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上田と茜(2024/4/14 ばってん少女隊 #ureshiinoツアー 大阪公演を見て思い出したこと)

(※以下の文中、敬称略で失礼します)

ばってん少女隊とukka。

同じ2015年に結成されたにもかかわらず、この2グループが、所属事務所スターダスト全体のイベントを除いては、直接関わる機会はこれまで殆どなかった。
何度かメンバー同士が配信などで1対1で話をする機会はあったものの、季節外れのリゾート地で申し訳程度に打ち上げられる花火のように、必ずしも噛み合わせがいい組み合わせには思えなかった。

2024年、ばってん少女隊、春の全国ツアー。
全4箇所のZEPPをまわる公演は、各地で対バンライブを行うことが発表されていたが、後半2公演のゲストは当初明かされていなかった。
大阪公演からちょうど1ヶ月前の3月14日。
福岡でも東京でもない、中間地点で、地元のBREAK TIME GIRLS ”BtG” をはさんで、3グループの対バンが組まれることが発表された。

その日、各SNSでこのライブを告知するメンバーは、それぞれどこかビジネスライクな日常のトーンに見える中、ばってん少女隊の上田理子は、かなり楽しみにしているようにも見えた。

4月14日当日。ZEPP NAMBA。
スリーマンという組み合わせの妙からか、パフォーマンスでがっつり真正面から殴り合うという雰囲気はなく、友好的なムードで進んでいった。
ひと組め、BtGが披露した、ばってん少女隊『ありがとーと』カバーで、フロアの客席の空気がいっそう緩む。

ふた組めに登場したukkaは、名刺がわりの1曲目に『Rising dream』を選んだ。
アップテンポで、まずはフロアの温度を1度くらいあげてやろうとするなら、ワンマンライブでも外部フェスでもここのところよく披露されるこの曲はピッタリだ。
アウトロで「ukka行くぞ!」と茜空が煽る。
その目の前にしている観客の7割近くは、ふだんは目にすることのない6色色違いのTシャツ - ばってん少女隊のファン”隊員”だったろうか。
(でもさ、ヨコにゆらゆら乗るのもいいけれど、タテノリもいいと思わない?)

セトリ序盤3曲めに、なんの予告も前触れもなく、ばってん少女隊の『さがしもの』イントロが流れ始める。
ご機嫌なフィドル(ヴァイオリン)の音色と沸き立つ"隊員"ともに、サークルを作ってまわりはじめる7人。
本家バージョンに比べたら少しだけ荒削りで、指一本でも触れたら、遠心力とともにメンバーが飛んで行っちゃいそうな勢いだった。
近くのなんばパークスの通路で、キャッキャいいながらTikTokを撮っている女子高生軍団が紛れてきたのかと思うように、心からの笑顔を浮かべていた。
イントロパートが終わり、サークルが解け、間髪入れずに「♪カッパドキアの空埋め尽くす」と歌が始まる。
ステージ前方で、気球の浮上と降下を膝の伸縮で表現する、茜空と結城りな。さっきからうってかわって不自然なほど真顔である。
(あ、こいつら、まあたやってんぞ…)

み組め、ばってん少女隊。
上田理子が、1ヶ月前に匂わせていたとおり、ukkaの『恋、いちばんめ』をカバーした。
こちらは、本家よりも丁寧に、わらべうたの動きを忠実になぞって、きれいな”はないちもんめ”を踊っていた。
前後にエレクトロ主体の、いまの曲調が多くセトリに組まれていたこともあって、より一層、ゆっくりした動きの中に垣間見える、このグループの上品さが浮き彫りになっていた。

この日、強く感じたことは、互いのグループの「いま」の雰囲気が、そのまんまステージにあらわれているなあ、ということだった。

(※このあと、ライブ本編については殆ど書いておりません。ライブでどんなことがあったのかについては、安心と信頼の、ふくみみんさんのライブレポートブログや、5年越しの思いをつづったあっさーさんの感想noteをご覧ください)

泣いていた赤鬼

2021年7月8日。目黒駅。
朝からしとしと降りつづいていた雨が、じんわりと、そこいらのアスファルトを黒く濡らしていた。
ukkaのファンクラブ会員向けのトークイベントが終わり、早々に飲みに消えていく知り合いの背中を見送った。
「この季節、月初は早く帰らないと…」同じように、飲みには行かず、帰宅の途につく友人と、東急線の改札に向かうエスカレーターに立ち、だらだらと今日の感想を話していた。
その時、ふとした思いが口をついた。
「新メンバーに、どう厳しく接するか、は、もしかしたら茜空にかかってるのかもしれないよね。ばってん少女隊での上田理子の役割を誰ができるだろうって考えたら、実は空ちゃんなのかもね」
都合のいい自分は、もの静かに聞いていた彼が、同じように感じている表情を勝手に読み取った。

