九月

ピン芸人です。普段はコントをしています。折に触れて文章を書きます。エッセイ『走る道化、…

九月

ピン芸人です。普段はコントをしています。折に触れて文章を書きます。エッセイ『走る道化、浮かぶ日常』(祥伝社) YouTube「九月劇場」 https://www.youtube.com/@kugatsu_gekijo

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  • 息を止めて書いた

    息を止めて書いた、勢いだけの文章。リズム以外何もない。

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固定された記事

九月とは何をしている誰なのか、コンテンツマップ

概要基礎プロフィール 名前   : 九月 生年月日 : 1992年9月21日 出身   : 青森県八戸市 経歴   : 八戸高校卒業        京都大学教育学部卒業 …

九月
5か月前
68

「時代の文体」について考えている

10年くらい前から「時代の文体」について考えている。 前史としての「テンポよく悩むキザ」文体 以降、僕のおおまかで雑で主観的な理解。あくまでも自分の近くにやってく…

九月
1日前
35

くぐると何かがありそうな所をくぐる

『雪国』の書き出しの凄さ 川端康成の『雪国』の書き出しは、たぶん「雪国であった」という述部が凄いのではなく、「国境の長いトンネルを抜けると」という前フリが凄いの…

九月
6日前
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コナン×マクドナルド「真実はいつもタツタ」が好き過ぎて悔しい

最近、マクドナルド×コナンの広告が流れている。コナンのあらゆる回を混ぜてそれっぽくサンプリングしたみたいな、どこかあの頃のMADっぽい映像が流れたのち、チキンタツ…

九月
2週間前
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インターネットに潰されないように、どうかご無事で

九月と名乗って芸人活動をしている。養成所は出ていないし、事務所等にも所属していない。芸人じゃないと言われたらそうなのかもしれない。 活動の大半は単独ライブであり…

九月
4か月前
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物書きになる人生と、物書きにならない人生

20代前半の頃、僕は「物書きになりそうな奴ら」と遊んでいた。全員いけすかない奴らだった。全員が変な服を着ていた。そして全員が見た目ほど変な奴じゃなかった。温かい、…

九月
4か月前
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「警察に行けばいい」とかみな言うが、警察署にはガチャ性がある

「警察に行けばいい」はどこまで現実的か諸々の出来事から派生して、「何かあったらすぐに警察に行けばいい」という意見をよく見かけるようになった。そういう考え方は、ど…

九月
4か月前
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英語学習とインターネットの相関教育システム論 ─「ミーム英語」から「英語ミーム」へ─

相関教育システム論? 出身大学の話はよく聞かれるけれど、そんなことよりもっと細かい専攻の話をしたい。ちょっと専攻の話をさせてくれ。 学生時代、僕が所属していた…

九月
4か月前
61

「大学は勉強する場所だから、入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」という文の意味が、あんまりわからない

「入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」 AO入試を導入する大学が増えてきたからだろう、「大学は勉強する場所だから、入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」とい…

九月
5か月前
57

「なぜ学校に行かなければならないか」と聞かれたとしたら、どう答えるか

”mond”の僕のアカウント宛に来た質問文より。 ◀九月の回答(原文ママ)▶ 九月と申します。くがつと読みます。なぜ学校に行かなければならないか、僕もあんまり分から…

九月
6か月前
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大学入試のスポーツ推薦制度は問題か?

”mond”の僕のアカウント宛に来た質問文より。 ◀九月の回答(原文ママ)▶ 九月と申します。くがつと読みます。入試は一般入試しか受けたことがありません。 ではでは…

九月
6か月前
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なぜか、本当になぜか、「ネトウヨの皇帝」が僕のファンだった話

恐らく僕しか経験していないであろう、かなり不思議な思い出のことを書こうと思う。 数年前、Twitterで大暴れしていたアカウントがあった。そのアカウントは、ジャンルで…

九月
6か月前
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表記別おしっこ怖さ査定ノート

前置き 日本語の難しさ日本語は難しい言語であると言われる。単なる噂である可能性もある。僕には真偽を判断できない。なにせ僕自身、第二外国語として日本語を学んだ経験…

九月
6か月前
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あらゆるスピーチを一本槍で貫いた校長の話

退屈といえば、焼肉食べ放題の後半と校長先生のお話である。特に校長先生のお話である。焼肉食べ放題の後半には「焦げた肉をもっと焦がして遊ぶ」みたいな遊びしろがある。…

九月
6か月前
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やる気のない自販機とパンク・ロックの国立

先月、まだ夏も盛りの頃、かなりやる気のない自販機を見た。それはなんというのだろう、「やる気のない自販機」としか言いようのない自販機だった。 それはコカ・コーラ社…

九月
8か月前
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「負けず嫌い」を摩耗させてやりたい

ずっと疑問だった。「負けず嫌い」の「ず」は何なんだろう。 普通に考えたら、否定を表す「ず」しかない感じがする。でも、否定を表す「ず」だとしたら、おかしい。「負け…

