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コラム:四年ぶりのアメリカ国立公文書館訪問(ニューズ・レターNo.93、2022年11月号)

 今年の夏は、アメリカ国立公文書館(NARA)へ、2018年以来、4年ぶりに訪問した。戦後のソビエト文化の流入・受容が目下の研究テーマであるので、当初の計画ではロシアの公文書館へ行くはずであったが、ウクライナとの戦争でロシアへの渡航もままならぬ状況であったので研究予定を前倒ししての渡米であった。以下に、今回のNARA訪問で変化がみられた点について思いつくままに記してみたい。
 3年間にわたるコロナ禍は、NARA関係者においても深刻な影響を与えることになったようだった。公式には2021年8月から、NARAはアポ体制を原則として開館したが、デルタ株の上昇で月末には再び閉館、その後11月半ばになって開館したが、今度はオミクロン株の上昇によりクリスマス直前にまたもや閉館となっていた。
 2022年3月からNARAは再開して8月に至っていたが、その時点でも各リサーチルームはすべて予約制を維持しており、1テーブルに1名しか座ることができない状況であった。
 現在は向こう3カ月まで予約を取ることができるようになっているが、2022年当初のNARAの予約も、それぞれのリサーチルームの担当者とのメールで予約を取る方式から、Eventbriteのサイトからそれぞれのリサーチルームの予約を取るように移行している。
 事前予約のアポイント制が永遠でないことを祈りたいが、当面は続くようである。テキストルームの予約は、かなり前から取る必要があるといわれていたが、写真室、動画室、地図室などは直前でも予約が取れるようである。ちなみに、2階にあったアーキビストとのコンサルを行うための部屋は3階へ移動しているので、階を上下しての移動はそれなりに労力を要した。
 このほか、それまでのプラスチック製の写真入りのIDカードが、現在では写真なしのバーコード入りの紙のカードへ変更、1階のカフェテリアも開いていたが、コロナ禍以前とは同じではなく、カフェテリアのスタッフも食事の内容も限られていたので、食事の楽しみは半減したといえる。
 この2年間のコロナ禍で、NARAのシステムだけでなく、DC街中の中華街のお店も、グリーンベルトの定宿ホテルのシャトルバスも減便されるなど、あらゆるものが一変していた。
 コロナ禍という長いトンネルを抜けた後には、もはや以前のような日常ではないのだろうか。せめてもの救いは、DCで旧知のメリーランド大学の研究者、ニチマイ米国事務所の方々と再会できて旧交を温められたことだっただろうか。
(『Intelligence』購読会員ニューズ・レターNo.93)

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