孤高の存在だが、本当は優しい。右目を長い前髪で隠し、後ろで縛った黒髪。

4話

「……始まったな」

 誰ともなく呟かれた言葉に、俺たちは頷くことしかできなかった。
 キィン、と金属と金属がぶつかる音。勇士たちの雄叫び。燃え盛る火柱。
 今まで経験したことの無い程、殺伐としたクレセント王国北の大地。
 丘の上から戦場を見ていた俺たち四英星と部下の魔法騎士たちは、誰もがその物々しい雰囲気に圧倒されていた。

「いよいよ、マズいことになってきちゃったねェ」
「やめてよね。アルフェラッカがふざけないなんて、もっとマズい予感がするよ」

 全くだ、と、コルンバの言葉に軽く頷く。
 しかしこの間にも、野原は焼け、煙が辺りに立ち込めていく。
 もし、ここで食い止められなかったら、あいつらは王都を――。

「フン。らしくないぞ、キサマら」

 一歩、前に出たのは、一番小柄なアリエスだった。
 戦場から少しだけ目を離し、一人ひとりに問いかける。

「思い出せ。我等は、なんの為に生きてきた?」

 そして、戦場に目を戻す。アリエスの問いかけは、全員の気持ちを一致させた。
 コルンバは「その通りだね」と呟き、外套の裾を靡かせながら、先頭に立つ。

「魔法騎士諸君! 私たちは、国のため、民を護るため、そして――私たちの為に立ち上がる! 夜空の星々の意思を今、受け継ごう!」

 おおぉッ、と雄叫びが上がる。俺たち四人も、目線を交差させ、頷き合う。

「行くぞッ!」
了解イエッサー!』

 これが合図だ。俺は、いつものように、地に手を触れる。

「芽吹け」

 次の瞬間、地面から巨大な蔓が伸び、足場を形作った。
 これが俺の授かった、芽吹の星の能力そのもの。
 そうして出来た足場から、四英星と、率いる魔法騎士たちが戦場へ向かい、駆け出していく。その途中、アルフェラッカが「レオ!」と話しかけてきた。

「俺と組もうぜ!」
「構わないが、足を引っ張たら、今度の宴会はお前が払えよ」
「モウマンタイッ!」

 トンっと地面を蹴り、飛び上がったアルフェラッカに、蔓で足場を作っていく。
 足場を上手く使いながら、駆け抜けていくアルフェラッカ。敵地に辿り着くと、懐から機関銃を取り出した。

「ぶっ放すよォ! 『業火弾乱』ッ!」

 陽炎かげろうの星の能力は、炎を扱う力だ。あれは特注の機関銃で、彼があれを握ると、炎の雨が降りそそぐ。
 そして、敵勢が怯んだところを――。

「草薙一閃」

 俺の振るった剣が、炎をも巻き込んで、敵をなぎ倒す。
 ――悪いな、平凡を取り戻すためなんだ。

「なぁんにもならないのにね」
「……そうだな」

 いつの間にか傍にいたアルフェラッカの呟きに頷いた。その「なぁんにもならない」戦いは、これでは終わらない。

「残虐魔術師めッ、覚悟ーッ!」

 後方からの雄叫び。耳を劈くように響くそれに思わずため息を吐いた。剣を振り下ろしているのか、槍で突き刺そうとしているのか。どちらにせよ、避ける必要もない。

「な、なんだ!? ッ、うわあッ!?」

 轟音と共に巻き起こる風が、後ろの気配を丸ごと空へ押し上げる。アルフェラッカは、呑気にヒュウ、と口笛を鳴らした。

「さっすがアリエス、容赦なァい」
「キサマらは、危機感と緊張感を持てぬのか」

 黍嵐きびあらしの星、アリエスは、風を操る力を持っている。豪風により敵を吹き飛ばし、何もさせないまま大鎌でトドメの一撃。これがアリエスの常套手段だ。

「しかし、こうも数が多いと流石に手こずる」
「だねェ。向こうのお偉いさんも、本気ってこった」

 向かってくる敵の多さは、今まで戦ってきたどの戦よりも多く感じる。それはつまり、クレセント王国近辺の国々が、この戦争に乗じて、本気でこの国を奪おうとしているという事だ。
 無論、それを許すわけにはいかない。

「……よし。本気を出そう、四英星」

 透き通ったよく通る声は、不思議な重みを含んでいた。振り返らず、ただ敵を見据え、剣を握る手に力を込める。リーダーの言葉には、お決まりのあの言葉を。

了解イエッサー
「ああ、私に続け!」

 そう言って、コルンバは跳躍し、最前線に躍り出る。すかさず蔓で足場をつくると、それに飛び乗り、すかさず指示を出す。

「アルフェラッカは私の援護を! アリエス、風を頂戴!」
「「任せろ!」」

 指示を受け、アルフェラッカは攻撃を仕掛け、敵を一箇所に集めていく。炎に押され、一箇所にまとまった敵陣の元へ、アリエスの風の力で高く跳躍したコルンバが、弓を引く。

「凍てつけ!」

 そして放たれた氷の矢は、雨のように敵に降り注いだ。これが、氷を操る六花りっかの星・コルンバの能力。
 しかし、彼が四英星のリーダーである所以は、これだけには留まらない。
 地面に落下するコルンバを蔓でキャッチすると、すぐさま俺と背中合わせになって今度は剣を抜いた。
 コルンバは、弓だけでなく、ほぼ全ての武器を扱うことが出来る。
 これが、トップを走り続ける彼の強さだ。

「レオ!」
「ああ、ここに」

 俺が小さく頷いたのを合図に、素早く剣を振るう。
 ふたつの剣筋に迷いなどない。

 数の多さに手こずりながらも、王都への道を死守するべく、剣を振るう。
 そして、全員が肩で息をする中、敵軍が撤退していくのを確認した。

「はー……ふぅ。ッ、皆、大丈夫?」
「は、は……ッ、自分の、心配をしろ……リーダー」

 苦笑しつつ、剣を仕舞う。
 疲れ果ててはいるが、俺たちの勝利だ。

次回予告

四英星、魔法騎士、4人の仲間。
それらを忘れてしまったレオの生まれ変わり、芽来。
果たして、大切な仲間たちとの約束を叶えることはできるのか。
次回は、5月18日に投稿予定です。

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