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Twitterじゃ書けない文量と熱量の映画・映像作品についての感想や自分なりの考察を書く場所に。映画から着想やテーマを得た短編小説も書くと思います。ゆっくりやって流麗な文字をサッと書ける日を目指してコツコツ思うがままに書きたいを日々練習中。小説家を夢想してゆっくりとがんばる

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「愛がなんだ!ってんだコノヤロウ!!!」プロローグ&第一話【長編小説】

・プロローグ  SNSでバズってるカップルの痴話喧嘩動画を、カフェのテラス席に頬杖ついて、クリームとソース盛り盛りのフロートの山に刺さったストローに口をつけて、彼女はボンヤリ眺めてる。すっごい剣幕で罵詈雑言捲し立てて彼氏を引っ張たくのかな? って感じにゆっくり近づくとお互い渾身の力で抱きしめ合う。ベタだけどつい見ちゃう系のネットにありふれた展開。  彼女はそんな動画を見ながら黄昏気味に、こんな感じの激しい恋愛したいな……。なんてぼやくから、俺は「ないない。そんな言い合い生涯

    • ヴィンテージ:11

      「絵描かないの」 「描かないけど」 「ここじゃ描きにくいとか」 「そんなんじゃないよ。家で描く気にならないだけ」 「そっか」 小窓から街路を見てボンヤリ人の流れを追っている。飛香がそっけなさそうに俺ん家で黄昏れてるのにも慣れてきた。彼女は何食わぬ顔でここから学校へ戻り絵の続きを描く日々を送っていた。 「お茶でも飲む?」 「今はいらない。というか、お昼食べたら?昨日焼きそば買っといたから」 「お前食わないだろ?」 「うん。お腹へってないし」 「なら作らないから。生麺一食余らせる

      • ヴィンテージ:10

        池袋北口の西武デパート出入り口近くのたまり場で10分くらい待ってるとモモカが戻ってきた。手には札束が親指で半分に折り畳まれ握られてる。 「ごめん。待たせた」 「全然待ってない。で、次はどこ?」 「今日はこれで終わりかな。さっきミヤギから連絡あってもういいって」 「そっか」 西武デパートから地下を通って山手線で渋谷を目指すとミヤギのもう一つの家を目指す。道玄坂の路地のボロっちい雑居ビルの3階。 「ただいま。トラブルなかったよ」 「おお、おかえり。あんがと」 モモカは札束をミヤギ

        • ヴィンテージ:9

          「ところでさ」 「いきなり脱線して急に何よ?」 「今、飛香が家に来てんだ」 「来てるって? 遊びに? そんな柄じゃないじゃんあの子」 「違う。俺んとこ住んでんの」  4Hで細やかに描いていた陰影を刻む為のサッサッという一定のリズムがその言葉を聞いた瞬間やんだ。 「は!? 一緒に暮らしてる? 何言ってんの?」 「うるせえよ。周りに聞かれたらアレなんだから静かにしてくれって」 「ちょっ。それは、それは、寝食共にするってやつでしょ」 「そうだけど、ぜったいにお前が想像してるよう

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        「愛がなんだ!ってんだコノヤロウ!!!」プロローグ&第一話【長編小説】

          ヴィンテージ:8

           桐摛はアパートの一室で灯りも点けず虚な眼をして板張りの布に筆を走らせていた。 油絵 パレットの面積全体を目一杯に使ってあらゆる色々を白い布に塗りたくっていく。 彼女の周囲には同じ大きさの描き終わったのであろう、色が塗りたくられた板張りの四角が床にばら撒かれている。 コンクリート打ちっぱなしの彼女のギャラリーはそんなもので埋め尽くされている。絵ともいえぬ黒い塊の破片が光に反射して艶めくように色があるようにないような何かが其処彼処に。 彼女は隣に立て掛けていた絵が渇い