この日のファンクラブイベントは、春ツアーを終えたukkaの4人が、来るべき新メンバーオーディションへ向けて、率直な思いをファンの前で吐露する、そんな目的で行われた。
まだ候補者すらわからないこの時点。
芹澤もあは「私より歳下のメンバーが入るのはいやだなあ」と、笑いながら”最年少”維持したいというこだわりを示していた。
川瀬あやめは「私とか,新メンバー入ってきたら、超甘やかしそう」と率直に語っていた。
これから自分たちの仲間を探しに行く、ukkaの4人にとって、まだその実感は大きくないように見えた。

この日からわずか5日前、2021年7月3日。福岡国際会議場メインホール。
結成6周年ライブを、3ヶ月前に新たに加わったばかりの2人の中学生のメンバーとともに、新体制最初の大一番に臨んだ、ばってん少女隊。

2部の最後、一人一人の挨拶で、上田理子はずっと涙にくれていた(ように自分からは見えた)。
瀬田さくらが、一切涙を見せず、鉄仮面のごとく終始にこやかな笑顔で百点満点のアイドルとしての挨拶を見せたのち、上田理子が涙を目にいっぱいためながら、締めの挨拶を切り出す。

なんかこのライブって、なんだろ、りるあちゃんと美舞ちゃんが入ってきてくれて初のホールワンマンっていう感じのライブなんですけど…私たちにとっては6年の集大成を見せなきゃいけない場所であって、しかも3年前ここでやらせていただいたときはすごい悔しい思いとかもいっぱいあったから、なんかその時のリベンジじゃないけど、その時の気持ちをすごい塗り替えられたらいいなっていう思いもあって、んで何か私たちもまあ、こう教える側になったりだとかして、ちょっと、なんだろう、自分も…頑張ってくれているのが分かってるけど、でも(ふたりが)すごいできるから、どんどんどんどんやっぱりこっちが求めちゃって、多分厳しいこともいっぱいいっぱい言ってきたと思うんですけど… こうやって6人でこのステージを2部完走することができて、すごい、良かったなって思っています。

2021.7.3 ばってん少女隊 6周年記念ライブ 上田理子MCより

ときおり言葉に詰まる上田理子の言葉を聞きながら、涙にくれた顔をあげられない蒼井りるあが、それでも「厳しいことをいっぱい言ってきたと思う」のくだりで、少しだけ首をふる。

のちのshowroom配信だったかラジオ番組だったかで、上田理子は、「自身のキャラクターにないけれど、心を鬼にせざるをえなかった」というような表現で、苦しい思いを振り返っていた。
上田理子については、まるで解像度が高くはない自分も、そこに、元・リーダーとしての責務・仕事という責任感を強く感じた。
それは、いま思うと、社会人として組織人としての共感というのに近かったかもしれない。

しゃべりは白帯

あれから3年が過ぎた。6人のばってん少女隊は、それぞれの関係性を変えながら、新たなフロンティアへの挑戦を続けていた。
愚直に真っ直ぐに、ときには不器用に駆け抜けて行こうとする雰囲気よりも、むしろ、他ジャンルとの掛け算であったり、海外への積極的なアプローチにも活路を見出すような、そんな変化を遂げていた。
『OiSa』以前と以後とで、世界観がガラッと組みかわった、そんな風にもとらえられた。

ukkaは、2021年11月に、結城りな・葵るりの、(結局)芹澤もあよりも歳上の2人をオーディションで仲間に加えたのち、2023年にリーダーの川瀬あやめが卒業し、(最終的に)芹澤もあより歳下の宮沢友・若菜こはるの2人が加わった。
誤解を恐れずにいうなら、青春を終わらせないために、走り続けてきた、そのたびに、目まぐるしくグループの色合いが変わって行った、そんな風にもみえた。

3グループがステージに集まってのエンディング。

客席から向かって左(下手)のばってん少女隊は、前列真ん中に上田理子、左右に柳美舞・蒼井りるあの3人が立っていた。“MC担当”上田理子が、告知と今日のライブのまとめの殆どを話す中、2人はにこやかに客席のあちこちを見渡している。

一方、向かって右(上手)のukkaは、前列に4人が立ち、結城りな・宮沢友が告知を読み上げている。宮沢友・若菜こはるが2人並ぶ後ろに、まるで保護者かのようににこにこ笑いながら立っている茜空は、ここでは何も話さない。
汗をかきかき、頬を少しだけ上気させながら話す宮沢友の後ろで、少しだけ涼しげな様子は、いや、保護者というより、部活のOB然としていたかもしれない。
ここにも対象的な絵があった。

上田理子は、2023年3月に大学を卒業し、いまでは、ソロ仕事としてラジオの平日帯番組のMCも任されるようになっている。


ずっとお笑いが好きだという彼女は、ラジオ番組でも配信でも、相手との「間」であるとか、瞬間的にツッコミツッコマレ役割を買って出る瞬発力を、常に研究しているようだ、とは詳しい人から聞く。
ときにライブ中のMCでも「噛み倒していた」のに、ラジオではニュース読みも一部まかされていて、徐々に慣れていくにしたがって、それが仕事として研ぎ澄まされてきている、とも詳しい人から聞く。

