マンガ雑誌の逆襲。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:電車の中でマンガ読んでる大人を発見、即、希少種に認定して表彰したくなった件。スマホで漫画を読むなんて無粋、マンガをバカにしている行為だという暴論。でも、まだまだアナログ文化は無限の可能性を秘めてるのに、デジタル化で十把一絡げになくなしてしまうのはバカと断罪するって。トップ画はhttps://qr1.jp/Pf8HOC
いい大人がマンガを読んでるかっこよさ
今日日曜の朝だったんだけれど、人に会う仕事があって山手線乗ったんだよ、そしたら僕の前の30代前半と思しき男性が、つり革に掴まりながら少年漫画雑誌を読んでたんだよ。
僕は本当に感動したんだ。
純粋にカッコいいと思った。
いい大人がマンガだよ、それも電車の中でさ。
紙の媒体を読んでいるってだけで、この人ただ者じゃないって思った。
それも、少年漫画というガラパゴス、とっくに衰退、死滅したと思ってた読み物を、楽しそうに繰っている。
普通は違うだろ。
マンが読むならスマホだろ。
日曜の朝だって混むだろう山手線に、そんな物持って乗り込んでくること自体、時代錯誤だろ。
それもさ、片手はつり革、もう一つの手でページを上手にめくっているんだ。
だけどさ、少年サンデーとかって、まだ分厚いじゃない、だから指でページを繰ろうとするんだけどうまく行かないんだよ、でも、そのぎこちなさも、いいなあ、って見てたんだ。
マンガ雑誌なんて重いし、分厚いし、そもそも一体どこで買うんだって疑問が出ちゃうほど、いま駅の売店も少ないし、コンビニにも分厚いから置いてない。
そのマンガ読みの男性、ちょっと「暴言王(笑)成田悠輔」風だったけれど、わざとオレに見せつけるために演出してたのかなあ、そんなわけないけど。
でも、デジタル時代へのレジスタンスとして、パフォーマンスしてたのかと思ってしまうくらい、旧石器時代の遺物が現代に蘇ったような、でも僕はそれを見て僕は違和感どころか、感動をおぼえたことは間違いないんだ。
新鮮なアナログしぐさ
読みにくそうだったよ。
マンガって結構大きいじゃない、タテも横もさ。
目と絵はある程度の距離がいる、でも、混んでる電車では紙に顔がくっつくことしばしばだ。
老眼じゃきついかな。
そもそも重く分厚いマンガを持ち歩こうっていうのが難儀なことだ、でもそれを広げて立ちながら読むのは、もっと大変に思える。
でも、その成田さん(笑)の様子は、とても楽しそうなんだ。
僕が分析するに、その理由はこうだ。
マンガにおけるデジタルvsアナログ総括
今、ほとんどの大人、いや子供もそうだが、マンガはスマホで読む時代だ。
しかし、紙で読むマンガと、スマホで読むマンガは、見せ方が違う。
いや、もっとはっきり言おう。
紙で読むマンガは、映画館で見る映画だ。
スマホで読むマンガは、TSUTAYAで借りてテレビで見る映画、もしくはスマホで有料ダウンロードで見る映画だ。
もちろん、スマホみたいなちっちゃい画面で楽しいか?なんていうつもりはない。
でも、本来の映画の魅力は、映画館のでっかいスクリーンに映じることにある。
スマホでは、映画館で感じる興奮は得られない。
同じように、もし、スマホで読むマンガが、単に紙のコンテをスマホ用に縮小しただけだったら、これと同じだ。
でも、まだスマホの漫画は、原盤を小さくしただけのものが多いように感じる。
しかし、最近はスマホ仕様のマンガは、物理的に一コマに絵とセリフを盛り込んで、ひとつずつ見せているようだ。
紙で見せるマンガと、スマホで読ませるマンガは、別物ということだ。
アナログを殺していいのか
昭和の紙のマンガのエキサイトメントは、なくなったのだ。
紙だからこそ、主人公の熱が直接読者に伝わったのだ。
次のコマが視野に入るからこそ、次のページの展開がチラと見えるからこそ、マンガは興奮と熱狂を呼ぶ悪魔的なエンタテイメントたり得たのだ。
最後のコマでこれまでの展開がひっくり返り、編集者が「ジョーが絶体絶命のピンチ、このまま悪の軍団になぶり殺しにされるのか、次号を待て!」などのアオリをいれるのは、日本の文化、伝統芸能とさえ言えた。
デジタル漫画がつまらないとは言わない。
しかし、何でもかんでもあの小さな画面しか目にはいらぬキカイじゃあ、しょせんスケールの大きな活劇を楽しめないって。
字が小さいのは致命的だ。
たんびに指ではさんで拡大するんじゃ、興ざめだって。
きょう、僕の眼の前で漫画を読んでいた「成田さん」は、何かとても楽しそうだったよ。
スマホでは、人はそんな楽しい風情にならないって。
紙雑誌の窮状
わかってるって、別にデータなんか見なくたって、紙の漫画が窮地に追いやられてることは。
調べるとやっぱそうだ。
全国出版協会・出版科学研究所によると、出版物の売り上げシェアに占める「紙雑誌」の割合は、14年の37.6%から21年には20.5%と大幅に減少してるって。
雑誌自体の売上が落ち込んでるんだよね、ちょっと古いけれど、1995年の雑誌市場規模(書籍は除く)は1兆5426億円だったが、2015年は7801億円と、この20年間で約半分になっている。
マンガも紙は減ってるよね、日本雑誌協会の直近データ(22年7~9月)によると、ジャンプ・マガジン・サンデーの中で年間平均で最も発行部数が多いのはジャンプの128万2500部で、三大少年漫画誌の中で唯一100万部を超えているけれども、前年同期の137万1818部と比較すると、9万部近くも落ちてる。
でも、僕らが子供時代の70年代なんて、ジャンプは年間平均500万部くらい、1995年には635万部も出たんだ。
1990年から2016年のジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンの平均発行部数の推移がこれだ。
今、漫画各誌が100万を切っているのは、もちろんマンガの人気云々、紙とデジタル云々だけじゃなくて、少子化の影響が大きい。
紙のマンガ復活論
僕は、今日の成田さん(笑)の楽しそうな姿が忘れられないんだ、目に焼きついちゃって。
キミも明日から少年マガジン、コンビニで買えよ!
このままじゃあ、紙の漫画がなくなっちゃうよ。
成田さんみたいな、デジタルに背を向けて「いいものは、いい!」って言える大人が増えないかな。
漫画出版社も考えろよ、もっと「元少年」のじいさん達に紙の漫画をまた買わせろよ。
「少年青春サンデー」とかの生まれ変わったネーミングで、昔ヒットしたオールディーズ的、スポ根とか、梶原一騎とか、ドラゴンボールとか載せたらどうなんだ。
こういうジジイの発想自体が論外なんだけどさ、昭和はよかったとかじゃなくて、「まだまだ儲かる、ポテンシャルのあるアナログ市場をむざむざ捨てるバカいるかよ」、って言いたいんだよ。
そして伝統的なマンガの見せ方っていうものも、なくなっていいの?と世の中に問いたい。
野呂 一郎
清和大学教授
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