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web3の未来を切り開く組織形態:合同会社型DAO採用のリスクと検討事項

前回、FiNANCiEというトークン発行プラットフォームと合同会社型DAOの比較を通じて、新たなビジネスモデルのメリットとデメリットを探求しました。

今回はさらに深く、合同会社型DAOをMetagri研究所という農業web3コミュニティにおいて採用する際に直面する具体的なリスクと重要な検討事項に焦点を当てます。「人、物、金」の三つの観点から総合的に分析していきます。


人:組織の心臓部

合同会社型DAOの成功のためには、「業務執行社員」が適切に参画し、モチベーションを保持し続けられるかに大きく依存しています。組織の日々の運営を担い、プロジェクトを地に足をつけて進行させる存在です。しかし、彼らに対する報酬やインセンティブの設計は、特に立ち上げフェーズでは、資金的な報酬をすぐに提供できない可能性があるため、複雑な課題となります。

業務執行社員の選定

  • 適正な人数:スタートアップフェーズでは3〜5人が理想的。

  • 役割と責任:職務記述書を作成し、責任範囲を明確に定義。

インセンティブ設計

  • 報酬の欠如:初年度は報酬なしでも、成果に応じた別のトークン付与やスキルアップの機会やマイルストーン達成時のボーナスが必要。

  • 非財務的インセンティブ: プロジェクトのビジョンへの共感や、達成感、社会的認知など、金銭以外の価値を提供。

  • 長期的な見返り: トークン価値の将来的な上昇や、成功時の分配を見込むことで、初期の報酬の欠如を補う。

物:リソースの具現化

物質的リソースは農業を軸に活動するMetagri研究所においては大きな強みです。農産物や農業体験サービスを通じて、トークンホルダーに直接的な価値を提供することが可能です。これは、トークンを単なる投機の対象ではなく、実際の経験と直結した資産として機能させるという、合同会社型DAOの革新的なアプローチです。
しかし、これらの資源の原価計算や価格設定は、組織の財務健全性を保つために慎重に検討が必要です。

物質的リソースの活用

  • 現物支給の強み: 農産物や体験サービスをインセンティブとして提供することで、トークンに実質的な価値を付加。

  • 会員証NFTとの連携: 既存のNFTホルダーとの調和を図りながら、社員権トークンとの差別化を図る。

Metagri研究所は、会員証NFTの発行を通じて既にコミュニティを形成しており、これを合同会社型DAOの枠組みに組み込むことが今後の課題です。

この融合により、組織の持続可能性が高まり、メンバーにはさらなる価値が提供されます。

NFT統合の挑戦

  • 価値の伝達: 既存のNFTホルダーへの継続的な価値提供と新たなNFTの差別化。

  • 役割の明確化: それぞれのNFTが担う役割を明確にし、メンバーの期待に応える設計。

コミュニケーション戦略

  • 専用カテゴリの設置: NFTホルダー向けに専用のコミュニケーションスペースを提供。

  • 結束の促進: コミュニティメンバー間の交流を深める活動を計画的に実施。

Metagri研究所では、Discordを中心としたコミュニケーションを活性化させながら、合同会社型DAOへの移行を進めています。社員系NFTホルダー専用のカテゴリやチャンネルを通じて、コミュニティの結束を強化し、全メンバーが一丸となってプロジェクトを推進できる環境を整えます。

金:合同会社型DAOへの資金戦略

財務は、Metagri研究所が直面する大きな課題です。初年度は赤字が予想されるため、賢明な予算計画とコスト管理が不可欠です。法人登記、ウェブサイト立ち上げ、事務所設立など、初期投資には最低でも50万円から100万円が必要と見込まれます。

初期投資の見極め

  • コストの見積もり: 初期投資には慎重な計画と予算配分が必要。

  • 会計処理の選択: 顧問税理士の採用か、自前での処理かの決定が重要。

価格設定のジレンマ

  • 適正価格の模索: 10万円程度が妥当なのか、市場調査と試行を重ねながら決定へ。

  • 資本金としての活用: トークン販売から得た資金を事業の基盤強化に充てる計画。

Metagri研究所が目指すのは、持続可能な農業コミュニティの構築です。その重要な手段が、社員権トークンの発行による資金調達です。しかし、適正な価格設定は、これからの大きな課題のひとつ。市場のない中での価格決定は難しいですが、安すぎると収益が見込めず、高すぎると参入障壁となります。結局のところ、価格はコミュニティの価値と将来性を反映するべきです。

収益分配の新しい形

  • 農産物の配分: 出資額に見合う農産物の提供により、具体的な価値を還元。

  • 持続可能な事業モデル: 農産物の提供を長期的な視点で設計し、Metagri研究所の理念と一致。

Metagri研究所の強みは、農産物を通じたリアルな価値提供にあります。出資者に対し、毎年一定額の農産物を分配することで、収益分配の形を具体化しています。これは、トークン保有者にとって、確かなリターンとなり、長期的なコミュニティの支持を得る基盤となります。

まとめ:合同会社型DAOを採用すべき理由

合同会社型DAOの成功は、適任の「業務執行社員」の選定とモチベーション維持に依存します。資金的報酬の代わりに、トークン価値上昇などの非財務的インセンティブが重要です。物的側面では、Metagri研究所の農産物提供が強みで、トークンホルダーに直接価値を提供します。NFTの統合と新たな価値提供方法の模索も課題です。財務面では、初年度の赤字覚悟の予算計画と、資金調達におけるトークン価格設定が大きな挑戦となります。
この合同会社型DAOの採用は、農業コミュニティの持続可能性と成長のための革新的な試みです。初期段階で法的ルールに則ったDAOとして活動することは大きな意義があると考えております。リスクや課題は山積みですが、前向きに合同会社型DAO採用を検討していきたいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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