はまざ

街を歩いていて、また、急にニュースが目に飛び込んできて、「あれはあの時の私だ」と思う瞬…

はまざ

街を歩いていて、また、急にニュースが目に飛び込んできて、「あれはあの時の私だ」と思う瞬間がある。その時の私にはわからなかったこと、見えなかったことの数々が今ならわかる。あの時の自分やそれを思い出させてくれた会話や風景に向けて書いていきたい。「私だ」と思う次の人のために。

最近の記事

ゴードンさまさま

奥さんが2人目の妊娠で大変だ、休ませてあげたいとのことで、長男が子ども(孫)を連れて7か月ぶりにうちにやってきた。 2歳そこそこの子どもだ。 半年間のこころとからだの成長は驚かんばかりだろう。 しかもこれからちょくちょく来るかもしれないと聞き、前の晩はぬいぐるみに布団掃除機をかけてきれいにし、喜ぶかもしれない絵本をチョイスする。 そして、そうそうあれどこにあったけ、とナイロン製の赤い鞄を探した。 10年ほど前にこっちに引越しした時は見てなかったから捨ててしまったかも。 そう思

    • 10年前の私に出合う

      アルバムの中に10年前の古い写真を探して「あの頃のこと」を思い出そうとするのはよくあることだ。 そうでなくとも、10年前の日記や手帳などを見返せば「あの頃」に思いを馳せることは容易だ。 今日の私は、けれど、不用意に10年前の自分を開いてしまった。 読書ノートだ。 と言って、もともと私が探していたのは読んだ日と本のタイトルを書きつけただけのプアなもの。 …だったはずだった。 ところが引き出しの奥から無造作にそれを引っ張り出すと、バサッと落ちたものがある。 別の手帳から切り取

      • 門出

        今日は勤務先の学位授与式だった。 今年の卒業生は新型コロナウィルス感染症の拡大で入構制限があり、大学一年次をオンライン授業で乗り切った学生たちだ。 今でも思い出すのは4月の授業が始まったその日にやってきた女子学生二人組。 二年生になったばかりの二人は、その日の授業で初めて直に会ったと嬉しそうに教えてくれた。 そして二人ともずっと数学図書室に来たかったのだという。 一人は留学生。 「あなたの名前ってこう書くのね」「そうだよ」 そんな会話もなんだか初々しかったっけ。

        • 一生に一度きりの大切な出会い

          以前、厚木市に住んでいた。 当時、厚木市に本社を置く神奈中ハイヤーというタクシー会社があった。 先日の雪の日、神奈中ハイヤーの運転手の方のことを思い出した。 1994年2月のことだから、本当にちょうど30年前のことになる。 私と長女(3歳半)はその日、伊勢原の総合病院から当時住んでいた厚木市の自宅までタクシーを利用した。 彼女はその前年末に退院し、最初の診察だった。 その時はもうすでにちらちらと雪が舞っていたか。 車の中での運転手の方との具体的な会話は覚えていないが、病院帰

        ゴードンさまさま

          そのうち自分宛てに書いてみようか

          「請求書在中」と印の押された封筒を手にして、見慣れない切手に目が留まった。 こんなカラフルな切手は今まで見たことがなかった。 職場に来るこうした事務的な封筒にはたいてい「料金別納」だの「料金後納」だのと書かれていて、切手が貼られているものにはそうそうお目にかかれなくなっている。 思えば私用ではがきも手紙も書かなくなって久しい。 年賀はがきすらもう終わりにしたくて、来た人にだけ返しているありさまだ。 だからたまに私製はがきに切手を貼る必要があるときはいつもネットで調べ

          そのうち自分宛てに書いてみようか

          ご利益とは

          今年もまた、近所の学問の神様を祀る神社に初詣に行った。 三が日を過ぎたこともあり、その日の参拝客は少なめだった。 何年か前、末っ子の大学受験の時、その神社の近くに住んでいた長女が彼のためにお守りをもらってきた。 それを見て思わず夫と私は顔を見合わせる。 長女には悪いが、そこの神社はそれまでちっとも願い事を叶えてくれたことがなかったのだ。 ウン十年前、私は何度も(何年も浪人してたからねっ)そこにお参りし、祈祷までやってもらったのに何回も撃沈。 ついに希望していた大学には進め

          ご利益とは

          「よかったね」ではなく「やったー」

          今の職場の採用面接のとき、「5年までは更新しますが延長はしません」と繰り返し言われた。 今年は5年目だった。 最後の年だ。 そのつもりで有給休暇もビシバシ消化し、長く利用してくれているなじみの学生やよく来る業者にはそんな話もしていた。 ところが夏期休暇目前に契約延長の打診があり、偉いかたがたの面接を経て、来年以降も(定年まで)働けることになった。 曰く、初めての試みらしい。 大変ありがたいことだ。 力を尽くしてくださった、関係の先生方にも感謝の気持ちでいっぱいだ。 正式に

