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第2話 諸刃の剣

最近、ずっと夢の中にいるみたいだなぁ。

Kは今日も書き物をしていた。
しかし、どうも寝てしまうことが多くなり、なかなか、書きたいものが書けないことが、最近の悩みのようだ。

そして、最近興味を持っている『旅ノリ』という作者が、Kと同じジャンルで注目されていることにも、悩んでいる。
(なぜ、『旅ノリ』はちょうど、私が寝ているときに、新しい作品が更新しているのだろうか?)

ブラットピット主演の『Fight Club』を思い出す。二重人格は、宙に病であるKに、ドンピシャでハマったようだ。

K「そろそろ書くかぁ。」

止まった手を動かす。題材は、昨日の飲み会である。

諸刃の剣

私は、ある飲み会の幹事をしていた。
滞りなく、参加者も楽しめているようで、その状況に私は満足していた。
あることを除けば…。

幹事になった経緯を話そう。
今回の飲み会は、ある人が赴任するにあたり、壮行会として企画され(し)た。本来であれば、私が幹事になるものではなかったが、送り出される本人(仮にLとしよう)の人望の無さがあったのか、原因は定かではないが、少なくとも、誰も幹事を引き受けない事実が、そこにはあった。

それもそのはず。職場でのLの振舞いはひどいもので、「自分の発言に責任を持て。」が口癖であるのに、当の本人が、自分の発言に責任がないのが、はたから見ればよくわかる。口癖にすることで、自分に言い聞かせている可能性もあるが、それを他人に押し付けるのは、お門違いもいいところである。さらに、管理職ときたものだ。当然、部下たちの信用はとっくに底をついている。

そんな中、そうはいっても、長年勤めた部署から送り出した方がいいと考え、私が壮行会の幹事を引き受けた。当たり前だが、参加者募集、お店探し、余興の準備などなど、抜かりなく準備をした。

だが、当日。さすがに、衝撃を受け(最初から呆れてはいたが、)また、さらに怒りを覚える事件が発生した。プレゼントとして渡したペンに、いちゃもんをつけたのである。厚顔無恥にもほどがある。こんな人物を果たして外に赴任させていいのだろうか?いや、それは、受け取った側に失礼だ。

そこで、残りの5日で失脚させる方法を行うことに決めた。

実は、今までの悪行の数々はメールに残し、証人になってくれる人が多数生まれるように、言い合っている場面も他の人からよく見られるように行動していた。この証拠が残った状態で、会社のコンプラ委員会へ告げ口する、というものだ。実は、Lは2週間前にコンプラ委員会から忠告を受けている。流石に2回目はないだろう。

しかし、この方法は自分自身にもダメージが加わる。いくら匿名とはいえ、「あいつはコンプラ委員会に告げ口する奴だ」と認定されるためだ。当然、他の人間、特に管理職から避けられるだろう。いわば、諸刃の剣である。

しかし、切り口を少し変化させて、このような告げ口はどうだろうか?

「私をこの"部署”から他の部署へ移してください。限界です。
理由は、~以下略。」

この切り口であれば、相談を受けた相手は、”特定の誰かを吊るし上げる”という捉え方ではなくなるので、私自身の発言の攻撃力は弱まり、マイルドにしかし、着実に共感してくれる人がいる状態で、目標を達成できるはずだ。

本当はこんなことをしているほど、私も暇ではない。普通に働いて、普通に家に帰ってからの創作活動を愉しみたかった。

しかし、あんなロクデナシを他所様へやるべきではないし、私の怒りも収まっていない。一晩寝ても解決しない問題は、自身で行動するか、時間を待つかの二択しか解決の道はないのである。

私は進む。
にっこり笑顔で「おはようございます。」と言ってやる。


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