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9.もうすぐ、もうすぐ世界が終わる。

「 世界のおわりに」


「ねえ、ねえ、おとうさん。
もうすぐ世界が終わってしまうって本当なの?」

「そうだね…。」

あれから数十年の時が過ぎた。あれから、というのは新型567ウイルスが世界中に蔓延したときのことだった。世界中の人々は恐れ、慄き、日々、恐怖心と同居し、人々の精神は壊れてしまったのだ…。新型567ウイルスが問題ではなく、すべてのマスコミやメデイアが恐怖心を煽り続け、人々は真実から目を背け。ただ世の中の奴隷となり、服従することが正しいことだと信じ込んでしまったからだ。
新型567ウイルスは人類が己の恐怖心によって怪物化してしまい、全世界約七〇億人の人類の死者数がわずか一〇〇万人足らずなのに「恐怖というウイルス」を撒き散らかしたからだ。
人類のすべては外出を避け、室内に籠り、仕事も失い、貧富の差はさらに拡がり、飢え死にしてしまった。AIが発達したとはいえ、それを操作する人間がいなくなったことで世界中の電気は止まり、すべての物流機能を失い、人々は時給自足の生活に追い込まれてしまったのだ。

もうすぐ世界が終わる…。

「…もうみんなと遊んだりすることができなくなるの?」
「そうだね…」

「じゃあ、おとうさんもぼくも死んでしまうの?」

「ははは。人は誰でも死ぬ運命だよ!ただ、年をとっているおとうさんから先にいなくなるんだ。それは自然なことだ。でもね、お父さんの世界は終わるけれど、きみたちの世界はまだまだ残り続けるはずさ!」
 
「そんなのいやだ…」

「でもね、世界とは一つではなく、二通りの世界があるんだよ」
「二通りの世界って?」
「人間は誰でも、二つの世界に存在している。それは〈わたしが死んだ後もそのまま存在し続ける世界〉と、〈わたしが死んだら消えてしまう世界〉の二つある。不思議だと思わないかい?」

「自分がこの世からいなくなっても世界は残るって不思議な気がする」


「そうだね。実際の世界はあり続けるが、自分という〈意識の世界〉が終わるだけ、変だよね。」

「〈意識の世界〉って何?」
「死というのは物理的なものだけど、〈意識〉というのは今感じている温かさや冷たさ、明るさや暗さ、痛みや気持ちよさ、悲しかったり、嬉しかったりすることや、誰にでもある想い出なんかそうだね。人間は、二つの世界に片足ずつ突っ込んで生きているんだよ。〈わたしが死んでも無傷のまま存在し続ける世界〉と、〈わたしが死んだら消えてしまう世界の二つ〉。」

 「ぼくは、そんなのは嫌だ…」

「ははは、そんなに寂しがらなくてもいいんだよ。わたしの身体の中には御爺ちゃんやお婆ちゃんがいる、そのまた曾爺ちゃん、曾婆ちゃん、曾曾曾と何百年前も前から一緒に存在しているのだからね。君の身体の中の細胞(DNA)の中には私の細胞はもちろん、すべての御先祖さまが何百、何千、何万人と存在しているのだから。きみの世界はその人たちと共に存在し続けるのさ。」

「でも、おとうさんと会えなくなってしまう…」
「だから、君の中に君がこの世を去るまで一緒にいるのだよ!君の目と鼻を通して、耳を通して君の世界を感じる事ができるし、君はわたしを感じる事ができるからね。だから、寂しくはないよ!」

「じゃあ、僕の世界が終わるまでお父さんと会い続ける事ができるんだね」
 
「そう、本当の命、つながる命とはそのような意味がある。人間の身体は六〇〇兆の細胞からなっているといわれているが、もし、その細胞に記憶が残されていたとすればどうかな?わたしは父親とよく似た癖が残っている。その癖は私の父親の御爺ちゃんの代から続いている。それは無意識だけれど、細胞に記憶されているとしたらまさに永遠の命だといえるかもしれないよ!もし、困った時があったら自分の心、自分の細胞に声をかけてごらんなさい。静かに耳を傾けるときっと誰かの声が聞こえるはずだ。君の命は君だけのものでなく、数百人、数千人の命とともにあることがわかるはずだ」

「そう…」

世界が滅びてしまった時から、もう数十年が経った。
しかし、本当に滅びてしまったのだろうか?
世界は本当に消えてしまうのだろうか?

確かに〈わたしだけの世界〉は消えてしまうが、他の者たちの世界は残されているし、残り続けている。

何もかもが崩壊してしまった、この世界。まるで戦後の国のように、大震災の後のように、まるで土と灰だらけの世界かも知れないが、何もない世界こそ、本当の人間の大切なものがそこにあるような気がする。世界がたとえ終わっても、そこから世界がまたはじまる、まさに永遠の生命の循環のようだ。また、実際に地球が滅んでなくなったとしても、私たちは形を変え、微生物もしくは別の動物または、何かしらの細胞のかたまり、または意思を持つ素粒子として意識は残り続ける。それが本当の生まれ変わりなのかもしれない。

人はそれを「見えないものの声」「もう一人の自分」「神の声」「天使」「精霊」「守護霊」、たましいと呼ぶ。

わたしたちは、永遠に一人ではない証明かもしれませんね。


「世界の終わりに」創訳 coucou version

 まだ、太陽はあるの
 まだ、海はあるの
 もう、世界が終わっているのに
 誰にもわからないの
 だって、もうあなたは私を愛せないのだから

 まだ、鳥は飛んでいるの
 まだあの星は輝いているの
 もう、世界が終わっているのに
 誰にもわからないの
 だって、もうあなたは私のそばにいることがないから

 朝起きたら、不思議に思うかも
 何もかもが変わっていないことを
 何もかもわからない
 私がこの世から去ったことが


まだ、私の心臓は動いている
まだ、私から涙があふれつづけている
もう、世界が終わってしまったことを

誰もが知らない

あなたがこの世界から消えたときにすべてが終わったことを。

そして、またはじまる


cou couです。ごきげんよう!


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