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波乱だらけの初DELEスペイン語検定試験【後編】

前置きから、やたらと長くなったDELEの試験の話の続き。

続きに入る前に、DELEを初めて受験するにあたり、びっくりしたポイントをまず書いておこうと思う。DELEを初めて受けようと思って検索していたら、何かの拍子に間違えてここのnoteに辿り着いた人のために、少し役に立つかもしれない情報です。(多分)

DELEを初めて受ける人への豆知識

①扉を開けば、そこはスペイン。
セルヴァンテスの日本語で書かれたHPから試験の申し込みができるが、お金を支払う段階になったら、突然全てスペイン語表記に変わって焦る。
え、急にスペイン語!?、これで合ってるのかな、なんかよく分からんけど払ってしまえ!っていう不安を乗り越える勢いが必要。
あと、DELEの参考書が軒並み高すぎる!5000円くらいするんですけど。
貧乏受験者なので、単語は無料アプリで、模擬試験などはAmazonのkindleで800円くらいのやつを買った。全編スペイン語でビビるけど、試験もそうだから、慣れるしかない。(さっそく、次のA2を買った。準備の取り掛かりは早いがコツコツと長いスパンでは頑張れないので何ヶ月も眠らせる気がする。)

②受験票は1週間前に突然メールで届く。
試験って何時からなんだろうか。筆記試験は5/18であることは間違いないっぽいけど、口頭試験は5/18または5/19らしい。どっちなの?枚方会場ってどこ?関西外大ぽいけど・・・。そわそわしながら待っていた受験票だが、1週間前に突然メールで届いて、そこに全て書かれていた。こんなに細長い受験票ってあるのかというくらい長い。そして、スペイン語と日本語で書かれている。とにかく隅々まで読むのが大事(次に関連する)。

これをスラスラ読める人は、
A1レベルじゃないと思います。


③鉛筆の準備が必要。シャーペンはダメ。

マークシート式の試験と分かっていたが、まさかシャープペンシルがダメとは思っていなかった。受験票に小さく書かれていて驚く。
HBの鉛筆?持ってないよ、そんな昭和の文具。鉛筆を買うなんて30年以上ぶりかも。
仕事中に、とある神社に行く機会があったので、学業お守り的な鉛筆が売っているから買おうと思ったが、現金を持ち歩かない習性のため、Paypayもカードも使えないと言われて結局そこでは買えず、後で無印で買った。それと、鉛筆って、鉛筆削りが必要だし、持ち運ぶのに鉛筆キャップが必要なので、後日追加で購入した。おニューの鉛筆が長すぎて、それが入るペンケースがなくて困ったし、ボールペンも必要。消しゴムも要るから要注意。

④身分証明書と受験票の印刷も必要。
顔写真つきの身分証明書と、紙の受験票が要る。スペイン人の試験監督にチェックされたのだが、運転免許証には名前がアルファベットで書かれていないから、証明になるのだろうか・・・。受験票も、試験監督の持っているリストも、名前はアルファベット表記だったから、何を確認したのか謎だが、一応大丈夫だった。一瞬不安になるから、次からはパスポートを持っていこうと思う。

⑤試験会場は治外法権でスペイン。
DELEで関わるスタッフはみなスペイン語で説明するし、白板にもスペイン語で試験の流れが書かれている。すべてスペイン語で説明されるので、初めてだと非常に不安になる。この配られた紙は何?トイレに行けないってこと?え、試験開始をトレスミヌートス(3分)後ろにずらすの?あとシンコミヌートス(5分)?ほんで部屋に時計ないよ。
もちろん、試験の問題文もスペイン語。pruebaとかtareaとか当たり前のように使う。そのあたりは、先人の方々のブログやYoutubeで予習しておくといいかも。

⑥合否結果は2~3ヵ月後。合格証は約1年後。
これは先人の方々のブログで知った情報だが、合否が分かるまで3ヶ月くらいかかるらしく、今回の結果も8月くらいになりそう。次に大阪で受けられる試験が11月。受かっているか落ちているか分からないまま、私は次のレベルA2の勉強を始めることになる。忘れた頃に届く合格証に、ありがたみが感じにくい気がするけど、まあ、そんなこんなもすべて、スペインってことで。

