マガジンのカバー画像

経済 記事まとめ

514
経済全般、金融、経済学についての記事を自動でピックアップする、公式マガジンです。
運営しているクリエイター

#円安

円安で貿易赤字拡大の誤解

円安生む経済構造、反転に時間 企業にドル買いの実需 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 貿易収支の赤字が続いている。財務省の貿易統計によれば、23年度の貿易収支は3年連続の赤字となった。そして、円安で輸入金額が膨張することを理由に、貿易赤字の主因を円安に求める向きも少なくない。 ただ、輸入金額の増加が輸入品そのものの値上がりや輸入量の増加に基づくものであれば、為替に関係なく貿易収支は赤字方向に振れやすくなる。また、円安は一方で輸出額の膨張にもつながるため、円安が必

「今度こそ違う」~副総裁講演に思うこと~

結局、労働市場次第なのか 5月27日に行われた日本銀行金融研究所主催の国際コンファランスにおける内田副総裁の基調講演が債券市場で話題を集めています: 実際、今後の利上げ軌道を約束するかのような強い語気の目立つ講演という印象を強く受けました。内田副総裁は「現在の物価を巡る動向の変化が、不可逆的なデフレからの構造変化を意味するのか、あるいは、単に世界的なインフレによってもたらされた一時的な現象にすぎないのか」という自問自答から講演を切り出しています。 これに対する回答として、

再び炸裂したECBのブログ砲~会合軽視 or 多様化~

妥結賃金は加速、ECBは冷静な対応? ECB政策理事会が接近しており、利下げが確実視される中、照会も増えているので筆者の見解を提示しておきたいと思います。こちらの記事は誰でもお読み頂けます。 ECBウォッチの上で重要な情報として、5月23日はECBの「次の一手」を占う上で極めて重要なデータである1〜3月期妥結賃金が公表されています: 伸び率は前年同期比+4.69%と2四半期ぶりに加速しており、先行指数として注目されていた求人広告賃金(1~3月期平均で約+4.00%)からの

遂にインフレ税が始まったのか

次のリスクは財政ファイナンスのテーマ化 160円をつけたピーク時からは反落しているものの、ドル/円相場は依然150円台で推移しています。まだまだ関連報道や特集は多いです: 現状の円安相場は米金利の高止まりや需給構造の変容など、いわゆる金利や需給の要因を指摘する向きが殆どですし、それが一番真っ当な分析だとは思います。しかし、日々の業務を通じ、海外から「次の円安リスク」として財政ファイナンスがテーマ視されているのではないか照会も増えています。 今回はこの点に関し、筆者なりの所

4月『景気ウォッチャー調査』では、円安の進展、物価高へに懸念などが、景況感を押し下げ、「価格or物価」や「為替」などが景況感にマイナス寄与。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年5月13日)―

調査期間中に34年ぶりの1ドル=160円台の円安になった4月『景気ウォッチャー調査』で、現状判断DIは47.4と前月差2.4ポイント低下。 4月の『景気ウォッチャー調査』の回答期間は4月25日~4月30日です。調査期間中の大きな話題はなかなか歯止めがかからない円安動向でした。4月26日の日銀・金融政策決定会合後、円安はペースを速め、29日に一時1ドル=160円台と90年4月以来およそ34年ぶりの円安・ドル高水準を付けました。その後、政府・日銀による為替介入とみられる円買

グローバリゼーション vs. スローバリゼーション【日本への追い風】

米国のおかげで「steady」な世界経済 4月16日、IMFから春季世界経済見通し(WEO)が公表されました: 世界経済の実質GDP成長率は今年1月の暫定改定値から+0.1%ポイント引き上げられ+3.2%とされています。筆者は毎回、WEOのサブタイトルを記録してその推移をエクセルで管理しています。 今回のサブタイトルは「Steady but Slow: Resilience amid Divergence(安定かつ緩慢、まちまちな様相の中、強靭性も)」となっており、インフ

デジタル貿易の王者アイルランド

デジタル貿易界の王者アイルランド 今月最初のnoteでは立て続けにデジタル関連収支の国際比較について議論をさせていただきました。各所より非常に多くの反響を頂いております。 年初に日経新聞がデジタル小作人という絶妙なフレーズで取り上げて以降、デジタル赤字はかなり世に浸透してきたテーマになっていると感じます: 今回は一連のデジタル関連収支シリーズの〆として、(少なくとも統計上は)デジタル貿易界の王者とも言えるアイルランドについて取り上げます。これまでnoteではEUに関して、

