ひとかけ、ひとかけ、一粒、一粒、噛みしめて味わい、飲みこんで、神事の如く我が命に届ける。
■病床を知らぬ男の病床もちろん食べ終わって「何が入ってた」と訊かれ
口にした食材を言えないなどという鈍感な対応は
なるべく避けるよう料理に向き合ってきたつもり
だったが、この20日ばかりは、それがより鋭敏に
研ぎ澄まされクローズアップされた感覚だった。
約3週前に新型コロナウイルス陽性と告げられた。
感染後は喉が痛く声も出ず薬も飲めなかったが、
それでも「命」なる言葉が大袈裟なのは承知だ。
恐らく命みなぎる元気な自分を追っていたのだ。
■命綱と思っていたスープ私はこの間