西粟倉で感じた新たな経済のはじまり
8月の末ごろ、友人の我堂さんがVUILDの視察で西粟倉村に行くというのでお供させてもらいました!
(一応、休みとって自腹です)
VUILDがやっているデジタルファブリケーションと林業に興味が前々からあったし、まちづくりの観点でも西粟倉村に興味があったので、これはいいタイミングだと思ったのでした。
現地では、VUILDのCOOで元森の学校の井上達哉さんにアテンドいただきました。本当に感謝です。
今でこそ、西粟倉村がローカルスタートアップの聖地のように言われるようになってますけど、井上さんは、はじまりからこれまでの変遷をその目で見てこられていて、話すこと、見ること、今後の街づくりに多くの示唆を得られた、密度の濃い時間でした。
大量生産、大量消費によって世の中がおかしくなってしまった。そこからの揺り戻しの動きがあちこちで起こっていて、その先端を西粟倉村に見た気がします。
最近、つくづく思うのがエリアブランディングが大事だということ。
地域のこれまでの歩みと今後の可能性を、現代の文脈を捉えて意味をもたせる、ストーリーを紡ぐことで、観光はもとより地域の発展の方向性も決めることができる。逆に、これがないと他の地域と差別化できず、施策の優先順位を決められず、没落していってしまうのではないかという危機感があります。
西粟倉は、「林業のまち」として国内で認知されているけど、「民間の視点での一点突破」がことの発端だったそうなんです。
確かに、役所や議会は、様々な地域資源を並列に扱い、どのステークホルダーも大事にしないといけないために、この手のブランディングは、得意ではないですよね。
民間側からの一点突破の視点
西粟倉では、ヒアリングの報告書がきっかけで「百年の森林構想」を宣言します。
それをメディアが取り上げ、既成事実化され、その後、行政が追認し林業に力を入れて産業が生まれるサポートを行い、この取り組みと方向性が確かなものになっていきました。
こうしたことで、1200人の村にいまでは、200人が移住し、仕事が生まれ、外貨を稼ぐ好循環が生み出されていきました。
すぐに真似できることではないけれども、民間側がリスクを取って切り開いていったことで、街が変えられるというのは、私たちにもなにかできるぞという勇気を与えてくれました。
庄内に関して言えば、色んな資源がありすぎて、ブランディングの観点でも散逸し過ぎている気がします。西粟倉からの学びを活かすならば、もっと絞ったブランディングを仕掛けていくことが鍵になりそうです。
小規模で成立する林業をつくる
井上さんは、智頭町で林業を営む大谷さんのもとに連れていってくれました。大谷さんは、先祖代々引き継いだ森やほかの方から委託を受けた森で、間伐や下草刈りをして管理し、高く売れる木をつくっているいわば森のファンドマネージャーの役割を担っている方でした。
これまでの林業は、木を切り出して出荷するだけで終わってしまいますが、それでは、付加価値がつけられません。
大谷さんは、これにミニ製材機と乾燥機+サウナ、Shopbot(木工CNCルーター)を活用することで、簡易的な製材や加工をして付加価値をつけて販売することに挑戦しています。行ったときには、ちょうど、乾燥機やサウナを置く土台づくりをしているところでした。
乾燥機+ミニサウナは、西粟倉でshopbotを使ってプロトタイプがつくられていました。
井上さんは、大谷さんの年収を倍増させる計画を立てて、仲間を集めてみんなが知恵やスキルを持ち寄り、次のスタンダードになる林業づくりに挑んでいました。
大量生産、大量消費で、海外から安い木材が入ってきて、林業が崩れてしまった。それでも、日本には、豊かな森林資源があり、それを活用することで、次の100年は豊かな日本を取り戻すことができるのかもしれない。
切れた輪をつなぎなおす取り組みに、新たな希望を感じました。
この世の仙郷 みたき園
また、同じ智頭町にある「里山料理 みたき園」というお食事処でも、心動かされました。
森の中に古民家が点在し、その中を川が流れるという自然にはありえないけど、森と一体化しているおとぎ話の中のような空間。
本物の古民家を森の中に移築し、川も人工的に引いたものだが、数十年の時が経ち、自然に溶け込み、自然と人工物が渾然一体となった心あらわれる景観が生み出されていました。
建物ですでに満足していたのですが、料理もまたすごかった。
そして、おばあちゃまが登場。
どれも、心から美味しく、体が浄化されるような気持ちになりました。
お食事のときに、女将さんがお料理の1品1品よりも更に手前の調味料から手作りしていることや、食材を山に取りに行っていることについてお話を聞かせてくれました。
そして、このみたき園についても、「1人の熱意があれば、無から有を生み出せるのよ」とおっしゃっていて、その言葉が強く心に残りました。
食事後、木陰の中を散歩しているときに、井上さんが、みたき園にまつわるお話を聞かせてくれました。
なんでも、かつて園主が融資を求めて金融機関に足を運んだそうです。
しかし、融資は降りず、それでも、何度も通うので、根負けした支店長が決裁して融資はついに実行されました。
そのときつくったのは、なんと滝でした。
しかも、崖の上から落差2,30mはあろうかという巨滝。
その名は「天空の滝」。
めっちゃぶっ飛んでる。普通だったら売り上げに直結しないし、融資は下りなさそう。それでも、やり遂げた熱意に感服いたしました。
女将さんの言葉も、納得というか、腑に落ちました。
いやはや、昔の人は、自分の役割はこれという今のような職業や肩書で限定することなく、自分自身がイメージする姿を頭と手で実現していったんだろうな。そんなパワーを感じました。
一日を通して、濃厚なインプットで、興奮も冷めやらぬ中、温泉でひとっ風呂浴びて、でかい桶で作られた水風呂につかってクールダウンしました。
温泉に併設されている食堂で、井上さんと我堂さん、VUILDでインターンしたのち西粟倉村に移住して大工として働く仲子さんの4人で食事を取りながら、今日の出来事を振り返りながら、色んな話をしました。
我堂さんは、トラリーマンの代表格で、ほかにも様々なトラリーマンたちが居て、彼らのように枠をはみ出す人をどう生み出せるんだろうかという話になりました。
その時に、井上さんが教えてくれたのが、ヨハン・ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」についてでした。
今の格調高いお祭りや儀礼も、始まったころは、単に面白そうだから始まったこともあったかもしれない。それが定着していった。
もっと面白がるところからはじめてもいいのではないかということでした。
まさに、YDの事業も課題解決というお題目を掲げながらも、真正面から課題にぶつかることではなく、私達自身が面白いと思える事業をつくり、結果的に課題を解決していっている。
そう考えると、◯◯せねばならぬ。という発想ではなく、直感に従い、面白いと思う方向に一点突破する。
その先に、地域の面白い未来が待っているのではないか。
そう感じた旅でした。
番外編
泊まらせていただいた軒下図書館が本当に素晴らしくて、次回もまた泊まらせていただきたいです。
オーガニックな朝食は、唯一無二。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?