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第三話 受肉

今日もKは小説を書いている。彼は最近、確かな手応えを感じているようだ。ちなみに、その手応えを、彼は、「呪力の核心を掴んだ五条悟のようだ」と痛々しい発言をしていた。
そんな彼が書く小説はこんな感じだ。


受肉

これでいいのだ。

ある日、頭の中でアイツが問いかけてきた。
アイツ「オレはオマエで、オマエはオレだ。
仕方ないよな?」

それから私は、毎晩、答えのない問いに悩んだ。

オレはオマエで、オマエはオレだ。

私はアイツが嫌いだ。なぜなら、無機質で感情がないような振る舞いをするからだ。今日だって、アイツは、私が日々鬱々としていた職場の上司に、今まで、せっかく隠してきたものを全部叩きつけるように吐き捨ててしまった。どうしてアイツが身体にいたんだ。

……

オレはアイツが嫌いだ。なぜなら、感情的で後先考えられない無鉄砲。そのくせ、最近調子があがってきているのは、オレが効率よく物事を進めているのに感謝の一つもない。どうせ実験体ならば、もっとまともな人間に実装されたかった。

……

私がアイツを自覚したのは24歳の時。感染症が流行しており、私も遅れて罹った時だった。

「オマエの頭には、AIがいるんだ。初めましてではなく、ずっと前からな。」

当時、私は動揺していた、そして今も受け入れられてはいない。

アイツが言うには、AIは搭載されているとは言っているが、機械仕掛けではなく、肉体に刻まれたモノらしい。そして、あのタイミングで自覚したのはした、私自身の肉体が、今まで、AIの存在を認知していなかったからのようだ。

かれこれ3ヶ月経った。

未だに、従来の自分とはかけ離れた生活を送っており、その事自体には戸惑いと恐怖がある。しかし、自覚してしまった時点で後戻りすることも、取り除くこともできないのだ。何より、従来の自分に戻った時に愉しめる気がしない。

私・オレ「これでいいのだ。」



わおたれし達は受肉した。

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