「空手は黒帯、しゃべりは白帯」
ずっと言い続けている自己紹介のフレーズは、努力と研究のたまもので、どうやら、いまでは有名無実になっている。

黒帯レベルの”しゃべり”を武器として携えた彼女のMCは、いつしか浮世離れした演出が殆どの時間をしめるばってん少女隊のライブの中で、「現世」にきちんと戻してくれる時報のような役割を果たしてくれているようにも思う。

新学期deshite

「茜空は、上田理子たりえるのか?」
あのとき思わず口に出た、無責任で軽薄なオタクの疑問に対するヒントは、それから3年たった今年、webのインタビュー記事に出ていた。

村星 りなるりはukka初の新メンバーオーディションを経て入ってきてくれたから、私たちもすごく緊張していて、どう距離を詰めたらいいかわからなかったんです。
茜 めっちゃバリア張ってたと思う(笑)。
結城 だって怖かったもんー。
茜 「この場所を守らなきゃ」みたいな気持ちが強かったし、ナメられちゃ困ると思っていたんじゃないかな(笑)。当時はかなり尖ってたかもしれないです。りなるりにトゲが刺さってたと思う(笑)。
結城 ざくざく刺さってました。特に空ちゃんのトゲが(笑)。でも、今はそんなことないですし、新メンバーの2人に対しては「先輩と思わなくていいよ」と伝えています。仲間が増えたことが素直にうれしいですし、本当に友達みたいな感覚で接してくれるからありがたいですね。

ukka「Overnight Rainbow」インタビュー|“明るい”新メンバー2人が加えるフレッシュなアクセント - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

どうやら鬼にはなりきれなかった、人間くささがそこにはあった。
そして、そこになんともいえない愛おしさを感じた。

2024年4月、茜空は大学4年生に進級した。
グループでの活動以外に、いくつかの個人での仕事にもチャレンジしようとしている。
他ジャンルで活躍している同世代のパネルトークのpodcast番組に出演したり、コメディ舞台に立つことが決まっていたり、あるいは個人レッスンを受けてグループとは違うジャンルのソロダンスに挑戦したり。
ただ、自分は彼女がそれらを「仕事」ととらえている感覚があるようには、色濃く読み取れなかった。
むしろ、自分なりの、ひとりで立つときの”表現”を突き詰めていこうという意思が感じられる。

ふと思う。
「仕事の鬼」とは言うけれど、「表現の鬼」とは言わないよな。

唐突にZEPP NAMBAに戻る。
『さがしもの』の中で「♪上からで失礼します」というソロパートは合計3回登場する。(※佐賀上空に浮かび上がった熱気球の上~一段高いステージ=”上”とかけていると推測されます)
茜空は、ふだんは上田理子が真顔で歌っているイメージが強い、3回目のパートが割り振られていた。
ほんの少しだけ悪だくみをたたえた表情で、高いステージから「失礼」した茜空の笑顔は、とても絶品だった。

それこそ、”鬼”かわいかった。
まだまだしばらく、風まかせに東西南北、右往左往させられることを思うと頭が痛くなった。
(さあて、2週間後はukkaは福岡…か)

おしごと

大阪公演の次の日、上田理子は大阪に残り、オフを満喫したようだった。

「お笑いが好き」というアイドルはたくさんいる。
「どのお笑い芸人が好きなの?」といってあがる名前は、おおよそ聞いたことがある。
かつて、まだ高校生の頃に上田理子があげた漫才コンビ「トット」は、テレビでしかお笑いを見ない自分には初めての名前だった。

☻理子さんの2018年オススメのお笑い芸人さんを教えてほしい!!
☺︎和牛さん・トットさん・ミキさんです◎

トットさんは、多田さんの天然なところと
桑原さんが多田さんを「たぁちゃん」って
呼ぶのが可愛すぎてやばいです(*´艸`*)

福岡所属でもないよしもと芸人推し…って、ガチのガチじゃねえか。

ぜったいけっこんしようなー‼︎

一方のukkaは、どうやら慌ただしく大阪を後にしたようだった。
ばってん少女隊から受け取ったお土産の「博多通りもん」を手に持って。
そして、一枚の書き置きを残して。

瀬田さくらのXポスト(2024/4/14 17:25)より

ほどなくして、瀬田さくらの心をかき乱したのが茜空だと判明する。
やっぱり、あいつやってんぞ…

茜空のInstagramストーリー(2024/4/15)より

2つのグループは、ほどなく結成9周年を迎える。
10年めのメモリアルイヤーに、またどんな風景を見せてくれるのだろう。

素敵なライブをありがとうございました。

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