          ヴィンテージ:8

          ヴィンテージ:7

          たぶん吐息。横開きのドアの向こうからする音。私は食器の片付けや洗い物をして聴かないように努めていた。でも、時折聴こえる‘音’は心臓をソワソワさせる。何か言ってるのも聴こえる。あのこはだめ。その分2回するから。妹なんだから大切にしたいの。その間にもフッフッと息づかいが聴こえる。荒っぽいその音のせいでワタシは艶がかった白いパン皿を何度も何度もハンドルを回すみたいに洗っていた。ボンヤリと理性がぶつかりながらゆっくり片付けを済ませていると、扉がスーっと開き、モモカが顔だけ出していた。

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          ヴィンテージ:6

          「ここは…もっと翳入れた方が良くなる。後はアーケード奥の人物まで仔細に書き過ぎだ、わざとらしくなる。記憶や写真に頼ってムリしなくていい。観てもらいたいモノ、伝えたいモノをカタチにする様に描け。奥はそう見える様に、手前は感じ取れる様に」  早坂が清原の絵に口出ししてるの初めて見た。俺は2メートルくらい背後からやり取りをボンヤリ眺めていた。 「奥の…コイツは丁寧に描きたい。コイツはこの後に手前の男に殴り掛かるの。だから、目線は男を追ってる。手前の男はそれに気づかず女の肩に手を掛け

          ヴィンテージ:6

          ヴィンテージ:5

           リッコとモモカは、はしゃぎながら互いの髪をバスタオルでくしゃくしゃっと拭き合っている。  朝日がちょうどいい具合にレースカーテンの隙間から彼女達を照らす。 「おい! オマエら下着ぐらいつけてやれよ!近所から変な目で見られるんのはごめんだからな!」  すえた匂いがこびり付いた服の山と、生乾きの洗濯物を部屋の端に払う様に投げ分けながら、手間のかかるペットの粗相を呆れる主人の様な声色で二人を叱りつけた。 「見えねーって。まぁ見えたって減るもんじゃないんだから。だよねぇリッコ」 「

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          ヴィンテージ:4

          「ハルくんそろそろ上がる時間じゃない?」 「レジ締めしたら上がります」  ケンジさんはヤマトの集配の荷物の整理をしながら声をかけてくれた。俺は左手で札束を挟み込み右手親指と人差し指でそれを弾いて、ボンヤリとソレを眺めながら枚数を数えて返事した。  一枚くらいくすねてもバレないんじゃないかとか下らないこと考えながら、価値があるとされてるオッサンの顔をパチンと弾いて売り上げを計算してレジに打ち込む。ウチも全自動レジに代わったらこんなアナログな事しなくて済むんだろうなとか、それなら

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          ヴィンテージ:3

          「そんでそっから話してないの?」 「そう」  茉理は薄目で俺を睨んだ。 「そんなんで飛香と上手くいくわけないじゃん。彼女人見知りなんだから」 「上手くやりたいとかって訳じゃないから困ってる」  イーゼルに両手で凭れ掛かり、下を向いて顔を隠しながら言った。 「アイツの絵。興味あるんだよ。なんであんなの描いてんのか。って聞きたいの」 「教えてくれるわけないじゃん」 「だから、困ってんだろって。話しにくいじゃんあいつって」 「でも、そこがいいから話しかけたいんでしょ」  キャンバス

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          ヴィンテージ:2

           ゴミみたいに地べたに蹲ってたまに過ぎるインバウンド旅行者の群を見ては視線が合わない様にまた薄汚れたアスファルトに視線を落とす。死ねばいい。そう思ってるのは私だけど過ぎる何人かはそんな感情で視線を送ってるんだろう。憐れみも何割か。そうやって何時間かヒマを潰していると前をモモカが通り過ぎたのが見えた。偶々。私は吸い寄せられ視線と一緒に彼女の背を追いかけた。 「ももか」 「ん? ああなんだリッコか」 「あんさ」 「もしかして泊まるとこないの?」 「うん」  モモカはふっと軽く溜息