九月
9か月前
66
九月とは何をしている誰なのか、コンテンツマップ

九月とは何をしている誰なのか、コンテンツマップ


概要基礎プロフィール

名前   : 九月
生年月日 : 1992年9月21日
出身   : 青森県八戸市
経歴   : 八戸高校卒業
       京都大学教育学部卒業
       同大学院教育学研究科修士課程修了
職業   : 芸人
所属   : フリー
趣味   : 散歩、読書、音楽、美術館、野球観戦
特技   : 30分で2000字書ける
長所   : 根性、体力、人懐っこさ
短所  

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「時代の文体」について考えている

「時代の文体」について考えている

10年くらい前から「時代の文体」について考えている。

前史としての「テンポよく悩むキザ」文体

以降、僕のおおまかで雑で主観的な理解。あくまでも自分の近くにやってくる文章の文体の話であって、学術的な整理ではないことに注意。

まず、もともと文章の言葉は書き言葉がメインだった(はずな)わけで、そこからのずらしとして口語体での文章があった(はず)。

が、サリンジャー〜庄司薫〜村上春樹あたりの流行か

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くぐると何かがありそうな所をくぐる

くぐると何かがありそうな所をくぐる

『雪国』の書き出しの凄さ

川端康成の『雪国』の書き出しは、たぶん「雪国であった」という述部が凄いのではなく、「国境の長いトンネルを抜けると」という前フリが凄いのだと思う。

「国境」というのは国と国とをまたぐ箇所であり、向う側にあるものへの想像力を掻き立てられる言葉だ。どこかの海の向こうの曖昧な地平線が見える。背の低い草が生い茂っているのが見える。飛び交う羽虫が見える。雄大な大地をズシンとえぐり

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コナン×マクドナルド「真実はいつもタツタ」が好き過ぎて悔しい

コナン×マクドナルド「真実はいつもタツタ」が好き過ぎて悔しい

最近、マクドナルド×コナンの広告が流れている。コナンのあらゆる回を混ぜてそれっぽくサンプリングしたみたいな、どこかあの頃のMADっぽい映像が流れたのち、チキンタツタを持ったコナン君が「真実はいつもタツタ!」と言う。

はぁ?

真実はいつもタツタ。マジで何言ってんだよ。どういう意味なんだよ。元ネタがコナン君の名台詞「真実はいつも一つ」なのはわかる。でもそれしかわからない。

言葉としてまるで何もか

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インターネットに潰されないように、どうかご無事で

インターネットに潰されないように、どうかご無事で

九月と名乗って芸人活動をしている。養成所は出ていないし、事務所等にも所属していない。芸人じゃないと言われたらそうなのかもしれない。

活動の大半は単独ライブであり、実態としては「舞台中心の旅芸人」という感じだ。フラフラになりながら一人で各地を回り、なんとかライブで食っている。その傍ら、時たまこんなふうに文章を書いている。依頼が来て、各媒体でコラムやエッセイを書くこともある。書籍を一冊出版している。

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物書きになる人生と、物書きにならない人生

物書きになる人生と、物書きにならない人生

20代前半の頃、僕は「物書きになりそうな奴ら」と遊んでいた。全員いけすかない奴らだった。全員が変な服を着ていた。そして全員が見た目ほど変な奴じゃなかった。温かい、優しさとかのある奴ら。ただ変な服を着ていて、とっつきにくいだけの奴ら。ケレン味とハッタリとしゃらくささで生きてる奴ら。僕は彼らが大好きだった。

どいつもこいつもブログをやっていた。みんな気ままな日記や随筆、映画や文学の評論、詩や戯曲や小

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「警察に行けばいい」とかみな言うが、警察署にはガチャ性がある

「警察に行けばいい」とかみな言うが、警察署にはガチャ性がある

「警察に行けばいい」はどこまで現実的か諸々の出来事から派生して、「何かあったらすぐに警察に行けばいい」という意見をよく見かけるようになった。そういう考え方は、どこまで現実的なんだろう。

この記事では「事件後に被害者は心的トラウマから事件を正当化しようとするから〜」みたいな、心理学的ケアの話はしない。そういうのはちゃんとした本を読んでくれ。

もっとずっとわかりやすく、警察署そのものにまつわる話で

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英語学習とインターネットの相関教育システム論 ─「ミーム英語」から「英語ミーム」へ─

英語学習とインターネットの相関教育システム論 ─「ミーム英語」から「英語ミーム」へ─


相関教育システム論?