デジタル収支の国模様~米国はWindows、英国はプレミアリーグ、異次元のアイルランド~

前回は世界のデジタル関連収支における日本の現在地を確認しました。多くの方に読んで頂き感謝です。これを機にメンバーシップに登録したというお声も沢山頂きました。この場を借りて御礼申し上げます: その際、予告的に「デジタル関連収支を通じて見る国模様」を取り扱うとしました。「次はいつごろになりますか?」というお問合せも頂戴しました。このテーマについてはメディアの取り扱いが増えていることもあって、非常に強い世間の関心を肌で感じます。今週、円安を解説する記事でもデジタル赤字というフレー

デジタル赤字は日本だけの話なのか?

デジタル赤字についてはこの1年で取りざたするメディアやアナリストが非常に急に増えました。問題提起した1人として、こうして世論が大きくなっていくことは嬉しく思います。しかし、その国際比較については統計上の扱いが非常に煩雑で厄介なこともあり、まだ進んでいないように思います。これから必ず注目される論点になるでしょう。今回はその点を深掘りしたいと思います。デジタル赤字の国際比較はまだ、殆どの識者が手を付けていない論点で、今後、取り上げられていくことになると思っています。 「新時代の

「国際収支の未来」は「日本の未来」

既に各社から報道が出ております通り、3月26日、財務省は神田財務官を主催とする国際収支分析を専門とする懇談会「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」を発足させました。今後複数回の会合を経て、具体的な提言が出されることになっています。若輩者ではありますが、私も委員として拝命頂きました。問い合わせも多いゆえ、簡単に紹介だけさせて頂きます。 会合の議論に関し、私が何かを申し上げることはできませんが、第1回会合のリードスピーカーにご指名頂きました。その際の資料は既に財務省HPで公

円安は「優しさの代償」~マイナス金利解除を受けて~

やはり「噂で売って、事実でも売り」だった 注目された日米金融政策決定会合を経て、ドル/円相場は年初来高値を更新、150円台で値固めする展開に入りました。 既報の通り、3月18~19日の日銀金融政策決定会合は①イールドカーブ・コントロール(YCC)の廃止、②無担保コールレートの誘導目標を▲0.1%から+0~0.1%程度へ引き上げ、③ETF・JREITの購入停止という引き締め方向の決定を下しました。日銀にとっては実に17年ぶりの利上げです: マイナス金利解除と共に注目されてい

株高とインフレと中進国

GDPの名実格差に正しい理解を 今月のnoteでは現在の日本経済はインフレ調整の過程に入っているのではないかという趣旨で議論しました。足許で調整色を強めている日経平均株価も昨年来では依然「高止まり」の印象が強く、これもやはり「インフレの賜物」なのだろうと思っています: 足許の動向はさておき、株高に関しては、それを喜ぶ議論の傍らで、実体経済の弱さを嘆く論調が多いのも事実です。これはそもそも日本の家計において株式の保有比率が低いという以前に、インフレになった分が十分、家計に分配

日独GDP逆転の本質~為替要因だから気にしなくて良いのか~

為替要因だから4位で良いのか? 先月、2023年のドル建て名目GDPが確定したことを受けて、日本がドイツに次ぐ第4位の経済大国へ転落したことが大々的に騒がれました。今でもその余韻があって、断続的な報道が見られたりしています: このテーマに関しては昨年来、noteでも複数回議論しているもので、予想されていた未来が統計で追認されたに過ぎないと思っています。例えば下記は昨年10月のnoteです: しかし、公にテーマが周知される中、「円安による為替要因であり、4位転落は騒ぎ過ぎで

「新時代の赤字」と原油輸入の類似点

パスの大幅修正は難しい ドル/円相場は150円近傍で高止まりしています。150円台は2023年11月中旬以来、約3か月ぶりの水準です。昨年の12月FOMCでハト派方向に急旋回して以降、米金利低下とドル安の相互連関的な動きが予測されていましたが、米国の経済・金融情勢がこれをフォローしてこない状況が続いています。かねて述べている通り、筆者は円安の真因が日米金利差だとは思いませんが、日米金利差が縮小しないことで僅かに期待できるはずの押し目すら到来していないのは事実でしょう。 も