そんなわけで、DELEの当日の続きに進む。

筆記試験までの待ち時間

11時に開店した大学内のイケてるレストランで、ランチを終えた私と友達のポン子さんは、強烈な眠気に襲われていた。とりあえず仮眠をとりたくて仕方なかった。特にポン子さんは芝生を求めていたので、大学構内を少し歩く。しかし、12時過ぎで暑すぎて、芝生で昼寝などとんでもない状況。結局、セブンイレブンで冷たい飲み物を買って(私はマンゴーパインスムージー、ポン子さんはアイスカフェラテ)喉を潤し、図書館に戻って仮眠もしくは勉強をすることにした。
私はとにかく眠くて仕方なかったので、ストールとリュックを枕代わりにして、上着を頭からかぶって、瞑想の音楽をイヤホンで聴きながらひとまず20分ほど爆睡。バチっと目が覚めて、残りの30分を作文対策に注いだ。
ちなみに私の作文対策は、チャットGPTを使って、「挨拶、近況報告、締めの言葉の順で、スペイン語で、日本に住む友達に旅先から送る手紙の例文を書いて」「スペイン語で書く手紙の締めの言葉を3つほど教えて」等をiPhoneで打ち込んで、いただいた答えを読んだり書いてみたりする方法である。
「妹、近くに住んでいる、事務の仕事、背が低い これを使って妹の説明をスペイン語で書いて」など、もう何もかも丸投げである。
でも結構便利で、使いこなせれば時短になるので、私的にはオススメ。
ポン子さんも隣の席で集中して勉強をしていたが、後半で眠くなってウトウトしていた。この人は、昨日の夜遅くに出張から帰ってきたばかりで、今朝は5時半起きだと言っていた。46歳と47歳になったばかりの私たちは、なかなか頑張っていると思う。何とか後半の筆記試験を、無事意識を保たせて切り抜けたいところである。

試験の20分前になったので、眠そうなポン子さんと共に試験会場に戻る。
私は、1階でトイレに行き、エレベーターで3階に着いてからまたトイレに行った。
私は日頃から頻尿なのだが、緊張のせいか、水分を取りすぎのせいか、今日は絶好調におしっこが出る。昨夜から体調が悪くて、グリーンダカラを朝から1リットル飲んで、お茶も飲み続けている。喉の調子も悪くて余計に喉が渇く。
これはまずいかも知れない。
緊張でお腹を下す人のことはよく聞くが、おしっこが近くなる人ってどのくらいいるのか知りたい。緊張というか、普通に水分の摂りすぎのせいとも言えるけど。
ふと張り紙を見ると、14時半からのはずの試験が、さりげなく15時からになっていた。
おや。
しれーっと試験時間を変更させてくるDELE。さすがである。それなら30分多く寝れたのに・・・と二人で少し愚痴った。