出身大学の話はよく聞かれるけれど、そんなことよりもっと細かい専攻の話をしたい。ちょっと専攻の話をさせてくれ。

学生時代、僕が所属していたコースは「相関教育システム論系」である。したがって、履歴書のうえで僕の専攻は「相関教育システム論」となる。相関教育システム論、聞き慣れない言葉だろう。

それがどういう意味なのか、実は僕も知らない。僕に限った話でもない。在籍していた誰も

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「大学は勉強する場所だから、入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」という文の意味が、あんまりわからない

「大学は勉強する場所だから、入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」という文の意味が、あんまりわからない

「入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」

AO入試を導入する大学が増えてきたからだろう、「大学は勉強する場所だから、入試は勉強の学力によって選抜するべきだ」という意見をよく目にするようになった。

僕自身は今後大学入試を受ける予定がなく、大学教員をしているわけでもなく、受験産業に関わっているわけでもない。当事者でもなんでもない。たかが制度の変更の一つ、「無関係に暮らしを営む」とひとたび決め込ん

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「なぜ学校に行かなければならないか」と聞かれたとしたら、どう答えるか

「なぜ学校に行かなければならないか」と聞かれたとしたら、どう答えるか

”mond”の僕のアカウント宛に来た質問文より。

◀九月の回答(原文ママ)▶

九月と申します。くがつと読みます。なぜ学校に行かなければならないか、僕もあんまり分からないまま、学校に行ったり行かなかったりして大人になりました。学校それ自体に対する疑問はずっと自分の中にあって、大学では教員養成ではないタイプの教育学部を選択しました。教育について、ちゃんと考えてみたかったんです。

在学中はオルタナ

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大学入試のスポーツ推薦制度は問題か?

大学入試のスポーツ推薦制度は問題か?

”mond”の僕のアカウント宛に来た質問文より。

◀九月の回答(原文ママ)▶

九月と申します。くがつと読みます。入試は一般入試しか受けたことがありません。

ではでは、3つくらいの論点でもって答えます。概ね僕の論調としては「スポーツ推薦で人が入ってきてもよくない?」という考え方です。

大学は勉強する場所なのか?

まずですね、「大学が勉強する場所」という認識自体が、もしかしたらそこまで妥当な

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なぜか、本当になぜか、「ネトウヨの皇帝」が僕のファンだった話

なぜか、本当になぜか、「ネトウヨの皇帝」が僕のファンだった話

恐らく僕しか経験していないであろう、かなり不思議な思い出のことを書こうと思う。

数年前、Twitterで大暴れしていたアカウントがあった。そのアカウントは、ジャンルでいうならば「ネトウヨ」だった。本人自身が「ネトウヨの皇帝」と自称していた。皇帝のフォロワー数は10万人を超えていた。結構ちゃんとデカい。それでいて煽動的なデマツイートが多く、かなり悪質なアカウントだった。デマに右も左も保守も革新もな

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表記別おしっこ怖さ査定ノート

表記別おしっこ怖さ査定ノート

前置き 日本語の難しさ日本語は難しい言語であると言われる。単なる噂である可能性もある。僕には真偽を判断できない。なにせ僕自身、第二外国語として日本語を学んだ経験がないからだ。英語やフランス語や中国語と比べたとき、日本語が抜きん出て難しいかどうかはわからない。

「自国語が他の言語に比べて傑出してなにかである」と主張することは、ことによってはナショナリズム的、あるいはエスノセントリズム的な意味合いを

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あらゆるスピーチを一本槍で貫いた校長の話

あらゆるスピーチを一本槍で貫いた校長の話

退屈といえば、焼肉食べ放題の後半と校長先生のお話である。特に校長先生のお話である。焼肉食べ放題の後半には「焦げた肉をもっと焦がして遊ぶ」みたいな遊びしろがある。マナーこそ終わっているがつまらなくはない。その点、校長先生のお話はヤバい。遊びしろが全くない。

校長先生の話を好んで聞く人間なんか、この世に存在するのだろうか。長いし、説教臭いし、かったるい。夏場なんかは体力のない奴から順番にぶっ倒れる。

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やる気のない自販機とパンク・ロックの国立

やる気のない自販機とパンク・ロックの国立

先月、まだ夏も盛りの頃、かなりやる気のない自販機を見た。それはなんというのだろう、「やる気のない自販機」としか言いようのない自販機だった。

それはコカ・コーラ社の自販機だった。コカ・コーラ社、押しも押されもせぬ最王手飲料メーカーである。コカ・コーラ本社様にやる気がないなんて、そんなわけはない。どんな会社よりやる気があるに決まっている。でも、その自販機に関して言えば、明らかにやる気のない自販機だっ

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「負けず嫌い」を摩耗させてやりたい

「負けず嫌い」を摩耗させてやりたい

ずっと疑問だった。「負けず嫌い」の「ず」は何なんだろう。

普通に考えたら、否定を表す「ず」しかない感じがする。でも、否定を表す「ず」だとしたら、おかしい。「負けないことが嫌い」という意味になる。それではニュアンスが真逆だ。

「負けないことが嫌い」ということは「勝つことが嫌い」ということ。元の言葉からは到底考えられない、上昇志向皆無の自堕落な言葉、あるいは勝ち過ぎておかしくなった奴の世迷い事にな

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