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他人を刺す棘なのか、あるいは敏感過ぎる心の震えを示すのか、鴨居玲「私の話を聞いてくれ」に感じた現代。

■5度結婚した藤田嗣治

それは妻の父方の墓参に行ったついでの
偶然の出合いだった。

茨城県笠間市の笠間日動美術館に
足を延ばしてみたのだが、
思いもかけずそこで
「没後55年藤田嗣治展」が催されていた。

ギリギリで開催期間に間に合う。

私たちが鑑賞してすぐの12月14日、
同美術館では4年ぶりの
入場者1万人突破のニュースがあった通り、
“フジタ人気”は衰えを見せないが、
改めて藤田嗣治の年譜をたどるのも
興味深かった。

そこで藤田が5度結婚したことを知って
驚いたが、
フランス留学中に
179通の手紙や葉書を送った
最初の妻・登美子と、
31年間連れ添った
最後の妻・君代
という日本人女性二人に
思いを馳せた。

ただし、
絵画の方は、
その藤田嗣治をあっけなく凌いで、

鴨居玲という画家の迫力に
見入った。

■鴨居玲が見ていた現代

藤田を鑑賞する途中で見かけた
「鴨居玲の部屋」(2015年開設)で私は、
それこそ全く偶然に
鴨居の代表作「私の話を聞いてくれ
(1973〈昭和48〉年)」と出合った。

見出し画像は、この作品を
真似て描いたものだが、
https://www.t-artforum.net/2022_r04nendo/host/gallery/camoyrey/index.html
(山形県鶴岡市『鶴岡アートフォーラム』PR資料)

身の回りの空気に抗うかのような
この輪郭の鋭利さが示すのは、


言葉で他人を無礼に突き刺す棘か針か、
社会の圧力に過度に敏感な心の震えか。

51年前の作品に、
歪んだ現代社会を見た、
ようだった。


笠間日動美術館内の鴨居玲胸像。








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