シヴァのシールを貼ったノートと、トルコのポーチにインドのニベア缶、ポン子さんからタイのお土産に貰った紫のヤードム。
試験前も鼻に突っ込んでスースー、キメた。


筆記試験開始

15分前になり、教室に入れることになった。
ポン子さんは自分の受験番号と口頭試験で並んでいた人数等から、「A1の受験者は多分23人やと思う」としきりに言っていて、私はそこはどうでもいいと思っていたのだが、ふと数えたら24人だった。
少し惜しいがほぼ当たり。彼女の読みはいい。そんなポン子さんの席は私の左後方であった。窓際に座る彼女の黄色いニットが、おしゃれすぎて眩しい。
試験の説明を、午前とは別の外国人男性がスペイン語で説明してくれる。
読解問題45分、リスニング25分、作文25分。それぞれの間が5分間のみ。
それより何より私はトイレが心配で仕方ない。この人数なら、女子トイレもそれほど並ばずに用を足せるか。スタートダッシュはしておいた方がいいか。5分あれば行けるはず。
そう考えつつ、とりあえず読解問題の試験開始の10分前に、もう一回トイレに走った。
そして、席に戻り、息を整えて試験開始。冷房が効きすぎていて寒かったのに、突然冷房が切られて暑くなっていった。窓は閉められていて、上着を脱いでも暑い。なんとも不快な気温だと思った。
読解問題は得意なので、分からない問題はなかったから、うっかりミスやマークシートの塗り間違いがなければ恐らく合格ラインはクリアしていると思う。一安心だ。45分経過し読解問題は終了。
さあトイレに行こう。
そして、5分の休憩があるのかと思いきや、解答用紙を集めたり、配ったりするのにやたらと時間がかかる。
受験番号は前列の左端から順番に右へと進み、2列目も左から右、3列目も左から右、4列目も同じ。若い外国人男性の試験監督が、一人で左から右へと歩いてまた左に戻って、と繰り返しながら解答用紙を配っていくので、要領が悪い。
ねぇ、トイレ行っていいかな?
あっという間に5分の休憩時間など消え、リスニングの試験開始が数分後ろに倒されたものの、トイレに行くチャンスもなく音声が流されてしまい、リスニングの試験が始まった。
次の5分しかトイレチャンスはない。
気持ちを切り替えて、うっすらとある尿意を閉じ込めて集中した。
リスニングは、最後の問題で集中力が途切れて聞きそびれてしまった箇所があったが、それなりに解けた気はする。
それよりも尿意である。
解答用紙を、先ほどと同じように左から右へとカニのように動いて回収し始める試験監督を目で追いかけ、私のところに来たときに、「トイレに行ってもいいですか?」と小声でスペイン語で聞いた。
すると、「時間がないよ、すぐに作文の試験を始めるよ。すぐ!すぐやで!」といい顔をしない。
しかし、もう私は作文の時間が始まろうと構わないという覚悟で、私は「分かった!」と言って、「すぐにトイレに行って戻ってくるから!」と部屋を飛び出してトイレまでダッシュした。

ふう。

他の誰も女子トイレに来なかった。みんなの膀胱が羨ましい。
さっさとすまして、安堵する暇もなくダッシュで戻る途中に、別の試験監督の外国人とぶつかりそうになり、「ごめん!」と謝ったのだが、とっさにスペイン語が出た自分に感心した。

そして、教室に戻り、試験監督に分からないように窓際のポン子さんに両手でグーサインを送り、着席した。しばらく息が上がっていたが、試験開始には余裕で間に合いセーフ。
作文の試験が始まった。
作文は鉛筆ではなくボールペンで書かないといけないから、要注意である。
2問のうち2問ともが難しく、時間も足りなくて、下書きもせず2問目はそのままボールペンで走り書きをした。
40語以内で書くところを43語使ってしまったがまあいいや。埋めたらある程度点数をもらえるだろう、と勢いで書いて、試験が終了した。
17時になろうとしていた。

スペイン料理で打ち上げ

なにやら前の席の大学生と楽しく話していたポン子さんと共に、教室を出た。
それはそうと、ポン子さんのコミュ力には驚かされる。口頭試験の時に前にいた大学生の男の子が「ここが試験に出るって先生が教えてくれたんです」って言ってただの、筆記試験後に「大丈夫ですよ、祈りましょう!」と前の席の女子に励まされただの。何なんだろうこの人は。すごいと思う。ただ、口頭試験の堅そうな面接官の女性に至っては、残念ながらコミュ力が発揮されなかったそうで、話が弾まなかったことを落ち込んでいた。でも、世の中をそうやって渡っていける力があることも、かなりの武器だと思う。言葉も年齢の壁も簡単に超えられるから、やはり彼女は最強である。

