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映画【夜明けのすべて】を観たら大切なことに気づいてしまった

◆結論◆
すごくいい映画。
”すごく感動した”とか”あそこのあの場面がすごくいい”
なんていうのではなく、あたりまえの日常に生きる主人公たち。
一生懸命とかではなく、あたりまえに過ごせる大切さがとても伝わる。
これは2000円出してもいいよ、本当に。

映画【夜明けのすべて】という映画を観てきた。
配信サービスではなく、映画館へ足を運んでの鑑賞だ。
すっごく観たかったわけではない。事情があって自宅にいることができないため、時間潰しのために映画でも観ようか、ということになったから、消去法で選ばれたこの作品を観ることにしたのだ。
しかしこの選択は正しく、そして「そんな選び方をしちゃってごめんなさい」という映画だった。

さて、私はセゾンキンキラゴールドカードを持っている。
このゴールドカードは特典に”映画がいつでも1000円”というものがある。
映画好きの私にとってはたまらないものだ。ただいつでも窓口でゴールドカードをちらつかせれば1000円で入場できる、というものではない。
あらかじめwebで申請をする必要があり、後日郵送で届いた紙の引き換え券を窓口で見せて購入する必要がある。
めんどくせーのよ。なのでweb申請して引換券が届いたのはいいけど、その先がめんどくさくって使用期限は6月末だということもあって放置していた。
そんなとき、管理会社からある知らせがやってきた。

「2月13日、断水があります。」

そう、本日我が家は断水なのだ。午前9時から午後5時まで水が出ない。
9:00~17:00。会社かよって感じだけど、
まあ作業している人にしてみれば仕事なんだからこの時間なんだろう。
しかしこの時間って”一日中”ってことじゃないか。自宅が活動拠点の私にとっては迷惑な話なんだけど、設備点検なのでいたしかたない。
ちなみにムスメも在宅ワーカーなのだけど、彼女は昼夜逆転クリエイターなので、日中水が止まろうがそれほどの不自由はないらしい。
私だけが不自由する自宅。

日中外に出るしかない私は映画でも見ようかと思ったのだが、
今映画はなんと2000円もするのだ。高い!映画って確か1300円くらいだった。前売りが100円安くて1200円だったっけ。記憶は曖昧だけど、そんなもんだ。それが1500円になり1600円になり、1800円になったときは本当に高い!(貧困すぎる語彙力)と思ったものだ。それが2000円だって?配信ばっかりで若者の映画館離れが懸念されるなんて聞いたことあるけど、いや2000円じゃおばさんだって離れるわよ。だから会員デーだのサンクスデーなどに合わせて行くようになる。でもそれが合わないときだってあるのよね。そんなにうまくいくもんじゃない。
しかし、待てよ。ここであの引換券の登場だ。
私にはキンキラゴールドカードで手に入れた引換券が、すでに1000円で購入していた券があるじゃないか。券だけ買っておいて映画は後から選ぶ、金額欄が空白の小切手のようだ(全然違う)。
というわけで、非常に長い前置きをしてしまったが、そんなこんなで映画鑑賞をすることになったのだった。

最初に結論から書いたが、
そう、この映画は予想をはるかに上回るステキな映画だった。
”すばらしい”とか”感動した”とかではなく、もっと地味な感じではあるんだけど、どう言えばいいのか考えたが”ステキ”という表現が私の中では一番スッキリする。

PMS(月経前症候群)とパニック障害に悩む2人の主人公。自分の病気はわかっている。向き合っていくしかない。でもどうしようもないときがある。だから苦しい。しかし、お互いを救いあえる、手を差し伸べることはできるのではないか。

毎度のざっくりすぎるあらすじ(あらすじにもなってないけど)。
でも本当にこれだけのことなの。
何か大きな出来事があるわけでもなく、淡々とした日常なの。
でも人生ってこの淡々とした日常の繰り返しでしょ。
それが苦しかったら、生きづらいと思う。
大きな試験の前とか、初めて何かをする、とか緊張がともなうシーンって
幾度かあるし、そのときは大変な思いをする。
お腹痛くなったり、吐き気がしたり、過呼吸気味になったり。
多くの人が経験することだと思う。
でもそれが毎月だったら。
ほんの些細なことがきっかけでそのたびにそうなったら。
淡々とした日常の繰り返しの中でこんなことがあったら、つらいよね。
でもそれがわかっているから、互いに助けあえることができる。
主人公の2人は、恋愛でもない、友情ともまた違う。支えあう、とも違う。
「救いあい」「手を差し伸べる」のだ。
この映画は、私に日常の大切さを教えてくれた。

大昔、「ガラスの仮面」という漫画でこんなシーンがあった。
天才的な演技力でアカデミー助演女優賞に輝いた北島マヤだったが、ある事件をきっかけに完全に芸能界から追放されてしまった。そんなマヤが高校の学園祭で一人芝居「女海賊ビアンカ」を上演する。その舞台は大好評で、再演まですることになる。そしてさらに新しい舞台をすることになったマヤは題材を探す。そして見つけた「通雨」というごく平凡な女子高生とその家族の話。興味を持ったマヤは協力をしてくれている友人にこの話をやりたいと告げる。友人は「こんな平凡な話、退屈じゃない?」というようなことを言う。しかしマヤはこう返した。
「それは私の演技がまずいということね」
結果、圧倒的なマヤの演技力でこの作品は大成功。演劇界への復帰にもつながる作品となった。

と、何が言いたいかっていうと、
日常なんてものは作品としては地味だし、退屈でつまらないというセオリーをひっくり返したマヤの言動は、そのままこの映画「夜明けのすべて」にも言えるんじゃないかと思ったのだ。もちろんPMSとパニック障害っていう題材はあるけど、でも監督が

「それは私の演出がまずいっていうことだな」

って覚悟でこの作品に挑んだのではないだろうか。
そしてその期待に応えたのが出演者の面々だ。
主役の2人もその他の演者も全て、だ。

私はこの作品が大好きだ。
多くの人に観てもらいたいと思った。
そうすればみんな日常がどれだけ大事なのかがきっとわかるし、
頑張ろうって気持ちになれると思うから。

この映画は2000円以上の価値がある。


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