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素朴な味ー男爵いもを使った団子

男爵いもは道民に長い間親しまれ、愛されている品種である。
湯気の上がったホクホクした美味しそうなじゃがいも、
食欲を思いっきり刺激してくれる。

長い日照時間と昼夜寒暖差の大きい北海道の気象条件が
あのホクホクジャガイモを生み出す。
煮物でもサラダでも何にでも美味しく調理できる万能選手でもある。

JAきたみらい

我が家の場合は

私が小学生の時はまだ土曜日に半日学校があった。
でも土曜日は給食がなく、半日授業が終わる頃にはかなりお腹がぺこぺこ。
お腹が空いているので早く家に帰りたく、ランドセルを背中で揺らしながら
よく走って帰ったものだった。
そして玄関のドアを開けた途端、ぷ〜んとする醤油の香ばしい匂い。

“あ!お父さんのイモ団子だ!“

母がパートで家にいない土曜日の午後は父がお昼を作ってくれた。
メニューは定番の男爵いも団子。

作り方はいたってシンプル。
ジャガイモをお湯で茹でマッシュポテトにする。
片栗粉を多少混ぜて丸い形にしたものを
バターたっぷり溶かしたフライパンで焼く。
焼き上がったものを砂糖醤油で絡めたら
出来上がり。

招待もしていないのに、よく家に遊びにきていた隣の同級生の女の子。
彼女も一緒にジャガイモ団子を土曜のお昼に頬張った。
「この団子おいしいね!生き返った〜」私たちは口々に言う。

すると父のいつもの話が始まる。
隣の子がいるので“おじさんはね”と言いながら
「このジャガイモに救われたんだ」と。
すると隣の子が「どういう意味ですか?」

戦時中、樺太から命からがら北海道へと引き上げてきた父の家族。
食べるものがなく、空腹で道が曲がってみえたそう。
そんな頃、農家をしている親戚からお米ではなくジャガイモを
大量に分けてもらったとか。
とにかくお腹が空いていたので鍋でイモを蒸して、
ほとんど味気のない状態で食べたんだそう。来る日も来る日も。

ジャガイモへの想い

冬の荒れた大地でも丈夫に育ってくれたジャガイモ。
たぶん男爵いもだったのだと思う。
ジャガイモ以外に食べ物はなかった。
命を綱でくれた貴重な食材であった。

中学生になって友達と学校帰りにファーストフード店に立ち寄る
ようになるまで、土曜のジャガイモ団子ランチは続いた。
たぶん別のメニューも作ってくれたんだと思う。
今となると記憶は多少おぼろげであるが。。

そして今は私が娘へと作るジャガイモ団子。
マッシュポテトやポテトサラダにして残った翌日のものを
団子状にして砂糖醤油ではなくたっぷりのバターと塩で味付けをする。
彼女もまた、「うん、おいしいね!」と言いながらいくつも頬張ってくれる。

いつの間にこんなに時間が経ってしまったのだろう。
私が作る側になるなんて。
おいしいね、と言われる側になっているなんて。

でもこうして命を繋いだ元気のもとの食事は続いている。
今度は塩バターではなく砂糖醤油のタレに挑戦してみようか。


#元気をもらったあの食事


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