セルベッサコンリモを飲んだら、スペインにいる気がする。魔法のドリンク。

1時間かけて大阪市内に戻り、スペイン料理屋で二人で問題を振り返った。作文試験の中の、「アカデミーの演劇クラスへ申し込みの手紙を書く」という問題について、私は理由を書く欄に、「女優を目指しているから、演劇クラスに申し込みたい」と書きたかったのに、女優というスペイン語が分からなくて書けず、「映画をよく見ているし、映画に関わる仕事がしたい」と書いた。ポン子さんは「映画が好きだから」と書いたらしい。そこでふと、仕事にしたいという動機で演劇クラスの申し込むべきじゃなかったかも、と思った。純粋に「映画が好きだから」という理由で申し込むべきだったかも。私がアカデミー側なら、仕事につなげるための人より、映画を愛している人を採用したいと思う。でももし、女優になりたいという強い気持ちをアピールできていれば…、とかなんとか。いやそんなことはどうでもいいのである。
作文の試験はスペイン語でちゃんと文章が書けるかどうかを見る問題であり、あくまで出題の設定なだけで、理由なんて何でもいいわけだが、それでも「何となくそういうことを考えさせられたよ」という話をしたら、ポン子さんは「DELEって深いな」と言って笑っていた。
あと、これはスペインの道を900km歩いた私が勝手に思うことだが、DELEのA1の試験は、スペインで生活することに根ざした出題傾向な気がする。カミーノでスペインの田舎町を歩いているときに、よく見かけたのが「家を売ります」「家を貸します」という看板。模擬試験や過去問、そして今回の問題にも出たのだが、スペインの地名とレストランの問題がよく出るし、貸家や賃貸関連、仕事を探している人や求人票関連の出題も多い。スペインの失業率の多さなどの社会情勢も踏まえて、問題が作られているのかなと思ったりした。そして、「ボカディージョ」という単語もしょっちゅう問題に出るし、リスニングの会話文にも「バーレ、バーレ」が飛び交っている。どう考えてもスペインの生活なのである。
スペイン料理の店で、店員のスペイン人女性とスペイン語で少しお喋りをして、今日のてんやわんやな一日を振り返り、スペインにいるてんやわんやさんが異国でいかに頑張っているかを痛感し、エールを送りながら、私たちも頑張ろうと再確認し、美味しい料理を食べて、バスクチーズケーキを食べて仕上げた。

お店のトイレにバルセロナ

帰り道に、私は緊張したら余計なことをペラペラと喋るところがあること、そしてそれが口頭試験でたまたま上手くいったかも知れないことを話し、ポン子さんは全然緊張しなかったけど、なぜか話が弾まなかったと悔やんでいて、面白いなあと思った。

私は、グアテマラでの1ヶ月間の、毎日アウラ先生と向き合って話をする時間が、とても大きかったと思っている。
私の話を辛抱強く興味を持って聞いてくれ、「それはどんなだったの?」「どうして?」「もっと他には?」「その時はどう思ったの?」と、それはそれは強くしつこく聞いてきた。伝えることを諦めてはいけないって思える人だった。私にそういう人はあまりいない。私はごまかしたり、自分の中に秘めたり蓋したりしがちなんだけど、スペイン語で話そうとするとき、そういうことを飛び越えて「伝えたい」という気持ちが勝つ。英語でもそうだけど、語学の勉強は私にとって、そういう意味が大きいのかもしれない。
まだまだ全然話せなくて語彙も少なくて、言える表現が少ないからこそ、シンプルに伝わる言い方を探したりする方法をとるから、私はスペイン語を勉強しているようで、コミュニケーションを学んでいると思う。
自分の中に伝えたい考えや思いがないと話が続かないし、伝えたい相手がいるからこそ成立する。結局言語はツールに過ぎないけど、ツールを使いこなせるようになれば楽しいし、もうしばらくいけるところまで進んでみたい。

30年前、一緒の高校で毎日毎日飽きもせず喋って笑い転げて、毎日のように自転車を二人乗りして帰っていた相手と、並んで大阪の夜の街を歩く。放課後や夏休みに、並んで嫌々補習を受けていた2人が、今、誰に頼まれるわけでもないというのに、自発的にスペイン語を学んでいるという人生の面白さをかみ締め、感謝しつつ、眠気と戦いながらそれぞれの家に帰った。
ようやく本日、私の初のDELEスペイン語検定が終了。
次に受けようと思うA2は、私の苦手な点過去、線過去も出題されるので難しくなるし、次はもっと勉強して頑張ろうと思う自分に対して、夜だけど、とても晴れやかな気分であった。

お疲れ様でした、我々。




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