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          ヴィンテージ:1

           廊下の隅。職員出入り口の近くで彼女はデッサンをしていた。俺は何気なく声をかけた。 「こんなとこで何してんの」  彼女は一言。 「デッサン」  そう答えた。  イーゼルには横40センチ縦は1メートルろどのキャンバスを乗せていて、彼女は職員通用口のガラス越しに見える四角に切り取られた景色を見ながら、都会の喧騒の中に映るささやかな混沌を描いていた。 「何でそんなん書いてんの」 「別に」 「郊外の学校の庭と道路見て、渋谷の電柱に寄りかかって吐いてるガキ描くやつなんていないだろ。ふつ

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          宮沢賢治のことはわからないけれど、たぶん自分はそんな風に生きられない。けど、いいのかも。

          あまつゆとてちてけんじや 雨ニモマケズ イーハトーブ そんな直線的に生の呪縛を受け止めることはできない。でも、いいじゃんとも思ってる。 無理して自己犠牲と創作の多重螺旋構造を紡がなくても、表層的な機微なんて山の様にあるのだから。 名前だけ知ってる文豪とかさ。いっぱいいるし、んなもんでやってけるんだよ人生の闇雲なんて。 でも、不誠実の風雨に打たれ一点を観測しながら流れゆく星々に己を重ね綺麗であり所詮点でしかないと肩肘ついて涙ぐむわたしにわたしはなりたいと願う。純朴だけではフ

          宮沢賢治のことはわからないけれど、たぶん自分はそんな風に生きられない。けど、いいのかも。

          『ふと猫さんが通る』 五話。 猫も杓子もなんとやら。

          「俺の目を見て言えるか?」 「言える」 「ちゃんと見ろよ」 「見てるわ」 「そうじゃない。心の眼で見ろっていってんだよ」 「そういうのがムカつくんだって」 「どうでもいい。俺のアイス食った? ってさっき聞いた答えを俺の目を見て答えろって言ってるだけだから」 「それがめんどいんだよ」 「だから、こっち見ろって」 「うるさっ」 「ってことは食ったな。間違いなく食ったな。ハーゲンダッツ。抹茶。マカダミアナッツ。レーズン。お前はどれ食べた?」  テーブルの向かいに座る彼女を睨みつけ

          『ふと猫さんが通る』 五話。 猫も杓子もなんとやら。

          岨手由貴子『あのこは貴族』“あのこ”とは一体誰の事なんだろう【映画感想文】

          原作は未読。けれど、素晴らしいんだろう。 ちょっとした文を書く為に2000〜2010年代の恋愛映画を観ていた時期があったのだけれど、どの映画も隔絶されながらも衝突して恋愛とは如何なる物か描いていた。でも、収まるのは決まって同じ類の人物。閉じた自分を掬うのは勇気を持って手を差し伸べてくれる人。似ている様で勇気がある人だったりする。ロミオとジュリエットの様な命懸けの覚悟と絶望や、花より男子の様な飛び抜けた隔世の無垢な愛嬌で壁を飛び越える話でもない。平凡な世でどうやって恋愛するか?

          岨手由貴子『あのこは貴族』“あのこ”とは一体誰の事なんだろう【映画感想文】

          『ふと猫さんが通る』四話。

           ハッハッハッハッ。息を吐き切って酸素吸入度を上げる。リズムは一定。とにかく駆ける。けれど、我を失ってはいけない。  思えば来る日も走り続けた。畦道。何も無い道。何となくそれとなく自己ベストを目指して走る。青々とした田園。遮蔽されることなく降り注ぐ陽光。光を浴びて我を忘れて走った。ただただ。ひたすらに。頭はやられてしんどくなった。その度にその日を思い描く。昨年は入賞もままならなかった。悔しさ。今年は更に暑くなるだろう。アスファルトが熱気でゆらめくのが目に写る。心地いい程の地

          『ふと猫さんが通る』四話。