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映画『マチネの終わりに』を観た素直な感想

結論
そもそもあの小説を2時間の映画にすることに無理があった
NHKあたりで4話でドラマ化するべき

小説『マチネの終わりに』公式サイト

この小説についての感想(ネタバレしてます)

この映画って、
「『マチネの終わりに』読んだんだけど、すごくよかったから映画にしよう。でも上映時間は2時間くらいだから、ここはこうしてああして。よしこれだ!」
みたいな感じで制作されてしまったのか。

公開が2019年なので数年前の作品。映画はどれも賛否両論あるが、この作品もご多分に漏れず賛否両論だった。その中で、主演の石田ゆり子が役に合っていない、というものが散見されたが、私はそうは思わなかった。
むしろ相手役の福山雅治のほうが合っていないように感じた。
彼自体はステキなのだが、どうしても「ガリレオシリーズ」の湯川学のイメージが強く、チラつく。キスシーンでは「湯川教授のくせに」というノイズが思わず発生してしまい、その後も付き纏ってしまった。これは私だけに起きた現象かもしれないが、別の、たとえば、そう。井浦新さんあたりに演じてほしかった。

小説と映画は違う。そう考えてみるのが一番なのだけれど、
そうだとしてもこの映画だけではわからないことが多すぎた。
かと言って、小説を読んだ前提でこの映画が作られたのかといえば、
そうではないだろう。
何が言いたいかというと、この映画は

大事なところが描かれていない
ダイジェスト版

なのだ。

例えば、初めて出会った夜、タクシーに乗ったときの彼女(洋子)の横顔を
主人公の男性(蒔野)は何度か思い返している。その表情に何かを感じたからだろう。
しかし映画ではタクシーに乗ったらすぐにタクシーの後ろ姿になっていた。

単に時間をあまり使えなかった理由もあるかもしれない。例えばマネージャーの早苗が、受け取った携帯電話に偽のメッセージを打ち込みはするものの、送信はせずに電車に乗る。しかし、悩んで結局は送ってしまった。数秒後に後悔したものの送信完了の画面を見て罪悪感に苛まれる。
しかし映画では、早苗がメッセージを打つシーンはなく、早苗の苦悩は多少は描かれているものの、実に短いものだった。

しかし、その後月日は流れ、恩師の葬儀に出席する蒔野は結婚をしている。その相手が早苗なのだが、なぜ結婚に至ったのかが、特別描かれていない。
これは映像化するのが難しかったからなのか、いや、恩師の言葉があっただろう、それは描いてほしかった。むしろ描くべき。早苗への愛と洋子への愛は違うのだから。

そして一番原作と異なって嫌だった場面。(個人的に)
小説では、洋子は、コンサートに来ないでほしいとにお願いする早苗の言葉で、2年前の偽りメールは彼女が送ったものだと知る。
そして「あなただったのね」と呟く。
その後夫へ告白をし、蒔野は呆然となるのだが、彼女には怒らずにただ洋子を心配した。
しかし映画では、早苗は真実を告白するために蒔野に嘘をついて、コンサート会場もある洋子の住むニューヨークにやってくるのだった。そして告白をし、コンサートに来てほしいと頭を下げる。
夫への告白もメールでしていて、その事実を知ったとき蒔野は怒りのようななんともいえない表情をするのだった。早苗が目の前にいるわけではないので、小説で感じた空気を感じることができなかった。
*小説と映画ではこの”コンサート”は別のもの。

これ本当にイヤだった。
全てを台無しに気がした。

ニューヨーク公演へ向かう夫を玄関先で見送るときのシーンも違和感がある
「聡史さん」ではなく「蒔野さん」と呼び、「好きにしていいから」と笑顔で言う。蒔野もそれが何を意味するのかわかった様子。
若干の硬さは残るものの吹っ切ったような妻の笑顔だったけど、このシーンは私は心に響かなかったし、不要だったようにも思う。でもこのことを描くことで二人の今後に期待させたかったのだろう。余計なお世話だ。

ラストはニューヨーク公演で客席に洋子を見つけた蒔野は、MCのときにそれとなくメッセージを言う。
そしてその後二人はセントラルパークでお互いを見つけ・・・

暗転 クレジットが流れて終了。

映画の最初にこんなシーンがある。
<現在>急ぐように走る洋子。立ち止まって石の台を見つめる。
<6年前>コンサート会場にゆったりと現れた洋子を出迎えた友人が言う。
「変わらないわね。やっぱり走らない」
「あわてたら幸せは逃げていくって言うでしょ」

「あわてたら幸せは逃げていくって言うでしょ」

これは小説にはなかったシーン。
あわてているから洋子は幸せを逃してしまうのか。
いやそんな単純なことではない、と思う。

過去は未来を変えられる。

散々な感想だけど、このオープニングは美しいと思った。

プライムビデオで配信中

肩透かしを喰らう覚悟でご覧あそばせ。




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