          「よかったね」ではなく「やったー」

          パスケースのヒヤヒヤ話~結局私の「間が抜けていた」だけの話なんだが~

          昨日のことだ。 最近、朝の通勤時に、歩道の端を自転車で猛スピードでこっちに向かって走ってくる女がいる。 で、すれ違いざまに私に暴言を吐くのだ。 要するに私も端のほうを歩いているのが気に入らないらしい。 でも、隣の車道には自転車用の道路があり、ほかの自転車は皆そこを走っているのだが。 とにかく、その女は私に毎回「端を歩くな、バカ」と罵声を浴びせるのである。 それだもんで、ナーバスになっていて、ここ数日、朝からその女のことで頭がいっぱい。 昨日は在宅勤務の夫に駅まで付き添って

          パスケースのヒヤヒヤ話~結局私の「間が抜けていた」だけの話なんだが~

          職場でとんぼを見つけたら

          私の職場は地下1階にある。 廊下にあるドアを開けて地下に続く階段を降りる。 その日の朝も同じように降りていたら、踊り場の窓まわりに違和感。 とんぼだ。 窓を開けているのは見たことないから、誰かが1階の扉を開けて入ってきたとき、とんぼも一緒に入ってきたんだろう。 かわいそうだが、手が届かないとそのままにしておいた。 その日1日その場所にいた。 次の日の朝、出勤時にはいなかった。 出られるとは思っていなかったから、死んでしまったのだろうとぼんやりと思った。 けれど、そのあと

          職場でとんぼを見つけたら

          30日間続けてみたら

          そもそも何を言おうとしての導入だったかは、忘れてしまった。 今から10年ほど前、高2だった次男の保護者会で進路担当の先生が話し始めた。 「最近、30日間続けたら人生が変わるという本を読んで、ほんとかな、と思って、30日間、毎朝ピーナッツを食べました。そしたら、太りました」 学校の先生の話は自分が教わった先生のそれも、子どもの先生のそれもあまり覚えていない。 覚えていたとしても断片的なもの。 けれどその、太ったという話は印象的で、ずっと忘れられなかった。 それで、思いついて、

          30日間続けてみたら

          おもちゃをめぐる話

          子ども3人が幼いころ、そういえば、おもちゃ売り場に売っているようなものはほとんど買わなかった。 今となってはもう忘れてしまったが、一度、テレビで見たみんなで楽しめそうなものを買ったことがある。 けれど、すぐ壊れてしまった。 子どもたちがとても悲しそうな顔をしていたことだけは今でも忘れられない。 それで子どもたちもほしいとは言わなくなり、私たち親もおもちゃ売り場に足を運ぶことすらやめてしまった。 まだ次男も生まれてない頃のこと。 夫の母から長男に送られた戦隊シリーズの武器は、

          おもちゃをめぐる話

          とりとめのない話

          土曜日、図書館から帰る道で女子高生二人組とすれ違う。 制服の胸に黄緑色のプレートが。 よく見えなかったけど、「外出許可」と書いてあったような。 時間は9時半。 普通なら授業を受けている時間だ。 だから「私たちは学校をさぼっているわけではありません」と皆に示す証なのかもしれない。 そう言えば娘の中高時代、先生方が時々仰っていた。 「よく電話がかかってくる」と。 制服姿を見かけた方が心配して電話をかけてくださるそうだ。 娘は中学受験の時に3つの学校のうちどこを受けるか、迷っ

          とりとめのない話

          OHISAMA near me

          ここ数年、お日様の写真ばっかり撮っている。 この OHISAMA near me ⭐️ おひさマニアめっ

          OHISAMA near me

          消費するだけでは、

          「来年3月で今の職場の契約が終わったら、もう仕事をするのをやめる」 昨日、次男にもそんな話をした。 「そのあとはもう自分の好きにする」 そんなふうに言うと次男が 「何するの」 と聞いてきた。 「うーん、考え中」 とお茶を濁す。 「漫画の編集者とかどう?」 確かに最近、私、まんがばかり読んでるからなぁ。 彼がそう思うのも無理ないか。 「まぁ、ひとり出版社の本とか読んでみたことはあるけどね」 ごにょごにょ言うと、急に彼が真顔になる。 「お母さん、わかってるとは思うけどね

          消費するだけでは、

          最後くらいは

          そのとき、冗談じゃないと思った。 そのとき、と言うのは、朝、出勤途中の最寄り駅前の大きな交差点の信号待ちをしていたとき。 渡れば駅と言うところで、夫が言ったのだ。 「暇になるよ。何するか考えとかないとね」 夫は運動不足になるからと言って、自分が在宅勤務の時はこうして、毎朝出勤する私についてくる。 そして、信号が赤で立ち止まった時、私に聞いてきたのだ。 「今の職場あと何年?」 「来年の3月で終わり、前も言ったと思うけど、そのあとはもう勤めに出ることはしない。今の職場がすご

          最後くらいは

          「明日」じゃなくても

          その日の私は滅多に着ることのない母の形見のコートを着ていた。 ちょうど冬物のコートをしまい込んだばかりで、その日の気候に合いそうなのがそのコートしかなかったのだ。 滅多に着なかったのは、そのコートの色と形のせい。 明るい水色で、デザインも私よりもっと年齢の下の人向けのように見えたから。 終業の鐘が鳴り、帰り支度をした。 図書室のある建物を出たところで、向こうからやってくる女子学生に気がついた。 その前から遠目にも妙に私のほうを見ているように思ったので、「若い人から見ると、

          「明日」じゃなくても