見出し画像

鷹の台の「フランソワ」なんて少女漫画に出てきそうな洋食店で食べるナポリタン。〈フランソワ_小平市小川町〉

このあたりの学生たちの胃袋を鷲掴みにしてきたんだろうな定食がならぶ喫茶店のようでもあるコーヒー&キッチンで、ナポリタンを食べて悦に入っていたら悲しいお知らせを最後に聞いた話。

鷹の台で打ち合わせを終えてお昼をどこで食べようと考える。あそことこことふられ、そうだずっと気になっていたあそこに行ってみようと自転車を走らせた。

たかの街道の西の端。創価高校と白梅学園高校と朝鮮大学校に挟まれる、上水公園の前の三軒長屋の真ん中にあるコーヒー&キッチン。この少し先には武蔵野美術大学がある静かな学生街。

たぶんずっとこの場所でこのあたりの学生たちのお腹を満たしてきた。そんな景色が目に浮かぶ年季が滲む外観。そして、その隣にも寄り添うようにレストランがある。

「キャンディ」と「フランソワ」。少女漫画のようなんてずっとこの道を通るたびに思ってた。その「フランソワ」のほう。

赤い文字で小さくopenの札が掛かる白い扉を開けると目の前に階段。2階もあるのかなんて思いを巡らせながら誰もいない店内の窓際の席に座る。

お母さんがいらっしゃいませとお冷を運んできてくれた。

メニューを眺めると、学生の胃袋を鷲掴みするような、ずらと並ぶ定食のメニューに圧倒される。クリームコロッケから始まり、メンチカツ、白身魚フライ、ベーコンエッグ、エビカツ、ハンバーグ…と50種類以上ある。チキンとポークとビーフのそれぞれに、ピラフやカレーにパスタとサンドなどなどと。

悩む。うん、悩む。

ゆっくりとお腹と相談する。ベーコンエッグも気になるけど、まず初めましてのお店ではほぼ二択。白身魚フライかナポリタン。頭の中でじゃんけんをして、あいこ三回でナポリタンが勝った。

お母さんにナポリタンと注文すると厨房に向かいナポリタンです。おもむろに黒いコック服を着るお父さんが動き出す。

使い込まれたテーブルと椅子、微かに油が粒々と散る白のサッシからやわらかに日が差し込む店内。花柄の赤いカーペットがその当時の息吹を感じさせる。 

少しして入ってきた学生さんが、いいねここと盛り上がっている。どこで知ったのなんて会話しながら。ツイッターでなんて聞こえてきた。チキンカツとポークカツと若者らしいチョイス。

そんな会話に聞き耳を立てていたら、静かに流れるテレビに交じり、厨房から聞こえてくる炒めの音。仄かにケチャップの匂いが店内に漂うが鼻に届いてお腹がグーっと鳴る。

お待たせしましたと、白く湯気を立てるナポリタンが届く。千切りのキャベツの上に胡瓜が三枚並んでサウザンドレッシングがかかるがワンプレートに寄り添うナポリタン。

うん、おいしそう。

スプーンとフォークを使いくるくるとして、立ち上がる湯気とともに頬張ると、しっかりとケチャップがからむもっちりとした1.8㎜くらいのスパゲティ。口の中に広がるケチャップの酸味と絶妙なスパゲティの湯で具合の嚙み心地。

うん、おいしいと自然とこぼれる心の声。

脇を固めるハムと玉ねぎとピーマンの食感がナポリタンを食べているの実感を加速させる。サウザンとケチャップが交じるキャベツがいい感じ。

くるくると巻いて頬張るしあわせ。ケチャップの先に見える景色はどこ。なんて悦に入っていたら、隣の若人に届くカツたち。

ソースをかけて頬張る彼が、「あ、旨っ!」と声を漏らす。うん、たしかに横目で見る君たちのカツは旨そうだ。

そんな気持ちを抱えて今度は揚げ物なんてお会計をしながらお店の方と話をすると、2月末で閉めるんですなんてやさしくシワが滲むお父さんから衝撃な言葉。

うそでしょ、だって僕たちは出会ったばかりじゃないかって言葉がほとばしる。

今日ここに来れてよかったって思う気持ち。もう一回くらい行けるかな。その時はオムライスに白身魚フライとクリームコロッケをトッピングなんてことが出来るか聞いてみよう。

たぶんずいぶんと長いことこの場所でやられていたと思います。今までほんとにありがとう。そしてこれからを楽しんでください。

(は)

【フランソワ】
  小平市小川町1丁目741−106


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?